第5話

宮古島も二日目となった


昨日のがぶ飲み麦酒が原因と思われる頭痛にも悩まされ、中々眠れなかった様に思うが、いつの間にか寝落ち。ベットに潜り込む前にカーテンも閉め忘れたので、眩いばかりの朝の光りに起こされる事となる。これがお洒落な小説や映画ならとても素敵な景色だと思うけれど、オヤジか一人で、ボサボサ頭とアルコール臭となれば、全く画にならない。

時刻は朝八時。昨日ホテルに伝えた希望の朝食時間と同じ。どう頑張っても間に合わないので、ホテルブラックリストの私のマーク色が、黒色から漆黒に変化するのであろう。数分間の間ベットでゴロゴロしながら、スマホで今日の天気やらを眺めたのちに、ゴソゴソと行動を開始。まずはシャワーを浴びて歯磨きをする事にした。カバンからTシャツを取り出し着てみると、LACOSTEの鰐がらと思い持ってきたはずが、青く可愛いドラえもんである事に気がつく。うーんと思いながらも、リゾートホテルだからまぁ大丈夫。もう会う事のない人ばかりだし。と心に決めた。


ベランダから景色を見渡すと、広がるエメラルドグリーンの海に感動。さてさて今日は何をするかな。と思いを巡らしていると、隣のベランダから若いカップルと思われる会話が聞こえる。「橋を渡って、お洒落なカフェに行きたい。」とか、「ハート型の岩がビーチに映える場所が有る。」とか、それはそれは楽しそう。一人でやって来た我が身を少しばかし呪って見る事とする。

宮古島観光案内ホームページを端から端まで眺めた後、これは決まらないな。と、朝食後に改めて考えることにする。ドラえもんのTシャツに短パンで、ルームキーを持っている事を慎重に確認した後、部屋を出る。下りのエレベーターボタンを押すと同時にエレベーターが到着。おおっ早い。と少し感動しながら乗ってみると、幼稚園児位の男の子とその両親と思われる若いカップルが乗っている。

ふと男の子の着ている服を見ると、私と同じ、胸に大きなドラえもん。違いと言えば、男の子の物は【ドラえもん】。私の物は【Doraemon】。何とも微妙な空気が流れる中、レストランフロアーに到着。私がエレベーターから出ると、後ろから男の子の声が聞こえた。「あのおじさんもドラえもん好きなのかな〜?」。「そうなんじゃないのかな。」と、若いお母さんの声。そうだよおじさんはドラえもんが大好きです。家にはこれ以外に、更に二三枚のドラえもんTシャツあるよ。と、心の中で答えてあげた。

レストランに到着。受付のスタッフに部屋番号と名前を告げると、「可愛いTシャツですね。」と声をかけられる。おじさんが着て歩き回る衣類ではないな。とやはり後悔するも、もう後には戻れない。今日は意地でもこの出で立ちで過ごしてやろう。と固く心に誓う。また、この後何回このTシャツで話題を奪えるか。それも楽しみに今日を堪能する事とした。

レストランはブュッフェ形式。バイキングとの違いはなんだっけ? 等と、つまんない事を考えている間に、「こちらにどうぞ。」と席に通される。おじさん一人が座るには本当に申し訳のない、オーシャンビューの窓側の座席。エメラルドグリーンに輝く海は、一人ぼっちのドラえもんオヤジの心を和らげるには十分である。

さてさて今日一日はどう過ごすかな。と思い描きながら料理を取りに歩いてみる。歩きながら、楽しそうに話している家族連れやカップルの会話に耳を尖らせる。きっと今日の楽しい旅行計画を話しているに違いないと思いながら。幾つかの計画を仕入れた感じだと、

・ドライブチーム

・海水浴チーム

・シュノーケリングチーム

・カヌー・SUPチーム

と言った感じか。意外とダイビングチームは無し。確かに海に潜るの怖いもんね。なんて思いながら、少しばかし焦がしてしまったクロワッサンを頬張ってみる。

そう言えば。と、ビーチ沿いのホテルに宿泊し、四日間ダラダラと海を眺めながら過ごす計画であったことを思い出した。然しながら、昨日その様な一日を過ごしてみると、つまらないことにも気がついている。どうしたもんかな。と思いに深けていると、私の目の前に並ぶ食器を下げに来たスタッフが、「今日は気持ち良い一日になりそうですね。ドライブとか楽しそうですね。」と、私をドライブコースへと誘導。一気に心が決まってしまった。「良し。今日はドライブだ。」と。となればオープンカーを借りて、サングラスをかけて、島中を走り回ってやる! という事で、ホテルが経営するレンタカーショップに走る事にする。


この後の顛末は次回に続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日々の暮らしの中で @hyossy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ