第4話

私は旅行が好きだ。


特に行先もあまり決めずに、ふらりと一人で出かけるのが特に大好物。と言っても、野宿をする訳にはいかないので、交通機関とホテルは予約して出かける事になる。なので、行き先をあまり決めずに。と言うのは言い過ぎかもしれない。


先日も宮古島に出かけてみた。急に休みが取れた為、水曜日の深夜に、翌日木曜日の航空券と、木曜日から三泊のホテルを予約し、睡眠も余り取れないまま、急いで着替えをお好みのカバンに突っ込んで、朝早くの地下鉄に乗り込む。と言う具合いだ。


予約したホテルはビーチ沿いで、一日中ビーチを眺めながら過ごす事が出来る。と言うのが触れ込みで、それならば、空港からタクシーで移動さえ出来れば、木曜日のお昼から日曜日の午前中は、ビーチでビールを片手に、好きなだけ海を眺めておける。と言う作戦を計画した。となれば、沖縄離島観光には必須と言われるレンタカーも借りることも無く、本当に四日間の気ままな旅行を堪能出来ると胸を踊らせる事になる。

但し、この計画を決定するまでには、優柔不断な性格か、相当の時間を費やした事も書いておかねばなるまい。


私はダイビングが趣味で、勢いに任せてライセンスを取得し、やれグアムだ、やれハワイだ、やれ慶良間諸島だと、それなりの回数海に潜ってきた。そんな経験を経て、海亀に種類がある事も、あの可愛い隠れクマノミがまぁまぁ凶暴であることや(子供を守る為に)、ホオジロザメやハンマーシャークと言った、凶暴そうなサメがダイバーを襲ったケースがないことを知る事になる。

そんな私が宮古島に行く事にしたのである。ダイビングをしたくなるのは当然と言えば当然。航空券とホテルを予約後、そう、二時間ばかしスマホを片手に、ダイビングショップやダイビング予約サイトを、ウロウロと検索していたのも事実。そんなこんなしているうちに、そろそろ起きて荷物をパッキングしなければ間に合わない時間になったので、ダイビングは次回のお楽しみとして、当初計画通り、【ビーチフラフラ、ビールガッツリ呑み作戦】を決行する事とした。


宮古島に到着。周りを見渡すと、飛行場からダイビングスポットに直接移動し、到着ダイビングと言う素敵なプランを実行してくれるダイビングショップのバスを多数発見。やはりダイビングしないのは失敗か! と少し後悔するも、今となっては手遅れ。当初の予定を決行する事とする。


タクシーに乗車し、ホテル名を告げ、「さっき雨が上がったんだよ。」と語り掛けてくれたタクシー運転手と、「観光客は戻りましたか?」とか、「明日以降の天気はどうなんでしょうね?」とか、たわいの無い会話をしている内にホテルに到着。宮古島南部の、ゴルフ場も備えた、それは立派なホテル。ここに宿泊するのは三度目か。いつも通り素敵なスタッフにも迎えられ、スムーズにチェックインする事となった。

そう言えばこのホテルは空港からの無料送迎をやっていたな! と気がついたのも後の祭り。やはり空港でダイビングショップの車に気を取られたのが失敗の始まり。今度からは気をつけようと思いながら、空港への無料送迎予約をする事は忘れなかった。


ホテルは全部屋がオーシャンビュー。ベランダからは絶景なるビーチの風景が広がるし、西の方角を見渡すと、夕刻には完璧なサンセットを見る事が出来る。うん、このホテルにハズレは無い。

ビーチ迄も歩いて一分もかからず行く事も可能だし、二回目のホテル宿泊時に、地元のおじさんと思われる人から教えて貰った、少し狭い岩場の隙間を降りていくと、プライベート・ビーチの様に、白い砂とエメラルドに輝く遠浅の海が広がる場所もある。一日目のお昼からは、このビーチで予定通りビールを浴びるように呑む事にした。

さて、ホテルのショップで買った六本セットの地ビールを呑みながら、うとうとしたり、浜辺で蟹を探していたりするうち、日が沈む時間となり、いつの間にか、私の秘密のプライベート・ビーチに集まってきた人達とサンセットを楽しむ事となる。この日は天気が良く、それは完璧な夕日を見る事が出来た。周りからも、「おー!」といった歓声が上がるほどで、何となく、一人でこの風景を楽しむ事に罪悪感を感じ、次は家族と来ようと思った次第である。


サンセットも終了し、周りに居た人達も、蟹の逃げ足の様に素早く居なくなった。まだ少し明るいものの、この泥酔状態で勢いに任せて海に入ってしまうと、明日、または明後日の朝刊に、【宮古島で東京からの観光客が溺死!】と載ることが想定されるので、大人しくホテルに帰ることとする。ホテルに着くとスタッフが、「お帰りなさいませ。」と、私の苗字を告げて出向かえてくれる。流石と思いながらルームキーを探す。

そうか、私はこのパターンで何度もルームキーを無くして、何度も再発行して貰った経験が有るので、苗字を覚えてるのかも。即ち、ブラックリスト側に有るのかも。とも気がついた。まぁ、今回もちゃんと予約できたから、予約が出来なくなるまではこのペースで行こう!と、全く反省しない。

今回は無事にルームキーを発見。良かったと胸を撫で下ろす。


一日目はこれで完了。二日目を迎えよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る