4話 ラッキーは案外簡単にやってくる
「はぁ、はぁ、はあ……」
膝に手をついて、呼吸を整える。
アイツらのからの報告がないかスマホを確認してみるも、通知はなく訪れたのは浅いため息だった。
俯くと、首筋から汗が数滴落ちてくる。
「く、くそ……こんな依頼無茶だ、出来るわけねえだろ」
姫乃の笑顔が脳裏に浮かんで拳に入った力が、少し抜ける。
正直、今すぐにでも投げ出したい。
手軽に稼ぐという浅はかな思いで始めたこの事業。
依頼の大体が嫉妬を込めた醜い感情の後始末。
恋に現を抜かす馬鹿どもの考えはいとも簡単にできるというのに、やっぱりこうして体をフルに使う作業はどうしても億劫だ。
暗い公園を見渡してみるも、イヌイらしき生物は見当たらない。
あとこの公園で可能性があるすれば、植木の裏側とドーム状の遊具の中だが………。
一歩だけ、足を進めて止まる。
そもそもこの町にいるのだろうか?
今日の朝家を抜け出した犬が、まだこの町に?
いや、可能性としてはなくはないだろうが……ほぼ皆無だろう。
姫乃だって本気で見つかるとは思ってないだろうし。
無理なら無理で早めに見切りをつけて、次の依頼をこなした方がいい。
スマホを手に持つと――――
ガサガサッ!
ブランコの後ろにある植木が不自然に揺れた!
スマホを持つ手が震える。
「まじか……マジかよ!そこにいるのか?イヌイ」
俺はゆっくりと植木に近づきながら、犬に問いかける。
「ワン!ワン!」
応えるかのように植木が揺れた。
「うわ、こんあ奇跡があるのか……今から行くからな?逃げるなよ?」
「ワンワン、ワン!」
腕をまくり俺は、植木を覗き込むとそこには写真で見たイヌイと――
「あはは、キミ、凄いね!ワンダフル!」
イヌイを抱き抱え、嬉しそうに微笑んでいる元カノの姿があった。
急にざっと血の気が引く感覚に襲われる。
見てはいけないものを目にてしまった時に起こる、反射的な拒絶反応。
俺は、この幼なじみの笑顔が、何よりも嫌いなのだ。
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