エピローグ

「晴、本当にいいのか?」

黒猫はそう言った。翡翠色の双眸が怪しげに光った。

「もちろん」

晴と呼ばれた霊はさも余裕そうに微笑む。

「彼女にはもう会えなくなるけど」

「ねぇ、それ言うのは反則じゃないですか」

「別に俺は関係ない」

彼は空中に蹲る。空には星が瞬いていた。

「本当は嫌だよ。でもさ、未練を断ち切って前に進む宙空そらを見てさ、やっぱり僕は彼女の傍にはいちゃいけないって思ったんだよ」

黒猫は目をしばたかせる。

「じゃあいいんだな」

彼は静かにうなずいた。その眼にはもう迷い

はなかった。

「生まれ変わって彼女に会えるといいな」

黒猫が彼にそう声をかけた。彼は横に首を振

った。

「もう会いたくないよ」

彼はそう言って光の中へと消えていった。黒

猫はその光が消えた後も晴がいた空間を眺め

ていた。

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アフォガート 雨空 凪 @n35

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