秋ヶ瀬奏鳴多からのいのちの紙一重

明鏡止水

第1話

 みなさん。

今日は道徳の授業ではありません。いのちの授業をします。

 

赤ちゃんはりっぱで、かよわくて、奇跡のような存在です。君たちの祖先の誰かが一人でも欠けたら、きみたちは、きみたち自身は、生まれてこなかった。


 先生はそう思います。

 

 先日、先生のだいじなひとの赤ちゃんが、まだ生まれる前に、帰っていきました。おんなのひとはとてもかなしんでいます。

 

 つぎ、いつきてくれるのか。もう、きてもらえなくてもいいのか。いもうと、おんなのひとはかんがえています。


 みんなの話もしましょう。


 きみはとても、よく怒る。

 でも裏をかえせば、感情を外に出せる、伝えられるひとです。

 

 あなたは、しずかで、道徳の授業が好きですね。

 でも裏を返せば、将来、あなたは人の気持ちがわかり過ぎて苦しむかもしれないけれど、自分の力を哀れまないで。優しくなれる。つよくなれる。


 いつも近くにいてくれる子、先生はいつも、丸つけより会話が楽しくて、ついおしゃべりしちゃうけれど、楽しいけれど。裏を返せば。

 あとで職員室とおうちで。

 みんなのことを考えながら、まだ丸つけをやっています。


 だから、みんな人生や人間は紙一重です。

 しかし、その紙にも厚みがある。薄くても、分厚くても。


 人はおもて、うら、だけじゃない。


 命とは、君たちです。


 先生の話を終わります。

 みんなの話をいつだって聞きます。

 だから、同窓会でも会いましょう。

 大人になっても会いましょう。


 会うたびに、一期一会は貴重なものだと認識し、

一蓮托生が、どんなものかがわかるでしょう。

 

 天国へ行っても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

秋ヶ瀬奏鳴多からのいのちの紙一重 明鏡止水 @miuraharuma30

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ