第3話 兄の料理
「ただいまぁ」
「おかえり。なぎさ」
玄関を開けると、美味しそうな香りが漂いました。学校のバッグを持ったままリビングに入ると、お兄ちゃんは台所でフライパンを持ったままにこにこと微笑みながら振り向き、帰ってきた私をすぐさまぎゅっと抱きしめに来ました。ふとテレビに視線を向けると、そこには”本格フランス料理”というタイトルのレシピ紹介動画が流されているではありませんか。そのレシピを見ながら作ったであろう料理がテーブルには並んでいました。
「今日のメニューはヒレステーキ、白身魚のポワレ、パテドカンパーニュ、人参ポタージュだよ」
「おいしそう」
「じゃあ、兄ちゃんは勉強してくるな。俺はもう食べたから、食べたら片付けといてね」
最近お兄ちゃんはフランス料理にハマっているようで、ここ最近は日本料理を作ってくれません。しかし私が厨房に立とうとすると、なぜか止められます。一度私が料理を作ろうとした時、包丁の扱いが酷いと言われた記憶があります。なぜ私が料理を作ってはいけないんでしょうか。
医学生のお兄ちゃんは現在大学2年生で、勉強が大変そうです。解剖実習がこの前あったそうで、教授に当てられて質問された時に骨の部位を瞬時に回答できなかったらしくその日は落ち込んでいました。
私たちの両親は長らく海外出張に出ているため、普段の生活は私と兄で切り盛りしています。両親が側にいなくて寂しいと思う時もあるけど、もう高校生なので自立しないといけないという気持ちもあります。でもやっぱりたまには帰ってきてほしいです。
テレビをぼんやりと見ながら1人で晩御飯を食べ、食べ終わった食器を洗い、自分の部屋に帰って今日の課題を解きました。勉強机のライトに照らされたノートにペンを走らせ、勉強に明け暮れました。
生物部アイドル化計画 充滞 @advance1760
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