トレジャーハンター猫の日編
ぶらボー
伝説の古代遺跡
ついに宝物庫へと到達した。
グリーン教授率いる古代遺跡調査隊は、空き家の物置に埃まみれで放置されていた古文書をもとに、伝説の古代遺跡に足を踏み入れた。
吹き荒れるトラップの嵐、迫りくるミイラ、謎の肉食昆虫etc.を死に物狂いで躱し、宝物が眠る宝物庫の扉の前に到達したのだ。
「とうとうお宝が目の前に……!」
調査隊のメンバーの一人、ブラウンは興奮を抑えられない様子だ。
「油断は禁物でヤンス。慎重にいくでヤンス。」
もう一人のメンバー、ヤンスデス・チェンテナリオ100世がブラウンをたしなめる。
「す、すみません……でもここに秘宝があると思うと……。」
グリーン教授は懐中電灯を片手に周囲の壁画やら床石やらを調べる。
「うむ、トラップの類はなさそうだ。だが念のため周囲の警戒を怠らないように。」
グリーン教授が宝物庫の「鍵」である豆苗の生えたルビーを石板の穴にはめる。実際に宝石になんか生えたりすることあるんですかね? もやしの生えてくるダイヤモンドとか売れるのでは? 多分売れない。
ンゴゴゴゴゴゴ!!!!
10mはあろうかという巨大な扉が音を立てて開いた!
「やった!開いtゲッホゴッホウェッホ!!!」
はしゃぎかけた3人が一斉に咳き込む。一体何が起こったのであろうか?
巨大な扉を開けると姿を現したのは……おそらく何千年もの時をかけて溜まった……埃である!
大量の埃の一部が、扉が開いた瞬間に三人に襲いかかったのである!。
「グェッホッホちょっと埃すげゲッホゲッホ」
「半端じゃないゲッホゲッホこれどうすrゴホッホゴホッ」
「これを付けるでヤンス!」
ヤンスデスがグリーン教授とブラウンに差し出したのは……こんなこともあろうかと準備していたガスマスクである! そう、こんなこともある。
「助かったよヤンスデス。」
ガスマスクを装備したグリーン教授は目の前に現れた高さ10m以上の埃の山を見上げる。
「ここまで来てまた厄介なのが出てきたな……これだけの量の埃を処理するのは難しいぞ。」
「教授!こちらに来てください!」
ブラウンが扉から20m程離れた暗がりから叫ぶ。
「何かあったかね?」
「こいつを見てください。」
グリーン教授はブラウンの指し示す方を見上げた。
そこには何らかの金属でできた厳めしい表情の巨人が立っていた。そしてその右手には……
「サイクロン掃除機……」
なんかやたら保存状態のいい巨大サイクロン掃除機が握らていた。つまり––––––
「これは古代お掃除ロボットでヤンス!」
ヤンスデスが驚きの声をあげた。
「こいつを動かすことができればひょっとしてあの埃を掃除してくれるのでは?」
「しかし動かし方がわからん、古文書に何か書いていないか……」
グリーン教授は埃が浮かぶ空間で古文書のページをパラパラとめくる。この遺跡の位置や仕掛けを解く暗号などの情報は書かれているがお掃除ロボットの情報が中々見当たらない。
「教授!見てくださいでヤンス!」
ヤンスデスがロボットの足元を指さした。見るとロボットから伸びたケーブルがプラグを介してコンセントに接続されている。コンセントである。つまりこの遺跡、電気が通っている。
「もう電気は通っているでヤンス! つまりこいつの電源をポチッとやれば万事解決でヤンス!」
「……! 待て、ヤンスデス!」
教授が急いで制止しようとするが、ヤンスデスは壁に埋め込まれた「ロボット電源」と書かれたスイッチを思いっきり押した。
ボゥッ!!
突如コンセントから激しく出火! そして何千年もの時をかけて溜まった埃が漂う空間で悲劇は起こる。
KABOOOOOOOOOOOM!!!
聡明な読者の皆さんはお気づきであろう。埃まみれの部屋と隣り合った空間にあったプラグが差しっぱなしのコンセント……当然そのコンセントにも大量の埃が溜まっていたのだ。
そんな状態で電源を入れればどうなるのか……空気中の湿気を吸収し電気を通しやすくなった埃が発火する。そう! 巷で話題のトラッキング現象による発火が発生するのである!
さらにそれだけでは終わらない。何千年もの時を経て扉が開かれ、埃が飛散した宝物庫前の空間は、偶然にも恐ろしい粉塵爆発の発生条件を満たしてしまったのだ!
というわけでグリーン教授の調査隊は激しい爆発により跡形もなく消し飛んでしまったのである。合掌。
後日、別の調査隊が遺跡を探査したところ、秘宝は無事発見された。
誇り高き騎士団の伝説の剣だったらしい。埃だけに。
おわり
トレジャーハンター猫の日編 ぶらボー @L3R4V0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます