第6話
その時、複数の足音が近づいてきた。ドアを荒っぽく叩く音がする。
「ビリー・ウィリアムズ! ここを開けろ! お前には逮捕状が出ている!!」
ビリーがチッと舌打ちをした。
「ここまでか……」
向かいのエバンズさんは安堵したように目を閉じていた。僕も胸を撫で下ろした。助かった。ビリーは紳士的な仕草で自ら扉を開けた。それからは、僕とエバンズさんは保護され、ビリーは手錠をかけられ、連行されていった。
病室で本を読んでいると、ケストナーさんがやってきた。
「よう。暇してるか?」
「見ての通り、暇ですよ。体も悪いところはないし、早く退院したいです」
「そうか、それはよかったな」
ケストナーさんはジーパンのポケットを探り、一枚の紙切れを差し出してきた。よく見ると、それは写真だった。
「警察から返してもらった。お前がこれを道に落としていたおかげで、お前が誘拐されたことが分かったんだ」
「僕が誘拐された時には、警察はほぼ犯人に目星がついてたようですね。でもこの写真……」
「お前、休憩時間によく取り出して見てただろ。だから証言できたんだよ」
完全に無意識だった。本当は僕は、家族を愛していたのだった。
「……ありがとうございます、ケストナーさん」
「家族、見舞いに来てくれたんだろ?」
「はい……半ば朦朧としていた時だったので、まだちゃんと話せてはいないんですけど……」
「一緒にいられる時間は限られてるんだから、今のうちによく話しておけよ」
「はい、そうします」
僕は写真を胸に抱きしめた。もう間違えないようにしよう。本当の気持ちをもう、手放しはしない。扉がノックされた。僕は明るく返事をした。
ロボットと花束 はる @mahunna
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