ノーギフト。
「ごめんなぁ」
「気にすんなって」
ひとしきり泣いた吉田は、照れたように笑ってうな重を食べ終えた。
良く脂の乗ったうなぎを大量に食べたせいか、少し胸焼けをしてるらしい。
そう言う時は烏龍茶が良いとペットボトルを差し出せば、「……なんでペットボトルがあるんだよ。チートずるいだろぉ」と吉田は笑った。
「それで、俺の事情だっけ?」
そう、吉田の事情。本来はもっと早くに聞けたが、そんな事よりも吉田の回復が優先だったので今日まで何も聞いてないのだ。
「ちなみに、俺は東京湾にボート出して釣りしてたら、クジラに激突されて転覆後、サメに食われてデッドエンドして転生した。正確には転移なのかね? 神様に会って、チートスキルを貰って、今に至る。ちなみに後ろに居るロリっ子は俺の嫁」
「待て待て情報量多い。え、ホントに待ってハーレムなん!?」
「すまん、訂正する。後ろに居る貧乳の方のロリっ子が俺の嫁」
「待って欲しい。その紹介には異議申し立てをする所存。ポロは身長に見合う体型なだけで、決して貧してる訳じゃない。この体型ではこの大きがジャストサイズ」
「巨乳の方はだだの仲間」
「どうも巨乳の方ですぅ! 今はただの仲間ですけど、いつか振り向かせる予定なので今から奥さん扱いしてくれても良いですよ!」
「待って本当に情報量が多い……」
俺が必死に吉田を看病してる間、ずっと何も言わずに手伝い続けてくれた仲間と嫁を紹介する。
「えーと、河野ってロリコンだったっけ?」
「もちろん違うが?」
言い訳の余地は無いのかもしれない。しかし、何事も認めなければ限りなく黒くてもそれはグレーなのだ。グレーと言い張れるのだ。
白は二百色、黒は三百色あるが、グレーはほぼ無限に存在するのだから。
「改めて、カイトのお嫁さんであり相棒、ポポロップ・エスプワープ。ポポロップと呼んで欲しい。肩に居るのはピーちゃん。あとカイトの頭に居るのはアオミ」
「あ、良かった。何気に頭のぷにぷに気になってたんだ。教えてくれてありがとう」
「いつか愛人か第二夫人になるはずのエルンですぅ!」
「元気な愛人宣言だなぁ」
もしかしてエルンは自己紹介の度にそれ言うつもりなのか? 正直止めてほしいんだけど。
「キトくんの紹介は今更だよな。この子がお前を助けてくれって言ってきたんだ」
「よし、げんき……?」
「………………キト、ありがとな」
キトは元気になった吉田に近付いて、ベッドによじ登り、きゅっと抱き着いた。
「ところで河野、キトの服ってお前の趣味────」
「断じて違う」
食い気味で否定した。恐ろしい濡れ衣だ。
「それで吉田、改めて話を聞きたいんだけど」
「おう、俺に話せる事ならなんでも聞いてくれ」
聞きたい事は山ほどある。
「まず、吉田は向こうで死んだのか? 俺はさっき言った通り死んでこっちに来たんだが」
「いや、死んでない。河野が死んだのは知ってるし、葬式にも出たけど」
この時点で、一つの線が結び付く。
デュープさんに会いに行ったら、忙しいと言われてろくに話せなかった事は記憶に新しい。
もしかして、デュープさんが忙しいのってこの件じゃないのか? 俺が死んで転生したのが正しい手順だと評して良いのかは分からないが、少なくとも吉田の転生と言うか転移は、正規の手段では無いことが分かる。だって死んでないし。
「何があった? 神様にスキルを貰ったりもしてないんじゃないか?」
「あー、やっぱりチート貰えたりするんか。…………俺は貰ってない。普通に家で寝てて、起きたらこの世界の見知らぬ森の中で起きたんだ」
それは、苦労しただろうな。
俺だって、三つも加護を貰ったから比較的に楽な生活を送れてるんだ。これが加護無しだった場合、俺は釣りさえ満足に出来たか分からない。出会ったポロを助けられたかも不明だ。
「黒い猿みたいなバケモノが居る森に居て、必死に逃げてこの街に逃げ込んだんだ。でも身元も分からない俺なんかを雇ってくれる場所もなくて、かと言って荒事なんて無理だから冒険者も出来ない」
とりあえず、あの黒い猿共は後で根絶やしにする事を誓う。良くも吉田を虐めやがったな。
「…………多分、ポロとカイトが出会った場所の近くだと思う。じゃないと、アレは凄く群れるからヨシダは逃げ切れない」
「……あ、俺が乱獲して数が減ってたから吉田が逃げれたって事か?」
「多分。普通は、戦えない一般人があれに囲まれたら何も出来ずにただ死ぬ」
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