よし。
「──なぜ女児服を選んだッ!? 言え!」
「…………まさか、ここまで似合うとは」
帰ってきた三人を出迎えた俺のシャウトに、ポロが心底申し訳なさそうな顔をする。そんな顔をするなら最初からやるな。
着替えに行って、変身して帰ってきたキト。その姿は、ふりふりのスカート姿が良く似合う完全な女の子だった。地味に髪の毛も弄ってあって、シャギー気味のツーサイドアップでとても似合ってる。
よく分かってないキトは首を傾げてるが、その姿すら可愛い。
完全に、ロリである。
まずビバホにそんな服売ってんのかと言いたくなるが、凄まじく似合ってしまってるキト。
女児服とは言ったが、一般的な女児服では無くてセーラー服を子供用にデザインしたワンピースである。もしかしたらニチアサの女児向けアニメからの出典だろうか? それならビバホでもおもちゃ売り場でギリ売ってる気がする。
でも見た感じ、質感も普段使い出来そうなくらいには悪く無い。丈の違うスカートを二重にしたピンクセーラーワンピース。似合い過ぎてる。
同じワンピースでも貫頭衣とセーラー風のフリルドレスでは意味が違う。ポロは何をやらかしてくれたのか。
「…………もしかして、キトは女の子だったりする?」
「ちゃんと付いてた」
付いてたらしい。じゃあ男か。…………いや待て、付いてるタイプの女の子である可能性は無いだろうか?(混乱)
付いてるか付いてないかで、本当に性差の確認が出来るのか?(錯乱)
「ぴ」
「おっとすまねぇ」
正気に戻れとピーちゃんから翼で叩かれた。ピーちゃんの身体は氷で出来てるので普通に痛かった。叩かれるなら、ふわふわの羽毛と羽が詰まった翼が良かった。氷の塊って普通に鈍器だからね。
「にぃに、おねがい…………」
「ん?」
「よしを、たすけて……」
「任せろ妹よ」
「カイト、キトは妹違う」
「カイトさんが一瞬で絆されましたね……」
ぶっちゃけると他人なら結構ドライに切り捨てられる俺だけど、こんなに可愛い妹、じゃなかった弟、でもねぇや孤児のキトから願われたら助けざるを得まい。
ヨシくんとやらを華麗に救出して見せようじゃないか。
後片付けを終わらせた俺達はキトの案内でスラムへと向かう。
「─────────よ、吉田?」
「…………かわ、の?」
そこで、俺は前世の友人と遭遇した。
キトの言うヨシとは、俺が前世でほぼ唯一仲良くしていた友人の吉田優也だった。
腐った木板で組まれた壁の壊れた家屋の中で、変わり果てた姿の吉田が真っ青な顔で俺を見た。
頬はこけ、骨と皮しか無いような手を俺へと伸ばす吉田は痛々しく、誰がどう見ても「死に損ない」と呼ぶに相応しい様相だった。
「吉田ッ!? おま、なんでこの世界に!? いや、今はそれより────」
吉田を助けたいキトよりも、衰弱して苦しんでる吉田よりも、誰より何より俺が一番慌ててる。
俺は釣り人だった。家族に対する興味が薄れれば薄れるほど、釣りに熱中した。
学校でも殆ど人付き合いなんてせず、基本的に一人だった。
そんな俺でも、ただ一人友人と呼べる存在が居た。それが吉田だ。
「ぜってぇ死なせねぇからな!」
俺は薄汚れて酷い臭いがする吉田を抱え、なるべく揺らさないように気をつけながらも急いで歩いた。
吉田も向こうで死んだのだろうか? 吉田も何かスキルを貰ってこの世界へ来た無垢魂なのだろうか?
疑問は尽きないが、今は死にかけの吉田をどうにかする。他の予定は全て後回しだ。
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