魚探とタイラバ。
魚群探知機。それは振動子と呼ばれる超音波発生機を使って水中の魚や海底までの距離を探る道具であり、探知した結果を表示するディスプレイとセットであることが多い。
中にはスマホと連動するタイプの物もあるが、個人的には専用の物の方が使いやすい。
「ポロは使い方わかる」
「え、マジで言ってる?」
「ん。でもスキルで買えないから、買って欲しい」
「あいよ」
ポロは動画で勉強したらしく、もう使い方は分かるそうだ。勤勉で頭が下がるぜ。
「こ、これなんです〜!?」
「だから魚探だって」
エルンにも二万円くらいの魚探を渡して使わせる。魚探は一見シンプルなディスプレイで簡単に使えそうだが、そして実際に簡単に使えるのだが、実はディスプレイに表示されてる情報をしっかりと理解する必要がある。
スマホの画面みたいな物に海底の様子が表示されるのだが、実はこれ見たまんまじゃないのだ。
「いいかエルン、この画面の右に写ってる情報と、左に写ってる情報は鮮度が違う。一枚の画面に全部同じように写ってるから全部が同じように見えるが────」
魚群探知機という道具は、海底の様子が全部写ってるような表示がされるが、間違いだ。イメージとしては心電図のような物で、右側に写ってる物が一番新しく、左側の物は右から流れて行った過去の情報なのだ。
船の真下じゃないと分からない為、画面に海底の坂が写ってたとしても画面通りの海底じゃないし、魚もそうだ。左側に魚が写ってたとしても、右側に魚が居ないならそれはもう魚がその場に居ない事を意味する。左に写ってる魚のデータは数十秒前の物だから、その画面から分かるのは「数十秒前に船の真下を魚が泳いでたけど、今はもうどっか行っちゃったね」って事だけ。
もしくはパラパラ漫画だとでも言えば良いか? 左側はめくり終わったページで、右側は今開いてるページになる。
「分かったか?」
「た、たぶん大丈夫です……」
魚探の使い方を一通り教えたあと、一回エルンの船に乗り移って振動子をセッティングし、有線もディスプレイに繋いでやる。二万円台の安物だが、ソロでのミニボート釣りだったら十分に使える物だ。
スマホ用のアームなんかも使って
ちなみにエルンの餌釣り仕掛けは胴付きにした。餌は百円ショップで買える常温保存可能なイカの切り身。ゴカイやイソメは見た目が嫌だと言うので仕方ない。
「さて、改めてタイラバするか」
俺は俺で、元の場所に戻ってから
このタイラバは百円ショップダイナソーで買える物で、値段の割りにかなり釣れるしカスタム性も強くてお気に入りの物だ。俺はカーリーテールとトリプルフックでカスタムしてある。
「…………魚群探知できるけど、
魚探とは違い、
シーバス用のロッドでタイラバをぶん投げ、ヴェールを空けたままラインを出してルアーが着底するまで待つ。ラインの放出が終わったら着底したか魚が食ったか、どっちかした証拠なのでヴェールをおろして糸ふけを取り、竿を立てながら大きく引っ張る。
「フォールでは食わなかったか」
そのままリールを巻きながらロッドをおろしてルアーを上げた分のラインを回収したら、リールを止めてまたロッドをあげる。そうしたらまた、ロッドを倒しながらリールを巻いて、またロッドを上げる。この繰り返しだ。
これでタコのふわふわした動きを再現してるってわけだな。タイラバはただ巻きでも使えるが、アクション出来るならした方が良い。と言うか船でタイラバ使うならこっちの方が基本だ。ただ巻きのずる引きはおかっぱりでやるもんだろ。
「…………この、海底にあるクソでかい反応はチビドラだと思ったんだが、違ったか?」
チビドラなら食ってくると思ったんだが、なにやら食い付きが悪い。一投、二投、三投しても反応が無い。
「……んー? 反応わりぃな。場所変えるか?」
だが、初心者のエルンをフォローできる距離から離れるわけにはいかない。どうしたものか。
「釣れ、た……!」
そうして俺がまごまごしてるうちに、ポロが赤バスを釣り上げてた。マジかよ先を越された悔しい。
「つ、釣れたです〜! これなんですぅ〜!?」
そしてエルンにも先を越される。クソ悔しい。て言うかなんだあの魚。
俺はタイラバを回収し、またエルンの方に向かう。
「何釣れたんだそれ」
「分からないです!」
エルンが高々と持ち上げた魚を見る。外見はハタの仲間っぽいが、なんだろうなソレ。
「まぁ港に戻れば漁師がうじゃうじゃ居るんだし、聞けば分かるやろ」
「適当ですぅ〜!」
実際、俺が異世界の魚なんて分かるわけないだろ。こっちで見た目が完全に地球と一致してた魚なんて、それこそ迷宮鰻くらいだったぞ。
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