頭おかしい。



「マジか」


 エントリーにあるデュープ教会で祈った結果、またデュープさんに会うことは出来た。


 だが忙しかったらしく、ものの三分程で帰された。


「…………かみ、さまぁ?」


 そんなごく短い邂逅だったにも関わらずエルンは放心しており、そしてポロはニチャニチャ笑っていた。


「んふふ、加護が増えた……」


 そう、ポロはなんと、たった三分の再会でデュープさんから加護を一つもぎ取ったのだ。ヤバすぎる。代償はいつの間にか手に入れてたネイドの絵画と、俺のイラスト。思いのほか喜んでいた。


 そうしてポロがどんな力を手に入れたかと言えば、海神の大商店オーシャン・バビホーム


 …………なんでも売ってそうなスーパーなホームセンターかな。素敵なお名前ですね。


「カイトと同じ、経験値消費型」


「いや、それはどうなんだろうか……?」


 正直な気持ちを言うと、ズルくない? って思う。いや、だって、俺の能力って自分が買った事のある物を再購入出来る能力であり、生前に買った事の無いアイテムって買えないのよ。でもポロの場合は、どうやらスーパーなホームセンターに売ってる物ならなんでも買えるっぽい。経験値を消費して神の力が具現化してれるらしいのだ。


 ……ずるくね? っていうか俺、要らなくね?


「大丈夫。カイト、この力だと釣りの道具は殆ど買えない」


「ああ、まぁそうか」


 スーパーなホームセンターって言ったら凄まじく何でも買えそうだけど、流石に釣具は無いか。探せば置いてるホームセンターもあるかも知れないが、それでも棚一つ分とかだろ。良かった、棲み分けは出来てたな。


「かみ、しゃまぁ……」


「オイこらエルン、いつまでバグり散らかしてんだ」


「あいたっ……」


 いつまでも再起動しないエルンの頭を小突いて直す。古来より壊れたら叩けって相場が決まってんだ。


 ちなみに、デュープ教会には前回あったお偉いさんしか居らず、その時に死ぬほど脅したから今回は大人しい。今も礼拝堂のすみっこで光り輝いてただろう俺達を拝むだけのオブジェになってる。いや充分怖いな?


「よし、やる事やったし海行くか」


「ん! …………その前に、一回グランプに戻りたい」


 振り返れば、早速とスキルで買い物をしたポロがホクホク顔で待っていた。その手には何やら見覚えのない機械が…………?


「いや見覚えあるな。それもしかして、マシタのバッテリーチャージャーじゃ?」


「ん。神器化した」


 なんてことしてんだコイツ。…………いや待てよ?


「バッテリーチャージャーを神器化したって事は、充電がエネルギーフリー?」


 ボートのエンジンが燃料要らずであり、電動水鉄砲が電池要らずな事から分かる通り、神器化するとエネルギーフリーで使えるようになる。バッテリーチャージャーが神器化したと言うならば、マシタのバッテリーは全てコンセント要らずで充電可能なはずだ。


「そう。あとはバッテリーと本体を買えば、使い放題」


「お前、それは……」


 なんてことしてんだコイツ(褒め言葉)。


 マシタは同じバッテリーで凄まじい種類の電動工具から家電まで、なんでも動かせるように作られてる。そのラインナップは電子レンジや電動自転車なんて物まで幅広い。俺の嫁は何をしたいのか、と言うかどこに向かってるのか。


 だがとにかく、電子レンジが使えるのは相当デカい。アレはまさに文明の利器と言って良い家電だ。異世界で家電と言えばウォシュレット、みたいな風潮があるらしいが、ぶっちゃけるとウォシュレットってちゃんと否定派も存在するからな。


 日本でもダメな人はダメだし、外国人なんかは「見えない角度から強めの水流で尻を洗われるのが怖い」って層は少なくないのだ。


 だがしかし、電子レンジはどうだろう? ナチュラリストがキレ散らかしてるのは見たことあるが、そういったイレギュラーは除いて常識的な範囲でなら電子レンジが嫌って人はあんまり見たことが無い。


 栄養素を壊すから嫌って人は相当数居るらしいが、電子レンジってそう言う物じゃないから。アレは時間を効率的に使うための家電であって、効率化を目指す場合は何かしらの犠牲は付き物だ。そもそも、電子レンジを使わなくても普通の調理で壊れる栄養素だってあるのだ。それが嫌なら生野菜でも齧ってろ。


 話が逸れたな。とにかく、マシタの家電はかなりありがたい。やべー事に、マシタの家電って冷蔵庫もあるのよね。頭おかしいだろ(褒め言葉)。


 他にも電気ケトルや、コーヒーメーカーなんかは序の口、探せばテレビだって出てくるぞ。マジで頭おかしい(褒め言葉)。


 デュープ教会を出て適当な場所でグランプを召喚。その中にポロが購入したマシタ製品をドカドカと置いて、すぐに使うものとそう出ないものを仕分けする。ランタンやクーラーボックスは使うから俺のインベントリへと収納し、その他はグランプに置いていく。と言ってもグランプ本体もしまっちゃうんだが。


「さて、今度こそ海だな。港まで行ってから戻るのは中々辛かったぜ」


「ん、タイラバする」


 もうポロも一端の釣り人である。少なくとも素人から「タイラバする」なんて発言は出てこないだろう。


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