ただいまエントリー。
「エントリーよ、ポロは帰ってきた……!」
「嫁のネタがとどまるところを知らない」
紆余曲折あった王都、バルジャーレへの遠征釣行は無事に終わり、一週間くらいかけてゆっくり帰ってきた俺達。その一発目、門をくぐってすぐにポロがロボアニメのネタをぶち込むが、当然ながら拾えるのは俺だけだ。エルンなんかは素直に「私は初めてですぅ!」とか言ってる。
「さて、まずは旅の疲れを取ろうかなんて言いたいとこだが、正直なところグランプでゆっくり帰ってきたから元気なんよな」
「それはそう」
「快適だったですぅ!」
あんなのは最早、『移動する家』でしかない。推進力も精霊なので運転で疲れることも無く、なんなら寝室で寝ててもグランプは進んでくれる。振動も殆ど無いので、疲れる余地が無かったのだ。
「じゃ、とりあえず適当に宿を取ってからさっそく海に行こうか。前回は海竜騒動で忙しかったし、今回はゆっくり釣りしたいな」
「ポロ、ネットで勉強した。地球では今、タイラバってルアーが熱いらしい」
「お、良いねタイラバ! やるか!」
ポロからリクエストを貰ったので、俺達はさっそく適当な宿を取ってから港へと向かう。
タイラバと言うのは簡単に言うとタコを模した
このルアーの何が熱いかって言うと、釣れる魚種の多さと釣れ具合だ。対象の魚が居る場所ならば結構な食い付きだし、元々のターゲットとしてのタイはもちろん、他にも根魚や青物も釣れてしまうので汎用性が凄く高い。使ってて楽しいルアーである。
実は俺が良く使うルアーのツートップだったりもする。もう一つは赤バスを釣るのに良く使うメタルバイブって言うルアーなんだけど、それとタイラバはボート釣りだと鉄板だ。何より百円ショップで品質の良い物が安く買えるから、俺としては何一つとして文句のないルアーだった。
バイトを頑張って船やエンジンを買ったは良いけど、学生の身からすると高額なルアーとかは手が出しにくいのだ。言うて消耗品だしな。
それが充分な品質の物を百円で買えるってなったら、もう買うしか無いだろ。最近の百円ショップ系釣具はマジでバカにできない。
「それで、エルンはどうする?」
こうして俺とポロの予定は決まったが、問題はエルンだ。こいつは俺達についてくるのが目的であって、釣り人では無い。無理に釣りへと連れていくのも可哀想かなと思って聞いてみれば、エルンはぷりぷり怒りながら即答する。
「もちろん私も行くですよ! 初めて来た都市で私を一人放り出す気です!?」
そりゃそうだ。宿へ残すにせよ、観光させるにせよ、初めて来た都市で一人にするのはおおよそ常識人がする振る舞いじゃないな。これはエルンが全面的に正しい。
エルンが勝手について来たならまだしも、全員が同意しての同道なのだ。むしろ俺達から誘った感まであるし、ここで放り出すのは普通にクズだろう。
「じゃあエルン用の船も買わないとな。幸い、経験値は潤沢だし」
神器化は流石に無理だから
そうと決まればさっそく行動だ。最初は宿を取ろうと思ったが、グランプがあるなら空き地を借りてグランプに寝泊まりする方が快適だ。何せ使ってる技術が地球由来なのだから。
「カイシン食堂に使った空き地は空いてるかな?」
「ギルドで確認する。空いてたら、そこにする?」
「せっかくだからカイシン食堂も復活させたいだろ?」
「カイシン食堂、です?」
一人だけ分かってないエルンにも説明する。すると「楽しそうです!」と乗り気になったので、売り子を一人確保できた。あとはベテランのオバチャン達をまた雇えれば完璧だ。
それに、エルンは収納系のスキルを持ってる本職の
「あとは、何かあるか? 帰ってきてやるべき事」
「挨拶回りとかは、良いんです?」
「いや、そう言う常識的なやつじゃなくて」
エルンが言う事は尤もなんだけど、挨拶回りするくらいなら釣りに行きたい。釣れた魚をカイシン食堂で出しながら、来た人々に挨拶すればそれで良いだろうって思ってる。
そも、そこまで礼儀を気にするべき相手がエントリーには居ない。多分、最も親しくした相手がカイシン食堂で雇ってたおば様達だ。関係値の最大がそこなので、わざわざ挨拶回りするのも悩ましい。社会人ならするべきなんだろうけど、俺って高校生だしなぁ。
「…………あ、カイト。デュープ様に挨拶したい」
「それだ!」
「あれ、結局挨拶回りです?」
ポロの提案にそれだと採用するが、よく分かってないエルンは首を傾げる。挨拶回りは面倒だと言った口で、誰かに挨拶行くぞって言ったらそりゃ首も傾げるだろ。
だけどポセイドン様やデュープさんが相手なら話が変わるに決まってる。単純に恩人だし、なにより神やぞ。なにより優先すべきだろ。
「うーん、今それを説明しても分からんと思うし、直接行こうか」
「ん、会えば分かる」
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