ポロが大人しかった理由。



 俺は決闘に勝利した。だが約束の「所有する全財産」なんて、支払おうとしてポンっと出せる訳が無い。量が量だし、本当にちゃんと全部なのかって調べる手間もあるだろう。


 まぁ俺は、全財産出さなかったら「え? ポロとの関係を賭けた決闘だったのに誤魔化すの? へぇ、ポロへの気持ちはその程度だったんだね」って煽るから大丈夫。


 ガチ恋して宗教画を仕上げてくる様な奴に、この言葉は効くだろう。


 ちなみにだが、今回の決闘で俺が負けた場合バツイチになるはずだったポロが何故大人しかったのか。


「ん? 別に、カイト負けたら、ポロがアイツ殺せば良い。ポロが決闘挑んで、カイトとの復縁を認めさせても良いし、普通に暗殺しても良い。決闘の約束で別れたポロとカイトが約束破って復縁しても、困るのアイツだけ。だからアイツ殺せば、文句なんてどこからも出ない」


 だ、そうです。


 ネイドくん、勝ってたら死んでたらしい。


「カイトは勝手にポロとの離縁を賭けた。ならポロも、勝手に殺したって良かったはず」


「そう言われると何も言えない」


 仮に逆の立場でポロが負けたら、多分俺も同じことするし。相手を殺しゃ関係ないだろって。確かに俺達が決闘の内容を無視して困るのはネイドだけだし。


「まぁ想い合ってる二人を引き裂こうってのが無理な話だったんだよな」


「そう、最初から破綻してた。だから騒ぐ理由も無かった」


 本当にそうなった場合は流石に殺人なので、二人での逃亡生活だったかもしれない。まぁそれも二人なら楽しいのは確定的に明らかだったので、最初からこの騒動は俺達の勝ち確だったのだ。


 ◇


 決闘騒ぎから数日後。


「約束の、これ」


 騒動が一通り終わった後、ネイドからふんだくった金でバルジャーレの最高級宿に泊まり始めたある日の夜。


 俺はポロにスマホを差し出された。


「約束?」


「ん。カイトが絵を描けること、知ってた理由」


「あー、勝ったら教えてくれるって言ってたもんな」


 受け取ったスマホを見ると、ポロに指で示されるアプリが一つ。


「…………でゅーちゅーぶ?」


 なんか見覚えの無い怪しいアプリがあるぞ。


 言われるままにアプリをタップして立ち上げると、何やらどっかのパクリくさいインターフェースが出て来る。だが表示されてる動画は、全てがただ一人を映してる。


「…………俺ぇっ!? え、なんだこれ地球の頃の動画とかもあるじゃん!?」


 なんだこのアプリ!?


「この人、カイトが良く言うタイショーって人?」


「あ、あぁ。この人が大将だけど……」


「顔怖い」


「言うな。本人も気にしてんだ」


 俺はポロが再生するままに、懐かしい人々の懐かしい様子を見ることが出来た。


 この意味不明なアプリはあくまで俺の過去を動画で追えるだけらしいので、初見の光景は一つもなかった。でも第三者視点で眺める懐かしい人達の様子に、俺の涙腺は大ダメージを受ける。


 アオミやルリに見守れながら、気が付くとポロのスマホにかぶり付きで眺めてた。


「…………ぐす、これなんだよ」


「ポロも分からない。でも、多分デュープ様のお気遣い」


「ああ、ポロの場合ってスマホはポセイドン様の力だけど、神器化はデュープさんの力だもんな。そこでポロだけに特典が付いたのか」


 デュープさん、ポロのこと気に入りすぎだろ。


「ふふふ。カイト、気付かない?」


「ん? なにが?」


「このアプリあると、浮気とか全部バレる」


「まぁ、そうだな? 別にする気も予定も無いから関係無くね?」


「………………そう」


 タバコ吸わない人に灰皿は要らないように、他の女性に興味とか無い俺に浮気対策は別に要らないと思う。そう伝えると、ポロは俯いてモジモジする。


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