シールドビット。
ダンジョン六層で釣れた
まぁロボットアニメからの引用である。天使の名前使ってるシリーズ良いよね。
シールドビットは名前に鎧と付いたモンスターだけあって、かなりの防御力を誇った。なにせ、一回だけ生きてる個体に試して見たらバハムートの全力ブレスを一回耐えやがったのだ。
どうやら
こいつぁすげぇやと思って、俺達は堅鎧魚を乱獲してシールドビットを増やす事にした。
防御にしか使わないので、数にして五十ほど。竜種のブレスを防げるならば大抵の攻撃はこれで防げるだろう。
今まではチビドラに防御を任せてたけど、これからはシールドビットに俺達の守りを任せられる。そうすればチビドラが全て攻撃に使える。
チビドラも子供とは言え竜種なので防御力は高いのだけど、形がエイみたいだから盾として運用すると無茶な体勢が結構キツいらしい。
イメージで言うと、ヘリコプターが縦にホバリングするようなものだ。タチウオでも無いのにそんな泳ぎ方は無茶に決まってる。
精霊達が空中を泳ぐ挙動は、どうやら単純に空気を水に見立ててるらしく、重力などの問題は依然として存在する。
魚種によっては生息域の水圧が違うなどの問題はあるけど、それをどうクリアしてるのかは良く分からない。
推論を一つ出すならば、水棲生物の適正水圧は身体の作りが影響してるので、もしかしたら精霊化した影響で水圧の問題は最初からクリアされてるのかもしれない。
例えば全身がほぼ脂である深海魚、バラムツ君。あれは深海だと水圧の影響で浮き袋が使えないから体に油を満たすと言う方法で水に浮く進化を遂げたと言われていて、精霊化したならば油も浮き袋も存在しない。
ただそうすると、今度は何故浮いてるのかって話にもなるから、考え過ぎると頭が壊れると思う。俺は学者じゃ無いから、目の前にある現実をそのまま受け止めれば良い。
「さて、目的の魚種は全部釣れたし、キャンプも楽しんで経験値も稼げた」
「…………帰る?」
「異論が無ければ。…………誰か、まだ残りたい人居る?」
まぁ帰ると言っても、また四層には寄るんだけどさ。ポロが気付いた通りにエビ、もしくはカニが居るだろう湖で捕獲作戦が待ってるから。
「あれ、七層行かないんです?」
「道中で充分すぎるくらい稼げたからなぁ。金も、経験値も」
シールドビットを量産する過程で大量に手に入った堅鎧魚の鱗だけでも、結構な金額になるはずだ。それ以外にもちょいちょい資源の回収はしてるし。
そしてカラスの大虐殺で経験値も予想より溜まってる。これ以上はもう良いだろう。あとは帰りに狩る分で満足出来る。
「残念ですぅ。この仕事、凄い稼げるし待遇も良いし……」
「まぁ、四層でまた数日はキャンプだから安心しろよ。幸い、ダンジョンに潜ってる間は依頼も受けなくて良いし」
俺はまだ底辺の冒険者だから一ヶ月に一回は依頼を受ける必要がある。けど、ダンジョンの攻略は常に依頼扱いらしく、一ヶ月を過ぎても資格停止にはならない。その代わり、戻った時に成果を提示する必要があるけど。
つまりダンジョンに限り永遠に釣りしてて良い夢の環境と言える。しかもダンジョンは状態復帰する必要もなく、生態への気遣いなどせずとも無限湧きだ。
まぁそれはそれでナンセンスな気もするけど、たまには良いだろ。
「ああ、でも淡水ばっか遊んでると海に帰りたくなるな。海ばっかだと淡水が恋しくなるんだけど」
「ん、お刺身たべたい」
いや君、サーモン刺身で食べたやん。
「あの、カイトさん?」
「ん? どうした」
「えっと、あの、お願いがあるです…………」
もうすぐ契約が終わるので、その前に色々と料理を押して欲しいと言う。あと可能なら俺が持ってる手持ちのキャンプギアを売って欲しいと。
まぁメスティンとか普通に万能で使い易いもんな。日本に居た頃はあんまり便利だから家でも使ってたくらいだ。
しかし、料理の方はどうなのだろうか? エルンは荷物持ち兼案内人であり、料理も仕事の内だと最初に言っていた。
「あぁいえ、流石に生魚の料理なんて良く知らないからです」
「あー、そっちか」
確かに、生食の文化がなかったらそうだろうな。
「でも必要か? 客に出したら怒られそうだけど」
「いえ、自分用です。カイトさん帰っちゃったらもう食べれないなんて嫌です!」
と、言うことでお料理を教えながらゆっくり四層まで帰る事になった。
しかし、生食って調味料が重要なところあるからな。俺が居なくなっても大丈夫だろうか? その辺はこの都市に流通してる食材とかもエルンに聞きながら、擦り合わせしようか。
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