つみれ。



 ポロと一緒に食べてみた。


 結論から言うとあまり美味くない。ナイフで鱗を一枚一枚しっかりと剥いでから内臓を出して塩焼きにしたが、なんか独特の臭みがあって美味しく感じなかった。


 うーむ、コイツだけは数が欲しいから美味しくないのは困る。


 モンスターだから魔力的な旨みはちゃんとあるのだけど、それを打ち消して余りある絶妙な臭みがあるのだ。


「…………カイト、どうする?」


「よし、任せろ。つみれにするわ」


 俺とポロはこの褐色ディスカスを数釣りし始めた。暇そうなエルンに鱗の処理だけやらせる。荷物持ちポーターなんだから解体は仕事の内だろ。


 夜までに数を揃えたら、捌いたディスカスを骨ごとブツ切りにする。ついでに味が微妙な他の魚も一緒にした。ピラニアもカンディルも美味しくないのだ。テッポウウオだけはまぁまぁ食べれたけど。


「それで、どうする?」


「こうする」


 すり鉢にディスカス達の切り身と、そして同量くらいのアロを入れる。それからチューブの生姜をにゅるんっと絞ったら擂粉木すりこぎで潰して混ぜる。


「お、おぉ……」


 それを見てたポロは「まさかこんな乱暴な料理が……?」と困惑してる。


「生姜だけじゃ足りねぇかな。ナツメグと胡椒も入れとくか」


 スパイスを足して大量のすり身を作る。臭みを消して混ぜてしまえば美味しくない事は無いだろう。


 すったら野菜も準備する。ダイコンとニンジンをくし切りにして鍋に投入し、水を入れ、醤油、みりん、酒にだしの素を入れて煮込む。匂い消しにネギも入れとくか。


 途中、すり身を団子にして片栗粉をまぶしたら鍋に入れて追加で煮込む。煮込んで煮込んで煮込み続ける。


「あ、良い匂い……」


「美味しそうです……?」


「まぁ不味くは無いと思う。アロも入れたし」


 アジみたいなアロを入れたのだから、その分は美味しくなってて欲しい。


 水を足しながら一時間煮込んで完成。すぐに実食。


「あ、普通に美味いぞこれ」


「ん、これなら食べれる」


「美味しいです!」


 すり身にした魚の肉団子は、食感がスポンジのようになる。そのスポンジが煮汁を吸い込んで染み染みの味わいになっていて、生姜をベースにしっかりと臭みを消せているので旨味と風味も悪くない。


 唯一のネックだった臭みが消えたなら、魔力的な旨み……、『美魔味うまみ』とでも言うか、美魔味も邪魔されずにしっかりと舌に届いて踊り出した。


「優しい味……」


「そうだな。つみれはとろろ入れてもっとふっくらさせても良かったかな?」


「ん、よくわかんないけど、次はそれで」


 主食もなく、三人でつみれ汁だけをひたすら食べる。ルリにも出して上げたが好評だ。


「あ〜、味の染みたダイコンとニンジンも良すぎるなこれ……」


「ちょっとだけ、ご飯欲しくなる」


「今から炊くか?」


「んーん、今度で良い」


 ほっこりとする味わいのつみれ団子をほくほくと味わう。んー、アロの味わいにモンスターの美魔味が加わってこれっぽいな。なるほど、合わせても良かったんだな。




 ダンジョンで目的の魚を全部釣ることが出来た。旅の目標達成である。


「カイト。実際、どれくらい硬い?」


「試してみるか?」


 食事の後、俺とポロは溜め込んだ鎧ディスカスの鱗を何枚か使って防御力を試す。精霊化した後にどれくらい頼って良いのかを調べるのだ。


 岩に立て掛けた鱗に向かって一つずつ攻撃を試す。スカーレット、テッポウウオのブレスや水鉄砲ライフルは十発くらい耐えられるみたいだ。


「え、めちゃくちゃ硬くない? まさか水鉄砲ライフルで抜けないとは……」


 確かにコレで鎧作ったら強いだろう。納得の堅牢さだ。と言うか釣り以外でどうやったら倒せるのコイツ。


 一応、鮫丸鉄時ふかまるかねときを使えば斬れた。


 鮫丸鉄時フカマルはメンチ男と決闘する時に登録したが、それでも戦闘の為だけに選んだんじゃない。刃が通らない竜種の解体とかするのに使えそうだから選んだのだ。


 斬る事に特化した神器は、しっかりと仕事をしてくれるらしい。良かったぁ。


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