六層到着。



 ルリ誘拐事件の後、三日ほどその場で休んでルリを可愛がった。


「ゎぅんっ♪︎ わんわん!」


 その結果なのか、それとも元々の気質で今まで我慢してたのか分からないけど、ルリはあれからとても甘えん坊になった。


 流石に言葉が通じないので夜の運動会にも顔を見せたりするのは参ったけど、ポロがルリを抱き締めてる時とかので特例として許す事になった。


 もう、とにかく甘えてくる。しゅきしゅきって気持ちが溢れて顔をぺろぺろしてくるから可愛くて仕方ない。


 俺も精密使役を使って好きだよって伝えると、びっくりして固まった後にキャンキャン鳴いてもっと甘えて来て、しゅきしゅき大しゅきって言うから俺も好きだよって言う。無限ループって怖くね?


 お陰で、ルリにお肉をあげなきゃって使命感に燃えて萌えた俺とポロ、ピーちゃんが張り切って牛を乱獲した結果、スタック三つ分の牛が集まった。アオミは相変わらずまったりしてる。


 明らかにやり過ぎだ。流石にワンスタック分はギルドに流そう。二つでも多い気がするけど、こう言うのって気が付くと減ってるから多分大丈夫。


 牛肉なんて使い道たっぷりあるからな。使おうと思えばいくらでも使える。 


 ステーキはもちろん、ローストビーフ、ビールシチュー、ビーフストロガノフ、ハンバーグ等々、俺が作れる料理をたらふく食べたルリは毛艶が最初の倍は良くなってめちゃくちゃ綺麗だ。


 塩分や香辛料の影響はどうなのか、ルリの身体が海神の神術オーシャン・レアによって書き換えられてる影響でスキルを使って診察出来ることに気が付いた俺は事細かく調べた。


 その結果、血圧や臓器の負担はちゃんとある物の、魔力で細胞を強化出来るのかゴリ押しで回復してる事が分かった。なら食べさせても大丈夫かなって、同じものを振る舞うようにしたらもっと甘えん坊になった。


 可愛い。俺とポロはもうゆるっゆるだ。とにかく可愛くて仕方ない。


 ルリは俺達にとって戦闘員じゃなくてペットだ。庇護すべき対象であり、戦闘力より可愛さを伸ばす方が正しい。なのでコレで良いんだ。


 エルンは仕事終わりに別れる時辛くなるからって控えてるけど、ルリはエルンも群れの一員と認識してるのか全力で甘えに行く。そして絆されるエルン。


 そうして充分に休息した俺達は、今度こそ六層を目指し始める。


「せっかく七層まで行けるですから、行けるとこまで行って稼ぐのも手ですよ?」


「んー、まぁお金はあっても困らないし、考えとくか」


 エルンの抜群な案内で岩山を速攻で見付けてスロープを降りる俺達。そこで強そうな冒険者達とすれ違ったが、ルリを背中に乗せてお世話するハーフサイズピーちゃんの姿に驚きつつも警戒して、特に会話も無くすれ違った。


 ダンジョン内では冒険者同士も殺し殺される事も珍しくないらしいので、この反応も仕方ない。勝てない相手には近寄らないのがダンジョンの不文律なのだとか。


 降りきったら情報通りに草原が広がってた。広大な土地に興奮したルリが思いっきり走り回ろうとするが、すぐにモンスターが出て帰って来た。怖かったらしい。


 ルリを怖がらせたモンスター、首狩り兎とか言う真っ白なデカウサギに切れたピーちゃんが一瞬でそいつを凍らせて砕いてた。ウサギ肉も美味しそうだけど今は良いや。


「試しに燃やしてみる?」


「あ、お任せですぅ〜!」


 凍って砕かれたウサギに駆け寄って火をつけるエルン。手馴れた様子でマッチみたいな物を取り出してシュボッと燃やすと、有り得ない速度で大炎上するウサギの死体は、その周りの物を一切燃やさずに消え去った。


 代わりにその場へ転がるのは、拳くらいの大きさをした紫色の石。魔石だ。


「これでいくら?」


「首狩り兎の魔石ですと、多分銀貨三枚くらいです?」


 こんな石が銀貨三枚。そりゃ儲かるわ。真面目に働くの馬鹿らしいもんな。つまり十匹殺せば金貨三枚なんでしょ?


「…………あの、何を考えてるか分かるですが、首狩り兎は中級の中でも上位の魔物なのですよ?」


「マジ? ピーちゃんが一瞬で殺したから強さが分からん」


 いや、でも「じゃぁ戦って強さを確認しよう」とかは微塵も思わないけど。ステータスを上げても俺は自分をそんなに強いとは思ってない。


 俺の安全はバハムートやアオミ、その他眷属達の強さに依存する物なので、ここで無駄な冒険心なんて出したら命が危ない。


「…………ところでカイト、聞きたい事がある」


「ん?」


 さぁ気を取り直して、さっさと川を探そうかって足を出したタイミング。ふとポロに裾を引かれて止まる。


「動画でべんきょーした。サケの身が赤いのは、アスタキサンチンのお陰。迷宮鱒もきっとそう」


「うん? まぁ、そうだな?」


 何故それを今?


「じゃぁ、迷宮鱒が赤いあの湖、カニかエビが、居たのでは?」


 ………………………………だから何故それを今ッ!?


 え、待ってホントじゃん!? なんで今なんだよ四層で言ってくれよマイワイフッ!? カニ食べたいじゃん!? 迷宮産なら淡水のそれでも多分デカくて美味かっただろうによ!?


「も、ももももも戻って探すか!? カニ鍋するかっ!? エビかもしれんが!」


「帰りに、寄ろ? ポロも、カニ食べてみたい。動画で美味しそうだった」


 こうして、俺達のダンジョンアタックは四層、六層、四層の順で行われる事が決定した。帰り道まで楽しみがいっぱいだぜ!


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