もぐもぐのルリ。
死んだかと思った。黒い怪鳥に攫われた時は、ああ終わったなと思った。
森に有り得べからざる強き
あの時は、自分でもなんで生き残ったのか分からない。でもその後に、新しき長が僕に「お前は強い子だ」と言ってくれた時、なんだか身体がふわっとした。
群れは、弱き者から消費される。
頂点を活かすための数であり、それは末端から失われる。だから僕は、鳥に攫われた時に今度こそ終わったと思った。
群れには僕より弱い者が居なかった。僕がこの群れでは末端であり、群れの存続を考えれば切り捨てて当然の駒。
だけど、ピー先輩がすぐに来てくれた。驚く程に怒り狂い、その氷を振り撒いて僕を食べようとした鳥達を皆殺しにしていく。
僕は、群れの末端なのに。
その後は長達も来てくれた。皆が怒って必要以上に鳥をイジめるのを見たら、皆がどれだけ怒ってるのかを理解出来た。
身体中が痛くて、最後にこんなに優しい何かを見て死ねるならそれでも良いと思った。
でも僕は何かを変な味の水を飲まされて、身体がすぐに良くなった。
驚いてると、長が僕を持ち上げて抱きしめる。頭を撫でて長が使ってる寝床を貸してくれた。ふかふかで、ふわふわで、凄い寝床だった。
その後は長の
序列が僕の一個上に居るメスも来てくれた。僕が飲まされた変な味の水を出したメスだ。
皆が僕の身体を「もふもふ」と言って撫でてくれる。特に長のメスが撫でてくれると凄く気持ち良くて、もっと甘えたくなる。
「ほら、飯が出来たぞ。行儀は悪いが、今日はここで食っちまおう」
そして皆に遊んでもらってると、とってもお腹が空く香りが漂うお肉を長が持って来てくれた。
長達は寝床に食べ物を入れないから、今日は特別なんだ。
皆が、皆が僕に優しくしてくれる。とっても美味しいお肉を口に運んでくれる。
長が用意してくれたお肉を噛むと、優しくて暖かい気持ちが滲み出てきた。
「上手に食べれて偉いな、ルリ」
ただ美味しいお肉を食べるだけで、頭を撫でて褒めてくれる。僕は序列最下位なのに、皆が僕に優しくしてくれる。
最初に僕を睨んでた怖い
長が少しずつ切って口に入れてくれるお肉は丁度良くて、噛む度に美味しい脂が出て来て、どれだけでも食べられそう。
だけど、長が食べてるお肉の方が不思議と美味しそうだから、長に頭を擦り付けておねだりする。
「…………もう、しょうがないな。ちょっとだけどぞ? 塩分が身体に悪いから」
苦笑いする長は、自分のお肉を僕の口に入れてくれた。もし他の群れでこんな事をしたらすぐに追い出されるか、殺されるだろう。
でもこの群れは僕が長に甘えても怒らない。むしろ皆がもっともっと甘やかしてくれる。
なんだか身体がぽかぽかする。食べた主のお肉は、僕が食べてた物よりずっとずっと刺激的な味がして凄く美味しい。びっくりして口が開いちゃった。
あまりにも美味しいから、気が付くと長にもっと甘えておねだりしてた。すると今度は主のメスも僕にお肉をくれた。
「ルリ、いっぱい食べて元気になる。ポロのお肉も食べると良い」
お肉が美味しい。なにより、甘えても許されるこの場所がぽかぽかしてて嬉しい。
死んだと思ったけど、助けてくれた。僕は群れの末端なのに、この群れは僕を切り捨てない。
群れが生き残る為じゃない。僕が生き残る為に戦ってくれた。
「ゎぅん……♪︎」
長に、主に頭をすりすりした。主のメスの足にもすりすりして、ピー先輩とアオミ先輩にもすりすりする。
バハ先輩とリヴァ先輩とレヴィ先輩にもすりすりして、スカーレット先輩達とサーペント先輩達とチビドラ先輩達とソードキャット先輩達とマナイーター先輩達にもすりすりする。
「おお、なんだルリ。甘えん坊だな」
「はわぁ、迷宮狼が可愛いですぅ……」
「甘えるルリ、かわいっ」
僕はルリ。皆がそう呼ぶから、きっとルリなんだ。
群れのメスは長の子を孕む為に居るから、僕もきっとその内そうなるのかな。
今は長が自分のメスに集中して子作りしてるけど、長のメスが孕んだら、次は「ですです」鳴いてるメスの番かな。その次が僕?
それは義務だった。けど長の子なら孕みたいと、不思議とそう思う。だって長は僕の主だから。
「わぅんっ!」
ここが僕の生きる新しい群れ。とっても強くて、とっても優しい素敵な群れ。
お肉を好きなだけもぐもぐ出来る、最高の群れだよ。
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