誘拐。
気を抜いて居たと言えばその通り。舐めていたと言われても否定は出来ない。
だがまさか、こんな事になるなんて。
「きゃぃんッ────!?」
エルンが捌いた肉に胡椒を降ってる時だった。
背後の少し離れたところでルリの短い悲鳴が聞こえ、俺は何事かと振り返る。
するとその場にルリが居らず、少し視線を上げれば鳥型の魔物に攫われて天空に連れ去られたルリが居た。
「ルリィィィィィッッ!?」
俺の大声で事態を把握したポロとエルンも空を見る。その間もルリは刻一刻と小さくなって遠くの空に消えていく。
「
「追う!」
「アオミィイ! ドラゴン形態!」
俺はすぐさま展開してる物全てをインベントリにぶち込み、アオミにフルサイズの透竜に変身してもらう。ああインベントリの収納タイムラグがイライラする。
ポロは既に巨大化したピーちゃんに跨って空に飛ぶ。俺も全てを片付けたらエルンの腕を引いてアオミに乗る。
「ひゃぁぁあっ、透竜にのっちゃったですっ」
「口閉じてろ舌噛むぞ!」
眷属強化でアオミを最大強化してルリを連れ去ったデカいカラスを追い掛ける。ウチの子を攫いやがって絶対許さねぇあの鳥。焼き鳥にすらしてやらん。
森と草原が入り交じる階層を飛んで先を行くピーちゃんに追い付くと、俺はポロをこっちに移らせる。
「ポロ、こっち来い! ピーちゃんを軽くした方が良い!」
「ん、分かった。ピーちゃん、ルリをお願い」
「ギュゥァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!」
随分と野太くなった声でルリの姉貴分が吠えた。間違いなくピーちゃんもブチ切れてる。
ピーちゃんは軽くなった体でまた少し速度を上げて、眷属強化で速度を上げたアオミを引き離す。
ノーマルでその速度なのだ。なら何も乗せずに最大速度を出してもらって先行させた方が良い。
当初と違ってルリはもうピーちゃんの立派な妹分だ。それを誘拐したんだから最上級モンスターの怒りを知れ。
「て言うかどうして誰も気付かなかった!?
「お、大烏は隠密の魔法が使えるですよっ」
そんな奴が居んのかよ。ちょっとダンジョンを舐めすぎてたわ。
「流石に、お二人を狙ったらアオミさんかピーさんが気付いたです。でも少し離れてたルリちゃんなら…………」
そういう事か。つまり存在感を減らせる類の魔法なんだな? 距離に応じて効果が変わるタイプの。
「大烏は五層の徘徊型階層主ですっ! 巣には子供が沢山いて、全部を相手にしながら戦うのは危ないです!」
……………………へぇ? 子供居るんだ? へぇぇぇえ?
「上等じゃん。人の家族を狙ったんだから、目の前でガキを虐殺されても文句言えねぇよな?」
「…………因果応報」
「へっ? え、お二人さん?」
情報ありがとうエルン。復讐はすぐにでも出来そうだ。
「追い付いた!」
もう既にカラスは巣に辿り着いていた。そこは巨大な木の頂上で、そこだけ何故かすり鉢状になってて大量のカラスが居るのが見えた。
だだっ広いフィールドに先乗りしたピーちゃんが既に暴れまくってて、真ん中に落とされたらしいルリの周りにはピーちゃんの氷が張り巡らされて防御は万全らしい。
「流石ピーちゃん! さぁお前ら、妹分の奪還と報復同時にやるぞぉ!」
俺が宣言してアオミをフィールドに突っ込ませると、同時に狼海竜達が絶叫しながら追従した。コイツらもブチ切れてるらしい。
更にチビドラ五十、スカーレット二百、サーペント四、ソードキャット四百、マナイーター三百を解放して子ガラスを狙わせる。
「クェェエアアアアッ!?」
「るぇせぞ糞カラス! ガキごとぶっ殺してやるから大人しくしやがれ!」
ポロとエルンを脇に抱えてアオミから飛び降りたら、ピーちゃんがボコってるカラス狩りにアオミも参加させる。既にダイアグラム0:10だったのに追加で透竜の登場だ。そのまま死ね。
「手加減は要らん! 全て狩り殺せ!」
俺もライフルを抜いて射撃を開始する。ポロも同じく。
エルンはまさかこんな大戦争をするとは思ってなかったらしくあわあわしてる。
「ポロ悪いが補給を頼む! 眷属強化に魔力使いたいから水の補給が難しい!」
「あい、任せて欲しい。家族をさらった罪は重い。全力で償わせる」
「命でなぁ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます