目指せ第六層。
「よしよし…………」
四層で二週間ほど釣りを楽しんだ俺達。新しく仲間になったルリも俺達の生活に慣れて、今では立派なペットである。
今も顔をほにゃほにゃにしたポロがルリを優しく撫でている。どうやら動物が大好きらしい。何となくナマケモノなイメージがあるポロだけど、実は牙羊の世話は誰よりも率先してやるくらいには動物好きなのだ。
突然ペットの座を奪われたピーちゃんは激おこだったけど、そこはオレがフォローしといた。
ここで強者であり先輩であるピーちゃんが新入りを優しく可愛がってあげたら、ポロの中でも株が上がるだろうなぁ。いやまさか最上級モンスターなのにダンジョン二層に居るような子をイジメるなんて事はしないだろうけど、もしやったらポロはどう思うかなぁ〜。
おお、見ろよポロ。先輩のピーちゃんがルリのお世話してるぜ。やっぱ氷怪鳥ほどの存在になると配下にも優しいんだろうな。さすがポロの相棒だ。新入りには優しいし、冒険者にも氷を配ってたし、本当に良い子だよな。
なんて感じでフォローしたので、ポロの中でしっかりピーちゃんの株は上がったし、なんならピーちゃんの中で俺の株も上がった。
本当に主からの覚えが良くなってピーちゃんは大満足だ。ほんとチョロいぞこの鳥。
そうして仲を取り持ちつつ、二週間で何回食べたかも分からないウナギの蒲焼きを作る昼。
既にスタックしてる在庫は死んでるが、なるべく生きたまま捌きたいので生簀に残してある分からウナギを取り出して、ピーちゃんに作って貰った氷水にぶち込んで氷締め。
こうするとウナギは活動が鈍くなって、とても扱いやすくなる。逆にやらないと元気ににゅるにゅるするから捌くどころじゃ無くなる。
氷締めで大人しくなったらまな板へ置いて、捌いていく。
まず頚椎に包丁を入れて、神経を切って完全に絞める。数分はまだ動くけどそんなもんだ。
その後にアイスピックで目打ちをしてまな板に頭を固定。目打ちと言うが、実際に目を打つ訳じゃない。打つのはエラの下辺りだ。
ウナギは背開きと腹開きがあり、関東と関西で変わるらしい。関東が背開き、関西が腹開き。俺が大将から学んだのは背開きなので、背中から包丁を入れる。
この時、左手を丸めてウナギの腹を包むように持ち、その左手に右手で持った包丁を添えて固定する。こうするとにゅるにゅる動くウナギを左手で包丁の方へと固定してスムーズに切れるので、簡単に捌けるのだ。
漫画のキャラがやってるようなフリーハンドでの一瞬かっぴきとか無理である。物理法則すら無視してるよあれ。
背を開いたら
この時、苦玉と呼ばれる臓器があるけど傷付けないように気を付ける。割ると味も匂いも落ちるので本当に気を付ける。
次に背骨に包丁をすき入れて取り除き、この時に尻尾の食べない場所も一緒に切り落とす。そしたら背びれと腹びれもスパッと切って取り除く。
出来たら内臓があった場所に溜まってる血合いを包丁の腹でグリグリと擦って取り除く。マグロとかは血合いが美味いと言う人も居るけど、ウナギに関してはただ邪魔だ。
その後、腹骨にも包丁をすき入れて取り除いたら終わりだ。コツは包丁を立てて一回切れ目を入れたら、血合いと同じように包丁で擦りとるような感じで大丈夫。
その後、身を洗って血や骨、血合いの汚れを綺麗に流したら終わり、あとは唐揚げにするならぶつ切り、蒲焼きなら適当な大きさに切ってから串を打って下拵えは完成だ。
「カイト、タレとご飯は出来た」
「おう、ありがとうな」
ポロが教えた通りにタレを作っててくれたので、それを使って焼いていく。
タレは市販のボトルを鍋に入れて水で少し薄める。そして煮干しと、捌いた時に出たウナギの背骨をぶち込んで一緒に煮る。
五分から十分くらい煮たらキッチンペーパーで濾して、市販のタレがかなり美味しく改造されてる。
タレを準備したら串を打ったウナギを焼く。関東なら先に蒸してから焼きに入るけど、関西式はこのまま白焼きにする。どちらも長所があり、俺は香ばしい方が好きなので
ウナギを焼く時のコツは、炭火との距離だ。バーベキューみたいに遠火じゃだめ。時間をかけると水分が飛んでパサつくので、炭火との距離は1センチくらいの至近距離で調理する。
まずは皮を下にして白焼きに。下からの熱で身が白くふっくら火が通るくらいになったらひっくり返すと、ウナギの皮に焼き目が付いて香ばしくなってる。
ひっくり返した白身をちょいちょい確認しながら焼き、白身が薄らと茶色く色目が付いた頃に一旦火から下ろし、作っておいたタレにドブ漬け。
そしてまた皮から焼く。コレを短時間に二度繰り返し、それで完成だ。
インベントリを使って保存しながら全員分作ったら、メスティンの中でほかほかに仕上がってるご飯に乗せて串を抜く。
最後に、焼くのにも使ったタレをちょろっと掛けたら鰻重の完成だ。
「今日も、美味しそう」
「んふふ〜、高い日当貰ってこんな美味しい食事まで食べて、いやぁ良い仕事ですぅ〜!」
エルンはウナギに対しても最初は驚いていたが、それでも焼いてある分だけ拒絶感は少なかったのかすぐに慣れた。と言うか今では大好物であり、作り方を教えてくれって頼まれたくらいだ。
「「「いただきます!」」」
さて実食。ご飯と一緒にパクッとな。
「…………んはぁ、何回食ってもうめぇ」
身がホクホクなのに口の中でクリームのように溶けて消える。なんだよコレ殆ど飲み物だよ馬鹿野郎。
炭火で炙った香ばしい皮の風味に、醤油ベースの甘いタレが極悪の相性で白身の美味しさを飾っていく。なんて実力派なコーディネーターなんだ。仕事し過ぎだろ。
いやもう食レポとかどうでも良いわ。美味い。ただ美味い。それだけで良い。
「ただカロリーが凄い!」
「ん、夜にいっぱい運動する」
「は、はわわわ…………」
「ポロお前ちょっとエルンを
こうして極上の鰻重を楽しんだ俺達は、二週間も滞在した湖から撤収する。
とは言っても、目指すのは地上じゃない。更に深く潜って六層を目指すのだ。
待ってろよ、残りのダンジョン固有種! すぐに釣ってやるからな!
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