震える犬。
翌日。朝起こると、グランプの横でワンチャンが震えて鳴いていた。何事か。
歯ブラシでシャコシャコと歯磨きしながら見てみると、どうやらグランプを襲おうとして精霊達から返り討ちにされたモンスターの一匹らしい。
何故に生き残ってるのか分からないが、リヴァイとレヴィアがメンチ切ってて動けないみたいだった。
「
シャコシャコしながら精密使役を使って聞くと、逆に聞かれる。伝わる感情を簡単に翻訳すると、「ペットにどう?」って事らしい。
………………ウチの子、そんな行動もするん?
まぁ
精霊化出来ないので実態がついてまわるモンスターを管理出来るだろか?
怯えてうるうるなお目々は真っ赤で宝石みたい。ルベライトかスピネルか悩むところだ。
その子は俺を見て、「助けてくれるの……?」とでも言いたげな瞳でウルウルしてる。そりゃ竜に一晩中睨まれてたらストレスでそうなるわな。
完全に野生を捨て去った狼に近寄ると、ビクッと反応して震えてる。虐待された犬みたいな反応されると心にクるから止めてくれ。
歯磨きしてガラガラぺをした後に狼の目の前でしゃがんで視線を逸らし、手を目の前に差し出して匂いを嗅がせる。嗅がざるを得ない本能を確認したら、見えるように顎の下に手を伸ばして撫でる。
「グッボーイ、グッボーイ。一晩も良く耐えたな。お前は強い子だ」
言葉は伝わらないだろうけど、狼は俺に腹を見せて服従した。触り心地が良くてつい撫でてしまう。
「うん、良し飼おう」
可愛いから良し。リヴァイ、レヴィア、グッジョブだ。
クゥンクゥンと鳴く狼に、元バハムートだった肉をインベントリから出して与える。残り少なくなってきたけど、新しい仲間には振る舞うべきだ。
狼は上位者が食べてからじゃないと食べない習性なので、目の前で切り出した肉を食ってみる。竜の肉は生食可能なのでそのまま食べた。
許しが出てお肉にがっつく狼は、よほど美味しかったのか一口食べたら全身を震わせて塊、そしてはぐはぐと凄い勢いで食べ始めた。
「ふぁぁあ、ほぁよぅごじゃまぁ……」
眠い目を擦ったエルンが起きてきた。そして狼にビビって目が冴えたのか飛び退った。
「め、迷宮狼です!? なんでここにいるですッ!?」
「迷宮狼、ってことは固有種?」
「えっ? まぁ、はい。この狼は固有種ですけど……」
なるほど。外に居る狼とはまた別の種類なんだな。毛並みも良いし素直だし、可愛いじゃないか。
「ま、まさか手懐けたです?」
「リヴァイ達が一晩中脅してたみたいで、助けたらコロッと」
「あぁ…………」
一瞬で悟ったエルンは同情の視線を狼に送る。
「でも、契約しないとダンジョンから連れ出せませんよ?」
「契約……? やり方知ってる?」
「えと、ダンジョンの魔物は体のほぼ全てが魔力由来なので、それを書き換える、です?」
自信が無さそうなエルンだけど、要は狼の体にあるダンジョン由来の魔力を俺の魔力で書き換えれば良いって事か?
「…………やってみるか。
魔力の書き換えなんて方法は知らないけど、
何かが拮抗してる感覚があるけど、それを
すると、狼の毛色の黒い部分が少しずつ代わり、とても深い瑠璃色に変化した。白い部分はそのままだが、灰色だった部分も薄らと青く変わって綺麗な仕上がりである。
赤かった目も青く代わり、本当に瑠璃の宝飾品にすら見える。とても澄んだ青色だ。
「…………い、一発で成功です?」
「え、失敗とか有るの?」
「です。失敗すると魔物が苦しんで死ぬです」
「それ先に言ってくれない!?」
超重要な情報を後出しにするな! もうウチの子だぞコイツは!
「よーしよしよし、もう大丈夫だからな。野生なんて捨てちまえ。良い子で居るだけでずっと守ってやるし、ご飯もやるからな」
「くぅ〜んっ……」
わしゃわしゃと撫でて可愛がる。名前も付けなきゃな。何が良いだろうか? 瑠璃色だからラピス? 安直だな。だったらそのままルリで良いか。
「ちなみにおまえオス? メス? ちょっとお尻見せなさい」
「わぅ?」
女の子でした。ルリで決定。
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