迷宮攻略。
四層の湖には迷宮
迷宮鱒は聞いた感じだとサーモントラウトで、迷宮鰻はなんの捻りも無いウナギに思えた。ウナギは見た目から嫌煙されてるけど、マスの方は死ぬほど美味くて人気食材らしい。持ち帰ると高値で売れるとか。
売らねぇけどな!
六層の川には攻撃性の高いモンスターフィッシュが居るそうだ。デカい魚って意味じゃなくて文字通りのモンスターフィッシュ。
川に入った生き物に対して、アマゾン川のピラニアみたいに群がって噛み付き、食い殺そうとしてくる
同じくアマゾン川で入水した人間を惨たらしく殺す事で有名なカンディルみたいな性質を持った殺人鯰。穴という穴に侵入しようと食い破ってくる恐ろしい魚だ。
でもカンディルって二種類居るんだよな。食われる結果はほぼ同じなんだけど。
あとガチガチに硬い鱗で覆われた
「楽しみだな!?」
もうワクワクが止まらない。全部がダンジョンの固有種らしく、ここ以外のダンジョンにも居るけどダンジョンにしか居ないのは確実らしい。釣らなきゃ、魚拓を得なきゃ……!
殆ど使われることの無い
エルンの案内でやって来たダンジョンは、まず入口がクソでかい洞窟。5メートルくらいの岩山をくり抜きましたって感じの見た目だ。
そこに入ると中には下に向かうスロープ状の道があり、ここまでならグランプでも入れそうだった。インベントリにしまってたけど。
で、スロープを降り切るとそこには森があった。
天井には太陽が無い代わりに晴れ晴れとした空が広がり、風すらも感じる完全な森。と言うかジャングル。
第一層は、このジャングルが東京都くらの広さで広がってる階層なのだとか。
日本人としては懐かしくらいだが、高温多湿のジメッとした空気が不快感を煽る。気温は三十ちょいかな? 夏日だぜ。
「…………あ、あつい」
ポロが零して、じっとりと汗ばむ額を拭う。そんだけ髪の毛で背面を保温してたらそりゃ暑いわ。
「ポロ、髪の毛くくった方が良いかもな。もしくはピーちゃんに頑張って貰うか?」
「ぴー!」
やる気を出したピーちゃんが力を一部解放して、とたんに俺達の周辺に漂う熱気が消え去る。
「…………ピーちゃん、最高。好き」
涼しくしてくれたピーちゃんを抱き寄せて頬擦りするポロ。ピーちゃんもご満悦だ。
「ありがとな、ピーちゃん」
「す、凄いです! 一層がこんなに涼しいなんて初めてですよ!」
まだ一層の入口で人も多い。涼しいと騒ぐエルンの声で「え、涼しいの……?」と近くに来る冒険者も居る。
その人は「あ、ほんと涼しい……」と幸せそうな顔をするけど、俺達が進んで熱気が戻ると慌てて着いてくる。
そんな人が三十人くらい出た。
「…………………いや流石に迷惑!」
「そ、そこをなんとか!」
「もう一層のジメジメした暑さはうんざりなんだっ!」
必死である。ピーちゃんもウザがってるが、ポロがピーちゃんに「何とかならない?」とお願いすると、「主のお願い叶えるチャンス!?」と手のひらを返した。ちょろいなこの鳥。
「ぴぃ〜!」
ポロの肩でピーちゃんが翼を広げて甲高く鳴くと、周辺にボトボトと氷の粒が落ちた。
「こ、この氷凄いで涼しいぞ!? 持っても冷たくない!」
「あの鳥がやってくれたのか?」
「おい止めろ。あの鳥は小さく化けてる氷怪鳥だぞ。ただの鳥呼ばわりして怒らせたらどうする」
「氷怪鳥……! だからこんな事も出来るのか……」
落ちた氷はどうやら、持ってると周辺を涼しくしてくれる魔道具みたいな物らしい。要するにそれをくれてやるから散れって事なんだろう。
「な、なぁ! これってどのくらい持つんだ?」
「さぁ? ピーちゃんに聞かないと」
流石に意思疎通までは出来ないので、何とか工夫して聞き出した。
維持出来る時間の単位は分? 時間? 日? で日で頷くピーちゃん。
何日持つ? って俺の手に氷を五つ出したので、多分五日は持つんだろう。
「最高か!?」
「やっぱ時代は氷怪鳥だよな。見ろよ、小さくても凛々しいあの姿。きっと手懐けた少女もさぞ凄いのだろう」
「これで探索が捗る……! せ、せめて金を払わせてくれ!」
地味に誰かがポロを褒めたのが効いたらしい。ピーちゃんは誇らしそうな顔をして飛び回る。さしてお金を払うと言った冒険者の元に行ってそれを受け取ると、ポロの元に戻って差し出した。銀貨一枚だ。
ポロは嬉しそうにピーちゃんの頭を撫でて「良し良し、ピーちゃんいい子」と褒めると、喜んだピーちゃんがお金を出した冒険者が持つ氷に干渉してグレードアップ。
手で握り込めるくらいの小さな氷だったのに、それが倍くらいに大きくなった。
まるで「大儀であった」とでも言いたげな顔で驚く冒険者を眺めたピーちゃん。それを見てた他の冒険者も「お、俺も!」と次々にお金を差し出してきた。
ポロに直接差し出そうとする冒険者はピーちゃんに叩き落され、まずピーちゃんが受け取ってからポロに手渡す形を曲げない。
ポロも受け取る度にピーちゃんの小さな頭を指先ではクリクリと撫でるもんだから、ピーちゃんはもう楽しくて楽しくて仕方ない。
気が付けば、最初に居た三十人を超える人数がポロの前に並んでる。皆もジャングルの暑さは懲り懲りなのだろう。
「め、女神だ……! 氷の女神が居る……!」
「そうか、だから氷怪鳥を従えてるんだな」
「ああ女神様、神鳥様……!」
ポロに好きなだけ褒められ、ポロの名声も上がり続ける。この世の春よとでも叫ぶようにピーちゃんは調子に乗り続けた。
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