興味無い癖に。
さぁやるぞ、と決めたら早かった。
何が早かったかって、周囲の反応が。決着はまだである。
「いいぞいいぞ! やれやれー!」
「さぁ賭けた賭けた! 赤顔のボッズと新顔の少年、勝つのはどっちだァ〜!?」
「流石にボッズだろ。銅貨三」
「いや大穴狙うね。ガキの方に銅貨一」
「大穴っつうならもっと賭けろよお前。ボッズに銀貨二〜!」
一瞬で人垣による囲いがされ、俺とポロと酔っ払いが取り残される。
賭けも聞こえるが、大体オッズが俺と酔っ払いで3:7くらいか。舐められてるねぇ。
「これが酔っ払いの実力が高いからなのか、俺がガキだからなのかで変わるんだが」
と言っても十七歳はこの世界で立派な成人。童顔に見えると言っても成人の十五には見えてるはずなんだけどな。
「まぁ良いや、来いよオッサン。潰してやるから」
「吐いた唾は飲めねぇぞクソガキがぁあ!」
酔っ払いを挑発して先手を取らせる。まずは実力を様子見する。
ポロには下がってもらって、まずはお馴染みのチビドラガード。
ゴッッッッ……!
酔っ払いの癖に様になってる足捌きで肉薄した男が結構フォームの綺麗な右ストレートを打ってきた。一瞬手が光ったのでスキルを使ったのかも知れない。
目の前に現れたチビドラによる障壁が、男に殴られ凄まじい音を立てて歪んだ。チビドラが普通に痛そうなのを見ると、この男はステータスをちゃんと上げてる冒険者だと分かる。ならスキル使ったのも確定で良いか。
流石にダンジョンと神殿のハッピーセット都市。その辺のおっさんが普通にステ上げてんだもんな。
「お返しだ。新技、ドラゴンクロー!」
見たい実力は見れたので、俺は長引くとちょっとヤバい気がして仕留めに行く。
精霊は実態と非実態を選べる存在だ。それは全体ではなくパーツ毎である。なら、姿を現す部位も選べるのでは?
そう考えた俺が考案し、地味に練習して用意しておいた対人技、ドラゴンクロー。
「ぃぎ────」
「……ッラァァァァァアアアッッ!」
右手の拳にバハムートの拳を纏い、俺の拳に追従して貰ってぶん殴る。俺の拳に竜が宿ったように見える派手な技だが、実際は逆。
本当は、バハムートが俺の体に巻き付くようにして実態を隠し、俺の右手側から頭だけ出して先端のみに接触判定を作り、頭突きをしてる。俺はそれに右手の拳を合わせて振り抜いてるだけ。
そう、つまり俺は実質何もしてない! バハムートが頭突きをしただけなのだ!
俺がぶん殴ったようにしか見えないバハムートの頭突きでぶっ飛ぶ酔っ払いは、人垣に衝突した後にその人垣から蹴りを入れられてリングに復帰。
しかしその場で崩れ落ちてダウン。耐久も振ってるだろうと思って、眷属強化も使って顎を殴ったからな。
どうだ、俺の拳に(に見えたバハムートの頭突き)は効くだろう?
対人戦とか興味無いけど、こんな時の為に作ってあったんだよね、合体技をさ。
さっきは良くもアオミの事を変なモン呼ばわりしてくれたなコノヤロウ。ぶっ飛びやがれ。
「勝者、新入りのガキー!」
「んだよ負けたー! 外から来たのに原始魔法持ちかよツイてねぇ!」
「はっはぁ! もっと金乗せときゃ良かったぜぇ!」
周りの冒険者達は見世物が終わった終わったと席に戻り始めて、随分と手馴れてる様子から良くある事なのだと知る。手馴れすぎだろコイツら。
「…………で? この酔っ払いはどうすれば?」
「あん? 放置で良いぞ。負けた方が悪い」
なるほど、この都市では強さも弱さも自己責任。こうやって自分から絡んだくせに負けよう物なら打ち捨てられてしまうのか。
ステータス上げてあってスキルも使った臭いコイツは、他の都市ならさぞチヤホヤされる事だろう。でもこの都市ではこのレベルがゴロゴロ居るんだろう。
なんだろう。外部と違う環境に適合した変種のモンスターみたいな奴らだな、ここの連中。もしくは蠱毒か? 今は最後の一匹を培養中なのか?
あまり長居をすると空気に染まりそうだ。さっさと目的を達成して海に帰ろう。
なんだかんだ、テムテムとエントリーの空気が俺に合ってる。あそこを往復する位が丁度良いかな。
まぁそれはそれとして、釣れる情報手に入ったら遠征するけど。
「…………放置で良いらしいし、行くか」
「ん、行く」
ギルドを出て、グランプを出して教えてもらった場所に向かう。
ギルドのお姉さんはダンジョン前の広場って言ってたが、都市の中に広場があるのか? 開発が進んでる分明ならまだしも、この国だと都市の中に土地が足りねぇんじゃ?
広場と言うからには、エントリーの空き地とは訳が違うんだろうし。
とか思ってたら本当にあった。ダンジョン前の広場。
そこを見て理由も察した。腰の高さまで積み上げた壁を防壁とした築陣と、その内部にある武器類。アレだ、ダンジョンが氾濫した時に抑え込む為に広さが必要なんだ。
「このダンジョン、氾濫とかするタイプなのか」
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