キレイキレイ。



 翌日、身支度をしながら外を見てみる。すると色々、綺麗さっぱり消えていた。血の跡すら残ってないのは、アオミが掃除でもしてくれたのかな。


「キレイキレイされとる」


 最近ちょっとアオミの事が分かってきた。この子、言うなれば『生きた海神の神術オーシャン・レア』みたいな存在で、竜種とは言うが実質は超強いスライムだ。


 何を持ってしてアオミを竜と呼ぶのか分からないが、俺としては定形を持とうとする不定形のモンスターがアオミである。


「んぉ、なんかある。………………白い鱗?」


 朝日が登って数分と言ったところでコップを片手にシャコシャコと歯を磨きながら、グランプの近くに積まれた物を確認する。


 血がこびり付いてるけど、昨日潰した白竜の素材かな。誰が集めてくれたのだろうか。


「んー、有難く貰っておこうか」


 シャコシャコしながら海神の強襲オーシャン・レイドを起動。灰ガシラ…………、付けた名前なんだっけ。マナイーターとかだっけ?


 マナイーターに鱗を口で運んでもらい、コンテナの中に入れてインベントリへ。ちょっと最近コンテナを無駄遣いしてる気がするな。枠が三十くらい埋まってるので、そろそろ整理した方が良いかもしれない。


「…………もうテントとか使わないもんな。グランプが手に入って使わなくなった物は整理するか」


 本当は早起きからの釣りがしたかったが、思い立ったが吉日なので今やっちゃおう。


 ガラガラぺってしたら歯ブラシとコップをグランプに片付けて、インベントリの整理を始める。


「インベントリから速攻で使いたい物以外は全部グランプの中に入れちゃおう。そうしたらグランプをインベントリにしまうだけで何個も枠が空くな」


 食料コンテナもグランプの中に入れて良いと思うんだけど、出して中身忘れると腐るかもだしな。何を纏めるか悩む。


 とりあえず、今は使わない事が確定してるテント類は全部グランプに入れちゃおう。テント使いたい時は絶対グランプも使えるから、必要な時にはグランプ経由で出し入れしても良いし。


 他にもキャンプ用品類はグランプに入れてキッチンの棚に仕舞える物が殆どだ。


「こう見ると、結構整理出来るな」


 頑張って整理を続け、三十使ってた枠を二十まで圧縮する事に成功した。


 これでまたインベントリが使い易くなったぞ。


「んー、マウンテンバイクも神器から外しちゃうかな。解除権二個しか無いから慎重にいきたいけど、自転車以外は絶対に外さないしなぁ」


 水鉄砲ライフル鮫丸鉄時ふかまるかねときは一応、俺のメイン武装だし。


「神器どうしよっかな。………………スマホとか?」


 生前使ってた物って縛りならアリだ。もしかしたら神器パワーでバッテリー無くても使えるようになるかもだし。


「ポロも海神の七召命オーシャン・オーダーの枠空いてるし、ショップで買ったスマホを渡せば連絡取れたりしないかな」


 試して見る価値はあるか? 神器化は道具の方向性を読み取って強化する感じだから、かなり可能性は高いと思う。


 少なくとも、水鉄砲のバッテリーやエンジンのガソリンは供給無しで使えるんだから、スマホだってバッテリー無しで使えるはず。そしたら最悪は多機能ガジェットにはなってくれる。


 写真が手軽に撮れて、動画が撮れるだけでも価値は高い。やって見るか。


 ポセイドン様から貰った神器付け替え権利を一つ消費して、自転車の代わりにスマホを神器化。


 俺が生前一番良く使ってた完全防水タイプのゴツイやつ。無制限契約が出来なくてネットの利用には向かなかったけど、本体の性能だけで言うとピカイチだった。


 手元に召喚してみると、昔使ってた物じゃ無くて新品である。でも中のデータは前なまま。こう言う地味なサービス嬉しいよな。


 電源を入れてみると、ちゃんと起動した。神器化して動力が無限になったんだろう。


「よっしよっし」


 俺はイタズラ心が湧いて、グランプの寝室に戻ってまだ寝てるポロの元に。


 ポロの可愛い寝顔を色んな角度から撮影して、彼シャツ状態再びな感じになってる際どい写真も撮っていく。


「ふぅ、満足」


 そして一番可愛いなと思った写真をホーム画面に設定した。はい俺の嫁可愛過ぎ〜。


「…………んむぅ」


 パシャパシャ煩かったのか、ポロが呻きながら目を擦って起きてきた。


「おはようポロ。今日も最高に可愛いな」


「…………? ぉはょぅ」


 目をこしゅこしゅすら姿も可愛いので動画で撮影する。はぁぁあ可愛い。


「………………かいと、それなに」


「これはな、スマホって言う道具だ。俺の故郷だと殆どの人が持ってて、肌身離さず持ち歩いてた必需品だ」


「……ほぇ」


 寝起きでポケッとしてるポロ可愛い。シャツがはだけて色っぽい幼女である。


「何につかぅ……?」


 疑問を頂いたので、撮影したお目々こしゅこしゅポロを見せてあげた。


 するとポロは少しずつ理解して頬を染めていき、毛布を顔まで引き上げて隠してしまう。


「そういうの、よくない……」


「ごめんな。ポロが余りにも可愛いから、残したくなっちゃったんだよ。この可愛いポロをいつでも見れるって幸せだろ?」


「はじゅかしぃ……」


「でもポロ、もし逆の立場なら、同じことするだろ? 俺が寝てて、ポロの手には寝顔を永遠に記録出来る道具が……」


 俺が問うと、ポロはしばらく黙った後に「それはそう」と肯定した。つまり俺は許された。


「はぁポロ可愛い。ふわふわの髪、小さい顔。くるっと回る角も素敵だよな。寝ててクリクリで金色のお目々が見えないのは残念だけど、目を瞑ってるポロも────」


 目の前で褒めまくったら顔を真っ赤にしたポロがゴスゴスと俺を殴って来た。照れ隠しまで可愛い。信じられるか? この子が俺の嫁なんだよ? 世界始まったよな。


「かいとのばかぁぁ…………」


 可愛くてぎゅっとしたら許してくれた。


「でもしゅきぃ……」


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