頭からバリムシャァ。
阿鼻叫喚の悲鳴と怒号をBGMにして天ぷらを食べる。
釣れた小黒はどれも小さ目で、流石にワカサギくらいとは言わないが天ぷらにして頭から食えると思えるサイズだった。
天ぷらの裏技、衣に少しビールを混ぜるとカラッと揚がる方法がある。試しにやって見たら思いのほか上手くいった。
塩を振った小黒の天ぷらを、頭からバリムシャァ。苦味もあるがそれ以上に出汁が効いてる。サクサクと小気味良い食感を楽しみつつ、次々と箸を伸ばしてしまう。
身が小さいゆえ、食いでが無いゆえの食感、旨味がここにある。
歯でくしゃりと押し潰した衣が、直ぐに身と合わさって噛み潰される。小さいからこそ実現する独特の味。
「んー、うまっ……」
「正直、舐めてた。揚げただけなのに」
「下味すら付けてないもんな」
俺とポロは目の前で広がる大怪獣バトルを楽しみながらサクサクと天ぷらを食べ進める。
どうやらピーちゃんは真性のSっ子らしく、殺せる奴もあえて生かし、じわじわと足元から凍らせたり頭からバリムシャァする振りをして絶望を与えたりしてイジメ抜いてる。
意外な事に、アオミはもっと酷い。性格が緩くて人懐っこいから優しい性格かと思えば、興味が無い相手にはとことん興味らしい興味を持たないらしく、ピーちゃんよりも酷いことになってる。
アオミの体はほぼ全てが水。何をどれだけ反撃しても川の水を棒で掻くが如くすり抜ける。なのにアオミの攻撃は実態を持って人間をドゴォっと押し潰すのだからふざけてる。
しかもヌルッと触っただけでも何か猛毒でも食らうのか、次々と神官や騎士が倒れていく。
なるほどコレが序列五位かと納得の暴威だ。何より全然本気出して無さそうなのにコレだ。そりゃ竜が恐れられる訳だよね。
ん? 白竜? とっくにグシャグシャだけど?
「あ、アンタた達は人の心が無いの!? なんでこの状況で食事が出来るのよっ!」
何故か軽傷で生き残ってる自称大聖女が俺達に文句を言う。もう白竜が居ないからポロの結界でテーブルを覆ってるから奴は入って来れない。結界をドンドン叩いて嫌がらせをしてくる。
「…………? カイト、アレは何を言ってるの?」
前のクソ女が仕掛けたせいで、ポロは悪人は悪人だとちゃんと認識してるらしい。
「俺には分からん。自分から喧嘩を売ってきたのに何が言いたいんだろうな?」
「助けなさいよ! 私は大聖女なのよっ!」
まずもってその大聖女とやらがどれくらい偉いのかも知らないんだが。
「なぁポロ。そこに居るのは大聖女か?」
「んーん、違うと思う。旅人を襲う盗賊のはず」
「だよなぁ?」
いきなりスキルか加護か変わらないけど暴力をブッパしてくる奴の事を、俺の常識では聖女とか言わないもん。
「な、なんでよ! 助けなさいよ! 私は大聖女なのよっ!? アルーンの儀式でペレナーレをボルスに変えられる存在なのよ!」
何言ってるかマジで分からない単語を羅列するの止めろ。海外に委託したネタ番組みたいになってんぞ。
前提知識が無いからオフチョベットしたテフをマブガッドしてリットにしますとか言われても分かんねぇんだよ。千の鳥と書く芸人お前らだぞコノヤロウ。
「あっ、いやっ、いやぁぁぁぁああああああッッ!?」
最後の一人になったので、手が空いたピーちゃんに迫られてお口をガパァっと開けられて、真上から頭をバリムシャァされそうになってる女が悲鳴を上げる。
ピーちゃんも楽しんでるのか、少しずつ少しずつ口を近づけ、ゆっくりと閉じて「お、行くのか? 行くのかぁぁ!? …………行かなーい!」みたいな感じになってる。
行かなーいのところでもう女は恐怖のあまり気絶してた。
恐ろしい事に今の時点で死者が居ないように見える。アオミの毒を食らってる奴はビクンビクンしてるし、アオミに潰された奴も潰れたのは手足だし、ピーちゃんは殺さずに嬲ってたから全員生きてる。
まぁ手足の欠損は確実だろうけど。ピーちゃんの冷気で手足が凍ってる奴も、多分そのまま壊死してる。ほぼ全員が四肢欠損で完全崩壊してるね。
ちなみに、誰も死んでないって言うのはコッチが与えた被害の事で、白竜に潰された人はきっちり死んでる。頭がアレしてるのに生きてたら逆に凄いわ。
「ふぅ、ご馳走様」
「ごち」
頭からバリムシャァをされずに済んだ女を眺めながら天ぷらを頭からバリムシャァして食べ終えた俺は、食器などを洗ったら荷物を纏めてインベントリに仕舞う。
目の前に転がる死屍累々も片付けたって良いんだが、そんな義理無いので放置してグランプの中に戻る。あとは風呂に入ってポロとベッドで格闘したらおやすみだ。
チラッと見ると、バハ達が白竜に潰されて死んでる奴をつまみ食いしようとしてたが、特に注意はせずにグランプに入った。
さーてポロ、いっぱいイチャイチャしようぜ。
「カイト、ポロ今日は、ちょっといじめて欲しい気分……」
「おっ、珍しいおねだりされたな。じゃぁ今日は俺が頑張っちゃおうかな〜」
「…………カイトしゅきぃ、ぎゅってしてぇ」
お姫様を抱っこした俺はバスルームに消えて行く。ここからは夫婦の時間だから、眷属達は見張り頼んだぞ。
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