出立後のトラブル。
王都を出る前に立ち寄った最後の飯屋は、少しボロさも解消されてすぐ変化が目に見えた。
店に入ると親父が驚いた顔をして、その後に「いらっしゃいませ」と頭を下げた。
それから、料理を注文すると「金は要らない。目を覚まさせてくれた礼だ。いや、礼です」とか抜かしやがるから、「まず礼をすべきは娘だろ。謝ってばっか居ないでしっかり金取って娘に楽させてやれよ」と金貨をカウンターに叩き付けてしまった。
またやっちまった。クソッ、この親父が中途半端に大将と被る癖に腑甲斐無いからイライラしちまう。
俺の言葉を受けて、親父は少し泣きそうな顔をして「また、間違えたか」とか言うので、間違って謝るくらいなら、間違えても支えてくれた娘にまずお礼を言えとまたまたお節介をする。もう黙れよ俺の口。
ただその後は特に何も無く、本当にめっちゃ美味い煮込み料理を楽しんだ。
あと、アイドル気質の新店員はマジで結構可愛かった。女の子目当ての客も多く、だけどセクハラすると顔の怖い親父に睨まれるから良い塩梅に収まってる。
ただ、気になるのはココネって名前のアイドルちゃんが親父さんにチラチラっと向ける視線。
「あれは、メスの顔」
「………………マジ?」
確信した声でポロがそう言うので、俺はスプーンを落としかけた。そして偶然それを聞いてたオレンジ髪も驚愕してた。
「でも、うーん…………」
もしそうなったらを考えるオレンジ髪は、ココネさん良い人だし、お父さんを支えてくれるなぁ〜、みたいな葛藤をして仕事になってなかった。
最後にほんの少し、胸に残ったしこりも取れた。飯を食い終わった俺は挨拶をしてから外に出る。
「あの、また来てください! 今度はもっと、凄い宿屋になってますから!」
オレンジ髪に見送られ、大通りに向かう。最後に「私の名前はエネットですぅ〜!」と叫ばれ、オレンジ髪の名前を初めて知った。
大通りの空いたスペースに素早くグランプを召喚して、さっきはリヴァイが曳いたから今度はレヴィアだとキャリーハンドルを持たせてから馭者台に乗る。
「ポロ、中に居てもいいよ?」
「んーん、ここで良い。カイトの隣が、ポロの居場所」
可愛い嫁の頭と角を撫でながら門まで向かう。次の目的地は迷宮都市。ダンジョンの中にだけ生息する怪魚を釣るため、俺達はまた長旅をする。
「なぁポロ。ちょっと気になったから、その角をぺろって舐めて良い?」
「ッッッ!? そ、それはえっちッ。凄くえっち……!」
「いやかな?」
「い、嫌じゃない……! 嫌じゃないけど、うぅぅううぅう……」
真っ赤になって顔を隠してしまったポロの髪をふわふわ撫でる。どうやら牙羊族にとって角を舐めるのはとてもえっちらしい。本当かぁ?
まぁでも、家族しか触っちゃダメな場所をぺろってするのは、冷静に考えると凄くえっちな気がするな。うん、信じよう。
「じゃぁ夜にな 」
「ッ! ぅ、ぅん。やさしく、してね?」
耳元でぼそっと言うと、目をウルウルさせたポロが上目遣いでそう言った。頑張れ俺の理性! 今はダメだ! 耐えろ理性! 返り討ちはだらしねぇぞ!
何とか耐えて王都を出発。湖の方へと繋がる門に居る人員は慣れてるけど、一度も使ったことの無い門を通るのにレヴィアが目立って一悶着。
加護によって竜の精霊を操ってると伝え、何とか出都。狼海竜でこれなんだから、透竜とか氷怪鳥に曳かせてたら本当に大惨事だったな。
それはそれとして、一度はアオミに乗って飛んでみたいので海に帰ったらやろう。ピーちゃんにも乗りたいな。ピーちゃん乗せてくれるかな?
ウミウシ状態のアオミを頭に乗せ、ポロはピーちゃんを肩に乗せて街道を行く。王都を出たばかりではまだ馬車も多く、グランプのフルスペックを使った最大速度はとても出せない。事故るから。
でも少しずつ馬車を追い越し、段々と遮るものが減って来たらちょっとずつ早くなる。最後は金属製極太シャーシとサスペンション、ダンパーの効果を十全に使ったフルスロットルで街道を駈ける。
体感、時速80キロ。日本でも高速道路に乗らないと出せない速度である。
「レヴィア、事故らないようにな?」
「ルグォォオオオアアアッ!」
いつもはぷえーって鳴くのに、大きいと重厚なデスボイスを聞かせてくれる狼海竜達。可愛いよな。
王都を出て三日目の昼。近くに良い感じすぎる川がある野営地を見付けたのでそこで止まる。
グランプの性能もご機嫌で、風や天候に左右されない為に自転車よりもスムーズに進む旅路。
なのでちょっと、ここらで休憩を入れようと昼間から野営地の一角を陣取った。
グランプはタイヤの負担を考えて、停車中に車体を浮かせて固定出来るアウトリガーが付いてるので、それでグランプを固定してグランピングを開始した。
固定するだけで寝れる場所になるから超便利。手間も無く設営が終わるので速攻川に行って釣りをした。
流れは緩やかだけど綺麗な川では沢山の小黒が釣れたので、今日は小黒丸ごと揚げる天ぷらでも作ろうかなと、夕方に準備を始めた矢先。
「ちょっと、その場所を空けなさいよ! この私を誰だと思ってるの!?」
なんか、変なのに絡まれました。
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