可愛い新入り達。



 海の獣を使った俺達は、一度陸に戻る事にした。何故かと言うと俺の魔力がスッカラカンで頭がフラフラするからだ。


 魔力と体力は因果関係にあり、魔力が無い今の俺は体力も無いのだ。釣りをしてる場合じゃない。


 ピーちゃんはポロ至上主義であり、つがいである俺にも一定の敬意を持ってくれる。けどそれ以外は「下賎な人族がぁ」みたいなムーヴをするので触れない。


 けどアオミは人懐っこい性格なのか、グリンとゼブンが触っても怒らなかったので、野営地に戻った今では二人に撫でられまくってる。


 クソでかナメクジくらいの大きさになったアオミはアオウミウシ形態とアオミノウミウシブルードラゴン形態を好きに使えるらしく、飛んだりヌメったりして可愛がられてる。


 たまに俺の所に帰って来てはヌメヌメっと体を擦り付けてくるのが何とも可愛い。俺、ウミウシ飼いたかったんだぁ。


 異世界でまた一つささやかな夢が叶った。ありがとうポセイドン様。そしてありがとうデュープ様。こんなに可愛いウミウシをこの世界に作ってくれて。


 俺のデュープ様に対する信仰が一定値を超えた。敬称がさんから様に変わった。


 アオミノウミウシ。可愛いし綺麗だから人気も高いウミウシなんだけど、毒性が強くて迂闊に触れないんだよな。


 本人に毒がある訳じゃ無いんだけど、主食にしてる毒クラゲから猛毒の刺胞を奪って溜め込むらしくて、それを外的に使う生態らしい。なので海で見付けても安易に触っちゃダメだぞ。


 ピーちゃんとアオミばかりが構い倒されて寂しいのか、バハムート達もミニサイズで出て来た。ぷえーって鳴いて体を擦り付けてくる。


 それを見たピーちゃんが「ふ、雑魚が」みたいな顔をして、そこをポロから「めっ!」てされる。


「ピーちゃん。先輩にそんな顔しちゃ、めっ!」


「ぴ、ぴー?」


 ピーちゃんは困惑した。狼海竜なんて雑魚より、自分の方が強いのにと。


 でもポロも俺も、眷属を強さで見てない。一定以上の強さがあればそれで良いのだ。なんならウチのエースは赤バススカーレットやぞ。


「先輩と後輩。その序列も守れない悪い子は、ポロ好きくない」


「ぴっ!?」


「だって、強さで言ったらポロが一番よわい。…………ピーちゃんは、ポロのこと、バカにする?」


「ぴぴぴぃ!? ぴっぴ、ぴー!」


 ピーちゃん大慌てだ。そりゃ「ふ、雑魚共が。これからは俺が主を守るから貴様ら用済みだぞ」みたいなムーヴしてたら反逆を疑われてんだから慌てもする。


 今この場にピーちゃんと比肩出来る存在は、海竜種の中でも最強らしいアオミくらいだ。


 グリン達に聞くと、透竜は竜全体から見てもかなり強くて、人の尺度で測った頼りないランキングでは竜種最強ランキングで五位くらいだとか。


 どのくらいヤバいかと言うと、人類は透竜の討伐実績がゼロだと言う。誰も倒したことの無い伝説の竜種。姿形だけが伝わってる最強種。


 ちなみにランキング上の四種に関しては、一位以外は討伐実績があるそうだ。透竜がヤバいのは狼海竜と同じく海に居るから、討伐難易度が跳ね上がる事にある。しかも狼海竜と違って空も飛べる。


 海に居なくてもランキングは変わらないそうだけど、海に居る場合を勘案するとランキング五位じゃ済まないそうだ。


 ブルードラゴン形態しか知られてないそうだけど、アオウミウシ状態に変身できる事を研究者とかに伝えたら大騒ぎになるとかなんとか。


「絶対に研究のためにアオミを差し出せとか言ってくるから嫌だ」


 アオミはうちの子だ。絶対に渡さんぞ。


「そんな無茶を言うバカは居ないと思うぞ。昔、山の方まで飛んで来てしまった透竜が居たそうなんだが、海に居ないとなればコッチのものだと挑んだ軍が壊滅させられたらしい。海に居なくても透竜は充分に最強種の一角なんだよ」


「ほぇー、アオミ凄いねぇ」


 ヌメヌメと撫でると喜んでくれた。手触りが癖になるよ。


 ふと気になってピーちゃんを見ると、主から失った信用を取り戻そうとしてラギアスに対しビシッと姿勢を正した挨拶をしてる。ラギアスは良いよ良いよと許してぷえーっと鳴く。


 まぁね、俺達にとってラギアスやバハムート、リヴァイにレヴィアも大事な眷属だ。そこにいきなり上司ヅラして輪を乱すバカが現れたら、いくら強くても俺達はそのバカを除外する。


「うぉぉお、兄貴なんスかソイツらぁ!」


「鳥さん可愛い!」


 途中、ハネマネとボルネルも帰って来てわちゃわちゃ感が増えた。体に触れようとするハネマネに威嚇するピーちゃんだが、ポロからめってされたら従うしかない。


 ただポロもピーちゃんを虐めたい訳じゃないので、ハネマネに「触るなら、優しく」と注意してた。躾も出来て良い飼い主だと思う。


 ピーちゃんはちょっと狂犬過ぎるからな。手網をしっかり握れるのは良い事だ。


「ところでグリン、ゼブン? そっちの依頼って終わってるの? 湖で遊んでた訳じゃないでしょ?」


「ん? あぁ、こっちは丁度終わってんだよ。だからカイトに依頼したんだ」


「他の三組も似たような依頼だったからな、もう撤収してるぜ」


 言われてみれば、野営地のテントが減ってる。


「どんな依頼だったの?」


「この湖の近くで取れる連石って言う物を取って来いってね。俺達も使うし、丁度良いからって受けたんだ。報酬は正直そんなに」


 なるほど。自分用のアイテム確保のついでなのか。


「どんな石?」


「魔力を込めて投げると閃光を放つ。あと砕いて調合すると薬になる」


 すげぇな異世界の石。単独でスタングレネードみたいになるのかよ。


「取り敢えず、俺達はもう帰るけど」


「うっし、じゃぁ俺達も撤収だな。これから一ヶ月、よろしく頼むぜ」


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