海の獣。
アニキーアニキーと煩いアホを引っぺがし、グリンの相棒であるゼブンへと面通しをした日の昼。
ハネマネとボルネルはプレゼントした道具を使ってトカゲ釣りに勤しみ、俺とポロはボートを出して湖の奥へと進出した。
同行する約束のグリンとゼブンはポロのポロップ号に乗ってる。神器化してるので操船が下手でも転覆はしない。また海竜に下からどつかれるような事があったら分からないが。
「やっぱ加護持ちはすげぇな! 持ってるモンからして違ぇ!」
「すげぇなこれ、なんで勝手に進むんだよすげぇ楽だァ」
ポロップ号の性能に喜んでる二人は良い感じに着いてきてる。
俺とポロは程よいところで止まって、ちょっと気になってたスキルを試す事にする。
「どうしたー?」
「今から新しい原始魔法を試すんだ! 何が出てくるか分からないけど魔物を呼び出して操るらしい!」
「マジかよっ、楽しみじゃねぇか!」
まずはポロから。右手を湖に突き出して「海の獣」と呟いた。
すると一瞬、目の前に魔法陣のような物が走り抜け、そしてスキルが発動した。
そして産まれる、大氷塊。
「………………………そう来たか」
海の獣と聞いて、俺が真っ先に思い浮かべたのはスキュラだ。そして次に形容しがたい何かだ。
スキュラは神話にて色々と不遇な感じにされた美女だか女神だかの魂が元の化け物だが、多くは狼の頭をスカートの様に並べ、その下からはタコやイカのような足が生えてる怪物。
形容しがたい何かはいあいあしてるアレだ。
どちらにせよ海の中や、時点で陸でも活動できる存在であり、多分そう言うのが来ると思ってた。
「…………氷怪鳥、だと」
銀髪のゼブンが呟いた。そう、召喚されたのは鳥だったのだ。
空中に呼び出された大氷塊は次の瞬間にバギンッと音を立てて翼を広げ、氷の塊から美しい鳥の氷像に変わる。
横文字で名付けるなら、ブリザードフェニックスとかそんな感じのモンスター。確かに鳥は海にも居る獣と言えるかも知れない。南極な北極には海に浮かぶ氷もある。
でもまさか、その二つが組み合わさるとは思わないじゃん。正直めちゃくちゃカッコイイ。
そして何より、美しくて神々しい。
「ガチャ運SSRかよ」
氷に陽の光が乱反射して、どんな宝石よりも美しく見える。鳥はホバリングが出来ないはずだが、それでも氷怪鳥はその場で羽ばたいて止まってる。
ただひたすら、己の主を見ている。
「……………………おいで」
ポロが手を伸ばして声をかけると、氷怪鳥は嬉しそうに鳴いて降りてきた。その冷気に当てられて一瞬で水面が凍り、俺もめちゃくちゃ肌寒い。
「さっっっっむ」
「む、カイトは寒いの? …………ポロは寒くない。ポロだけ?」
どうやら召喚者には危害を一切加えないらしい。ただ俺を冷やしてる事が気に入らなかったポロは、凍らせた湖の上に立ってコチラを見下ろす氷怪鳥に「めっ!」てした。
「ポロの旦那様を傷付けるなら、二度と呼ばない」
そう言った瞬間の氷怪鳥は見ものだった。目に見えて慌てて、次の瞬間には俺が感じてた寒さが消え去った。まるで最初から無かったように。
「いや俺達もぉお!?」
「寒い寒い寒い寒い寒い寒い」
「お願い。悪い子は、めってする」
ポロがお願いしてやっとグリン達も冷気から解放されたのだろう。でも凄い体は冷えたから凄い勢いで擦ってる。凄い分かる。俺も暖かいポロを抱き締めてなかったら同じ事してた。
「ポロ、名前付けてやれば?」
「自信無い。カイトが決めて?」
いや氷怪鳥が不満そう。お前凄い感情豊かだな。
「ダメだな。ポロが付けろ。例えピーちゃんとかでもソイツは文句言わないよ」
「…………ピーちゃん? 可愛いと思う。ピーちゃんで良い?」
凄い微妙そうな顔してる氷怪鳥。俺のせいじゃないよ? 見てたよな?
氷怪鳥改めピーちゃん。とんでもないのが仲間になったな。
「ちなみに氷怪鳥って強いの?」
「竜の上澄みと殺し合うような魔物って言えば伝わるか?」
伝わった。ガチでヤベー奴じゃん。
竜の上澄みってアレだろ。ウチのバハちゃん達よりずっと強いガチモンのドラゴンの事だよな? つまりピーちゃんは竜の上位層と同格なのか。ヤベー奴だなって感想しか出て来ないわ。
「なぁカイト。その氷怪鳥を呼び出した原始魔法の名前教えてくれねぇか?」
「海の獣」
「覚えとく」
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