ぺしーん。
ゴインッと鈍い音がして、ボルネルの拳は阻まれた。今日もチビドラの防御力は健在だった。こいつ、ナイフすら通らないもんな。足の力で押しても刺さらないんだもん。
そして拳を痛めてウゴウゴしてるボルネルに近寄って頭を強めに叩いた。
ペシーン!
ステータス上げた成果を発揮して、ボルネルはそれだけで
「おっと」
それを怪我しないようにキャッチして、静かに床へ寝かせる。
「あ、あれっ!? カイトさんがなんか優しいっ!?」
「お前、俺の事なんだと思ってんの?」
さっきはコイツが100%悪かったからぶち殺す気で居たけど、今のはどっちかって言うと俺が悪いだろ。
そりゃ目が覚めたら自分の連れが知らない男に抱き着かれてたらキレるだろ。俺だってキレる。
「それに、女の子の為に拳を振るうことが間違ってるとは思わない。今の瞬間だけは、コイツそんなに悪くなかったぞ」
俺がボルネルを寝かせて立ち上がると、ハネマネが何故か頬を染めていた。
「…………えっ、やだ、かっこいいっ」
何やらハネマネの琴線に触れたらしい。ツボがわかんねぇなこれ。
「む、カイトは渡さない。ポロの大事な旦那様だから」
「…………えッ!? お二人ってそう言う関係なんですか!?」
「そだよ? 俺はカイト・エスプワープ。ポロはポポロップ・エスプワープ。もう夫婦なんだ」
「しかも家名有るんですか!? もしかして、貴族……?」
む? あれ、この世界って家名あるの普通じゃ無いのか? 牙羊族の皆は家名あったし、モノンも確かあったよな? ポプラスだっけ?
「貴族では無いけど」
「じゃぁ、お金持ち?」
「確かに金はある」
「なるほど、それで……」
「いや多分違うぞ。家名を得るのにお金は使ってない。…………いや分からないな。エスプワープの祖先がなんかしたのか?」
取り敢えずハネマネに聞いた。
この世界では、と言うかこの国では基本的に家名は持たないそうだ。家名が有るのは貴族、もしくは『家名を買える』くらいのお金持ちが普通なんだとか。
「え、じゃぁ牙羊族は? ポロは何か知ってる?」
「………………確か、牙羊毛の布が関係してた、気がする?」
分からんのかい。
曖昧な情報から察すると、牙羊毛って言う質の良い布を開発した功績とか? 良く考えると、牙羊の品種改良ってどう見ても偉業だもんな。
「…………はぁ、初恋が三秒で終わっちゃいました。かなしぃ」
「いや、なんか悪いな。嫁さん愛してるもんで」
「……………………でへへへへぇ」
「幸せそうなのつらぁぁあい!」
照れたポロがくねくねしてハネマネがシャウトした。
「ちなみにハネマネ」
「…………なんですかぁ」
「やる気ねぇなコイツ。ほれ、その竿。…………釣れてるぞ?」
「……………へっ?」
竿先がさっきからピクピクしてんだよ。
「わっ、きゃぁぁあ!? ここここれどうすればばばばっ!?」
「落ち着け。ロッドをクイっと上に持ち上げて、そのあとハンドルをグルグル回せば良い」
わちゃわちゃしながら教えると、ハネマネは見事に水トカゲを釣り上げていた。ビチビチビチ。
「ほ、本当に水トカゲが簡単に…………」
「生け捕りだから報酬二倍だろ。餞別にこの箱やるから」
コンテナ一つ5ポイントと結構高いのだけど、まぁ良いやとプレゼントする。
「あ、ありがとうございますっ! やっぱり優しい好きぃー!」
「ダメあげない。カイトはポロの。ハネマネには、それが居る」
「そんなの要らないぃぃいい!」
「おいハネマネ、本人もう起きてるぞ」
「え゜」
振り返るハネマネ。体を起こして微妙な顔をしてハネマネを見るボルネル。
「………………『そんなの』で悪かったな」
「えと、いや違うのよ? 確かに要るか要らないかで言えば要らない寄りだけど」
「せめて取り繕えやテメェ!」
「だ、だってアンタっ、すぐ問題起こすもん! いつも謝ってるの私なんだからね!」
結局この二人はどんな関係なの? お互いに恋愛感情は無さそうだけど、完全な他人が組んでる感じでも無いし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます