生簀。



 俺とポロが同時にヒット。しかしルアーをガシャガシャ巻いた結果に得られた釣果は違ってた。


「カイト、依頼達成」


「流石だぜポロ。…………俺のはこれ、なに? ナマズ?」


「ソードキャットより、可愛くない」


 ポロの竿に当たったのは、狙い通りの水トカゲだった。依頼は一匹から納品可能で、何匹だろうと買い取るとの事。なので最低限はクリアした。


 そして俺。俺の方も水トカゲかと思ったら、なんか変なのが釣れた。


 見た目はまぁ、ナマズだ。けどヒゲが無く、胸びれも無い。尾びれと背びれはある。………………あれコイツ、エラなくない?


「マジでなんだコイツ。魚じゃ無いのか? でも背びれあるぞ?」


「また、竜だったり?」


「流石にないだろ」


 いや有るか? 分からないのでナイフで額をぐさー! 経験値は、入らないな。魔物じゃ無い。


「違うっぽい」


「残念」


 取り敢えずインベントリに入れとくか。水トカゲくんはまだ生きて、ラインを持ったポロの手でプラーンってしてる。身長が低いので尻尾が地面にビタンビタンしてるけど。


「カイト、絞めて」


「いや、生かしとくと報酬倍らしいから、生簀作ろうぜ」


「………………いけす、とは?」


「釣った魚を生かしとく為に水を入れた箱、みたいなもんかな?」


「なるほど」


「まぁ水トカゲはエラ呼吸じゃないから、普通にコンテナに入れたら良いだろ。空気穴は必要だけど」


 空のコンテナを出して中に少し水を入れる。空気穴はどうしようかと思ったら、そっと出て来たソードキャットくんがプシュッと穴を開けてくれた。


 君、その胸びれソードの形変えられるのね。


「こ、こんな簡単に……?」


 近くで、一部始終を見てたハネマネが驚愕してた。


「生き物捕まえるって、こんなもんよ?」


「そ、そんな訳ないじゃないですか! 私達、もう三日も……」


 ああ、そりゃギスるわ。だから言い争いしてたのね。三日も粘って成果ゼロは確かにギスる。


「り、理不尽ですよぉ……」


 しまいには涙目になったハネマネに釣竿を渡してやる。


「んじゃ、やってみるか?」


「………………ほぇ?」


 手渡された釣竿を見て、ポカンとするハネマネ。


「道具、知識、あとはやる気。これが揃ってれば大抵の事はなんとかなるんだよ。ハネマネ達が足踏みしてたのは、道具と知識が足りないせいだ。人はやる気だけあってもダメなんだぜ?」


 やる気だけ出して親の夫婦仲を何とかしようと思って、盛大に滑ったバカとか居るしな。両面どっちも浮気性な夫婦に対する知識なんてある訳ねぇだろ。


「やり方は見ただろ?」


「え、でも…………」


「ああ、道具の事は気にすんな。複数持ってる」


 俺は鱒ライダーを取り出した。それを見たポロが「話が違う」と俺を見る。いや俺は良いんだよ。慣れてるから。と言うかトカゲ確保したから普通に釣りしようぜ。もうバス釣り意識しなくて良いよ。


「良いから釣りしようぜ。時代は釣りなんだよわかるぅ? はいロッド持って。握り方はこう」


「えっ、ひゃいっ!?」


「ラインを指に掛けて、ヴェールを上げる。そしたら振りかぶってぇ〜」


 後ろから腕を回してハネマネに釣りを教える。ロッドの持ち方から始まり、スピニングリールを使ったルアーキャストまで。


 そしてぴゅーっと飛んでくワームを見たハネマネは、なんだか分からずに「わぁ〜!」と声を出した。


「そしたら、竿の先をこう……」


「ぷ、ぷるぷるさせるんですね!?」


 ハネマネはぷるぷるした。いや本人がぷるぷるしてどうすんねん。結果的に竿先もぷるぷるしてるのが笑っちゃうんだけど。


「────テメェッ!? ハネに何してやがるぁぁあッッ!」


 そんな平和な時間の途中、背後から怒声が聞こえた。


 どうやらボルネルが起きたらしい。振り返ると俺に向かって拳を振り抜こうとしてるのが見えた。


「死ねぇぇぇえええッ!」


 まぁチビドラが防ぐんですけど。


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