いつでも。



 しゅごかった。


 何とは言わないけど、しゅごいとしか言えない技術とスキル効果によって腰砕けの骨抜きにされた翌日。


 いやホントしゅごかった。ちょっと色欲にどっぷりハマりそうになったくらいにはしゅごかったけど、何とか朝を迎えて誘惑を振り切った俺は、ポロと身支度を整えて外に出る。


 もう回数も覚えてないくらいに溺れたけど、ポロが当初色々と頑張ってたのは種族的に相性の悪い俺と、何とか子供を作るためだった。


 それが今は一撃必殺でなんとかなるスキルが手に入ったので、ポロは方針を変更して今は旅を優先。落ち着けるようになったら子沢山の大家族を作りたいって言ってた。


 でも気付いてるのかな、ポロ。


 今までは子供が欲しいからって言い訳があったけど、今はそれを操作出来るようになってる。なのに夜あんなに楽しそうに色々としたら、「ちがうもんっ」て言えなくなるよ?


 まぁ俺はウェルカムだから良いけどね。そんなポロも大好きだよ。


「昨日はたのしかた」


「…………それは、どっちのこと言ってる?」


「……ばっ、ちがっ、カイトのばか! ご飯のこと!」


 ああそっち。


 昨日の打ち上げは普通に楽しかった。料理は美味しいし色々聞けたし、行ってよかったと思う。


 ムールちゃんも帰り際、「一緒に居るのぉー!」ってギャン泣きしてポロに抱き着いてたのは可愛かったな。モノンとクォルカは娘さんを大事にして欲しい。


 その時にスキルの事もチラッと聞いたけど、何やら俺と向こうに決定的な認識の違いがあって擦り合わせに少し手間取った。


 その理由が判明した時はお互いにちょっと驚いてたけど。


 今更ながら、あのステータス画面はで書かれてた。じゃないと俺、まだこの国の文字をそこまで正確には読み切れないからな。


 そしてこれも当然の事だけど、ポロの画面はこの国の言葉で書かれてたらしい。


 つまり、見る者によって表示される言語が違うのだ。恐らくは対象の認識を読み取って発動されてるのだと思う。


 だから俺の画面には『スキル』と書いてあっても、この国の人から見ると『魔法』と書いてある訳だ。それと俺がスキルと魔法は別物考えてるせいで、認識が食い違って最初は意味が分からないやり取りになった。


 ちゃんと食い違いを直してから情報を聞けば、まぁなんて事は無い。この国では加護以外のスキルが魔法扱いなんだから、出回る情報は魔法の事である。


 だから俺が知らないんじゃなくて、聞いても勘違いしたか気にしてなかっただけ。なんとも下らない真実だった。


 強いて言うなら、スキルはそんなに簡単にポコポコ取れる物じゃ無いらしく、俺もポロも生えてたと言ったら大層驚かれた。


 当たり前だけど、夜に使うスキルは伏せたよ。言う必要が全く無いから。


 俺達がスキルをポコポコ生やしたのは、恐らく加護の影響だろうって言うのがセデン達の見解だった。 


 確かに神官も、原始魔法は人の本能が加護を真似して作ったって言ってた。なら加護を持ってる人間の身体が本能的にポコポコと原始魔法を生み出したって考えも間違いじゃない気がする。


 その証拠に、加護持ちと一緒に行動する人間は原始魔法が生えやすいそうだとセデン達は言う。


 だったら、一緒に王都まで旅したセデン達やモノン達も原始魔法生えてるかもねって言うと、「確かに!? しかも加護持ちが二人だもんな!? 確率二倍!?」と喜んでた。


 あと今更だが、加護持ちって事を公言してるの止めた方が良いのかちょっと相談したら、多分大丈夫って答えが帰ってきた。


 昔、加護持ちを好き勝手しようとした時の権力者が物理的に神罰食らった史実があるそうだ。なので余程バカじゃ無い限り、権力とかの介入はしないそうだ。


 ただ、個人間のトラブルはどんなに酷い事でも神罰が発生しないそうで、例えば誘拐されて売られるとかは有り得るから気をつけろとも。


 要するに、権力で逆らえない状況を作って強制するのがアウト。だけど実力でねじ伏せたらセーフ。みたいな事らしい。


 少し考え、加護持ちは神の看板背負ってるみたいなもんだから、個人程度には負けるなよって事なのかと納得した。確かにゴロツキ程度に負けてちゃポセイドン様に合わせる顔が無い。


「いらっしゃいませ。ご要件を伺います」


「湖に関する依頼を斡旋してください。あ、これタグです」


 冒険者ギルドでいつも通りに仕事を探す。神殿でキレて無駄遣いしたから、入場税は節約したい。


 券売機お姉さんから依頼斡旋のカウンターに案内されて、赤髪の綺麗な依頼担当のお姉さんから仕事を貰う。珍しく討伐系だ。


「水トカゲ、ですか」


「はい。あまり強くは無いのですが、湖の中に逃げてしまうので報酬は相応です。下級の方でも問題無く紹介出来る危険度の依頼になります」


 下級でも受けれる最大級を選んでくれたらしい。凄く良い人だ。


 依頼書を見ると、下手くそな水トカゲの絵が描いてある。聞いてみたら、依頼書に描かれてる絵は依頼者が描くか、お金を払ってギルド専属の絵師が描くかの二択だそうだ。


 前に見た水仙っぽい薬草は多分ギルドの絵師だったんだな。そしてこれは依頼者が描いた絵。


 見た感じはオオサンショウウオかな? 依頼内容は水トカゲを倒して持って来ること。生け捕りだと報酬が倍。その代わり持ち込まれた水トカゲの状態が悪いと報酬減額。


 ご丁寧に依頼の目的まで書いてある。どうやら水トカゲの内臓が薬になるんだとか。


「ちなみに、この水トカゲが何を食べてるかって分かります?」


「魔物の情報は二階の資料室でご覧になれます」


 教えてはくれないらしい。まぁ人が多いし忙しそうだもんな。自分で出来ることは自分でやれってことか。報酬の高い依頼を斡旋してくれただけでも充分優しい。


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