格上。



「で、どんなえっちなスキルが出たんだ?」


「ぴゃっ!?」


 打ち上げは夜から。そしてまだ夕方なので、待ち合わせ場所の冒険者ギルドに向かいつつも、ポロに気になってた事を聞く。


 めちゃくちゃ動揺してるポロは頬を染めてアタフタしてるが、俺にすら出てるならポロに出てない訳が無い。


「わ、笑わない……?」


「笑わん笑わん。俺にも出てたし」


「ほ、ほんと? 良かった……」


 もしかしたら、スキルにまで出てきたから「もしかして自分、凄くえっちな子なんじゃ?」と自覚したのかもしれない。それはそれで良い事だ。ポロは無自覚にアレをしてたのかと思うと逆にゾッとするけど。


 ポロは意を決して、俺に手招きしてしゃがませる。道の端に寄ってからしゃがむと、ポロは俺の耳に手を当ててこしょこしょと教えてくれた。


 ポロが得たスキルはなんと十個。俺の倍もあってなんか悔しいが、その内の何個がエロスキルなんだと少し楽しみになった。


 最初は普通のから始まり、まず海の獣。ポロにもあったらしい。次に海の巫女。使うと魔力を常時消費する代わりに水魔法の強化や海の因子を持つ攻撃、水属性への耐性などを得られるとか。つっよ。


 三つ目は守護結界。法術の上位互換で、念じるだけで守りの法術より強くて大きな結界を張れるとか。


 そしてそこからが酷かった。愛玩魅了。妊娠操作。絶頂管理。快楽の手。絶対搾精。至高の舌技。超絶倫。


 …………………………伝説の娼婦にでもなる気か?


 一つ一つ効果を聞く。まだ最初の二つ、いや三つまでは気になるから。


 顔を真っ赤にしてこしょこしょするポロは可愛いが、ちゃんと全部教えてね。


 愛玩魅了。愛玩されるか、愛玩してる時に相手を著しく魅了出来るらしい。つまり何とは言わないけど頑張ってる時に使うと好感度がオーバーフローするって事かな。効果は一方じゃなくて双方らしいので、お互いに爆発するそうだ。


 うーん、無害。ポロの事大好きだから、更に好きになっても実害無いな、多分。


 次に妊娠操作。これは発動中に入った種を確実に当てるか、絶対に当てないかを選べるスキルらしい。凄くね? これでガム爺とテム婆にいつでも曾孫を抱かせてやれる。


 三つ目、絶頂管理。何とは言わないけどアレするタイミングを操作出来るらしい。ちなみに相手じゃなくて自分のだけ。ふむ、ポロは好きなタイミングでアレするのか。色々と胸に来る感情があるけど、これ以上のコメントは控えよう。うん。


 そして残り、簡単に言うとめっちゃ絞りますよってスキルだ。何とは言わないけど。


 手でも、口でも、体でも、絶対に確実に絞ってやるぜって言う、ある種の殺意を感じるラインナップだ。何より予想してた舌技と絶倫で負けてるのが笑える。と言うか地味に悔しい。なんだよ超絶倫って。なんだよ至高の舌技って。


 だって、なんか、アレじゃん? 俺がポロより下手ってスキルに判定されたような気分じゃん? 俺、下位互換じゃん?


 ……………………ふぅ、今夜はちょっと積極的に行こう。マジで頑張ろう。ポロを喜ばせようそうしよう。


 ちなみに、交代で俺のスキルを教えたらポロが絶望顔してたのが面白かった。


 ポロ、君は間違いなくえっちな子だよ。自信を持ってくれ。


「ち、ちがう。これは何かのまちがい。ポロは、ポロはそんなにえっちじゃない……!」


「諦めろポロ。言い訳出来ないから」


「ちがうもんっ」


 ポロの「もん」とか初めて聞いた。めっちゃ可愛い。


 動揺して真っ赤なポロが本当に可愛い。もう打ち上げすっぽかして宿に帰らん? だめ? そっすか。


 今日までの事は本当に無自覚だったのか。いや、そうか。あれは子供を産むために必要な行為だから頑張ってたとか、そういう認識なのかな? なのにスキルで『技』として出て来たから慌てちゃったんだ。


 なるほどな。可愛いじゃん俺の嫁。


「にしても、加護スキルじゃなくて、原始魔法スキルか。そんなんあるんだな」


「初めて知った」


 ポロは村娘だ。だから知らないのか、それとも本当に庶民には出回ってないのか、その辺はこの後の打ち上げで聞いてみよう。 


「そういえば、ステータス上げたけどなんか違いある?」


「…………あまり?」


 だよなぁ、と思いつつ握り拳をぎゅっとしてみる。そこで初めてちょっと違いを感じた。


「……………………あぁ〜、これアレだ。チカラの上限が伸びる感じなんだ」


「と、言うと?」


 ぎゅっと力を入れて拳を握ると、どんどん力を入れられる。普段ならこれが限界って所を超えて、骨が軋むほどに固く握れる。


「俺が普段、どんなに頑張っても五十までの力しか使えないのに、今は頑張ると百まで出せる感じかな? 普通は五十で限界ならそこで終わりだろ?」


「なるほど」


 普段通りに生活する分には、五十も力を使わない。けど、必要になって振り絞ればそれだけの出力が出せるようになってる。


 簡単に言うと、俺の体が車だとしてステータスを上げた効果で最高速度も上がった感じ。アクセルを踏み込まないと実感出来ないけど、踏み込んで出せる最高速度の限界が倍になってるんだ。


 今まではアクセルをベタ踏みで120キロ限界だったとしたら、今は240キロは出せちゃう的な? でもアクセルなんて普通なベタ踏みしないから実感が薄いし普段の生活にも影響しない。


「ふむ、これは良いなぁ。大物が釣れそうだ」


 筋力が倍ってだけでも相当な事である。俺が仮に、死ぬ程頑張れば90キロのダンベルを持てるとして、今なら180キロまで行けるって事なのだ。


 このひょろっとした身体で180? 化け物か?


 なるほど、確信した。冒険者ってのは基本的にモンスター倒してお金と経験値を稼ぎ、お金が溜まったら神殿に来てステータスを上げるんだ。その結果が上級とか最上級とかって言われる連中の正体。


 その途中で、経験値を得ようと無茶をして死ぬか、お金を貯めるの諦めるかしたやつが中級に留まり、見事に達成した奴が上級へと抜けていく。


 一回の利用で金貨五枚って正気じゃ無いもんな。分かり易く無理矢理日本円に換算すると二十五万から五十万くらいだぞ。安酒飲んでウェーイしてる日雇い労働者が貯めようとしたら、殆どの娯楽を捨てる事になる。


 もちろん恒久的に能力値が上がる金額って考えると超安いけど、それでも日銭で生きる人達にとっては足踏みしちゃう金額なのは間違いない。


「こんな金の成る木を抑えてんだから、そりゃアルマ教会も調子に乗るわ」


 エントリーで見たベネリとか言うバカを思い出す。そしてそのせいで焦って俺達にキレられたデュープ教会の大司教さん。


「さて、取り敢えず冒険者ギルドで望郷の剣を探そうか。待たせてるかもだし」


「ん。…………でもカイト、ポロはえっちじゃないよ?」


「いやポロはえっちだよ」


「ちがうもんっ!」


 上がったステータスの事を色々考えながら、俺達は冒険者ギルドへ向かった。


 どうでも良いけど、『いやらしい』とか『卑猥』って言葉を『えっち』で通じるように翻訳してくれたポセイドン様、ありがとうございます。


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