自己嫌悪。
やっちまった。なんか要らん事した気がする。
ポロは「格好良かった」と言ってくれたが、表情が眠そうでお世辞か本音か分からない。
道行く人に声をかけて宿を聞き、希望通り一泊金貨一枚ピッタリの宿を見付けてチェックインした後も、俺の気持ちは中々晴れない。
「…………まぁ、気落ちしてても仕方ないか。神殿に行こう」
「ん。場所、宿の人に聞いといた」
出来た嫁である。
「あー、ポロ。今日は元気がないから、慰めてくれ」
「任された。夜にいっぱい元気にする、ね?」
上目遣いでにこっとするポロに、ちょっときゅんってした。ね? が可愛かった。
「頼むわ。今日はめちゃくちゃにしてくれ。俺もめちゃくちゃにするから」
「………………た、たのしみっ」
高級宿だけあって綺麗な内装の店内を歩いて、従業員に出掛ける旨を伝えた。
王都内は辻馬車があるらしく、それに乗れば迷わずに神殿まで行けるとポロに案内され、早速向かう。
市バスほど快適とは言わないが、それでも勝手に目的地まで行ってくれるのは有難い。神殿も王都の重要施設であり、同時に最も価値のある観光名所でもある。なので辻馬車はマジで目の前まで行ってくれた。
到着した神殿はお城のようで、と言うか王都に入ってすぐ見えてたけど勝手に王城だと勘違いしてた物だった。あれ神殿だったのか。
神殿の管理はアルマ教会の管轄らしく、見覚えのある法衣を着た人間が沢山いた。
中に入るとすぐに神官が来て要件を聞いてきたので、能力値を上げに来たと伝えてさっさと金貨を払う。
このお布施と言い張る使用料の金貨も、どうやら聞いてた金額は最低限のものらしい。利用者が多いので、金額が多い人から案内されると聞いて内心で「生臭坊主がよぉ」とキレそうになる。
イラッとしたので黒貨を十枚くらい出したら神官はニッコニコですぐ案内してくれた。ちなみに一人十枚なので二人で二十枚だ。
「こちらになります」
案内されたのは神殿の中心部にある大広間で、中央に巨大なオベリスクみたいな塔が鎮座してる。
「使い方は?」
「あの塔の近くで『開け、我が扉』と口にすると、神の門が開きます」
後半何言ってるかちょっと分からないけど、多分ステータスウィンドウみたいな物を神の門とか言ってるのかと判断した。
言われた通りにポロとオベリスクに近付いて、言われた通りの呪文を唱える。
「「開け、我が扉」」
他にも数人の利用者が居て、その人達は何も無い空間に指を走らせてるのが見えた。なので多分想像は間違ってないと思ってたら、実際にその通りな物が目の前に浮かび上がった。
「出たなステータスウィンドウ」
半透明でゲームのメニュー画面みたいな物が出て来て、今の俺のステータスと、それを上昇させる為のタップボタン。それと上昇させるステータスそれぞれに必要な経験値量と、俺が現在持ってるステータスの総量が記載されてる。
あと地味に俺のスキルも全部乗ってて、驚く事に他にもいくつかスキルがあった。
魔法と加護の事は既に知ってる。だけどスキルの事は知らないぞ? 秘匿されてる? と言うより広がってない?
思えば、使うだけで金額数枚必要な施設とか普通は使わないか。使用頻度の多そうな貴族と、あと上級以上の冒険者なら何か知ってるかな。
俺がオーシャン系以外に持ってるスキルは五つ。
・眷属強化。
・精密使役。
・海の獣。
・舌技。
・絶倫。
信じられるか? 五つ中、二つも下ネタ入ったんだぜ? 誰が舌技や。
チラっとポロを見ると、頬を染めてチラチラ俺を見てた。向こうもあったらしい。と言うか絶対俺より多いだろ。
とりあえず目的を済ませる。
今の俺は経験値が14621ポイントあるので、予定通りにステータスを上げる。
ゴリゴリ使って筋力12、魔力11、敏捷11、耐久12、精神11にする。
最後にチラッとスキルの効果を見ておく。タップすると説明文が出る親切仕様だった。
スキル効果はまぁ名前の通りらしい。眷属強化は自分のステ分だけ精霊を強く出来て、精密使役は声を出さずとも眷属や隷属下の対象を操れて、見なくてもどんな動きをしてるのか分かるとか。
海の獣は名前だけじゃ分からなかったけど、なんか召喚スキルらしい。説明見た感じだと、初召喚時に何を呼べるか確定するガチャらしい。以降はずっとそいつ固定の召喚スキルと化す。召喚する対象は海の因子を持った何かしらだけど、陸でも動ける何からしい。分からん。
舌技と絶倫は、使うと凄くなるらしい。何とは言わないけど。
大体終わったのでポロを見る。ポロも多分、経験値が五千くらいはあると思うので、オール10は行けるはず。
「ポロ、出来たか?」
「で、出来た……」
余程スキルの内容が凄かったのか、特に何もしてないのに動揺してるポロ。後で聞いてみよ。
「質問良いかな?」
「はい、どうなさいました?」
案内してくれた神官がまだ居たので、スキルについて聞いてみた。
「ああ、原始魔法の事でございますね」
「原始魔法?」
「はい。加護程の物ではございませんが、魔法と違って訓練せずとも使える魔法の事でございます。普段の生活や行動、訓練によって発現し、意識して魔力を使う事で発動します。加護との違いはそこですね。加護は神の御業であり、殆ど魔力を使いませんから」
………………あれ? 俺、
あぁそうか、
多分そんな感じだろ。
「魔法は加護を元に作られたと言う話はご存知ですか?」
「あぁ、聞いた事はある」
「それをお聞きになった方は、大体が加護を研究して魔法を作ったと思われますが、本当は原始魔法を元に研究して生まれたのが昨今の魔法でございます。そして、原始魔法は人の本能が加護を真似して生み出した物ですので、『魔法は加護を元に作られた』と言うのも、間違いでは無いのですね」
「なるほど、興味深い話が聞けた」
聞きたい事は聞けて、やる事もやったので俺達は神官に礼を言って神殿を後にした。
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