魔法の使い方。



 何事にも、才能センスってものはあると思う。どうやらポロも、魔法に対して並々ならない才能を持っているらしい。


「ふぅ、堪能した……」


 サルスで水魔法の基本を学び、そしてセデン達の装備も調達出来て出発の準備が終わった三日目を過ぎ、現在は四日目の夜。


 基礎しか教わってないはずのポロはそこから勝手に応用を覚え、そして既に使える守りの法術と組み合わせる技術すら手に入れた。


 その結果、サルスを出て一日目の野営地で、俺はポロに美味しく食べられていた。


 大都市を出てすぐの野営地は盛況で、沢山の人が利用してる。そんな場所に設置したテントの中で、ポロは俺と運動を初めてしまったのである。


 普通は周囲にバレる。とんでもない事になる。何より次の日の朝、周りからの視線で死ぬ。


 だけどポロはやり遂げた。たった一日で覚えた水魔法と守りの法術、つまり結界術を複合して『防音結界』なる魔法を開発したのだ。


 どんな魔法かと言うと、結界をベースに水魔法を組み合わせ、水の壁が音の振動を吸収するとかそんな感じ。ポロが俺にもアイディアを聞いてきたから間違いない。


 テントの内部に張り巡らされた防音結界のお陰で、ポロがどんなに大きな声を出しても周りには聞こえないのだ。


「…………ポロは、そんなに我慢出来ないの?」


「ん、出来ない。大好きなカイトと、いっぱいしたい」


 可愛いから怒れないんだよなぁ。俺もやることヤってるし。


「にしても、教わったのは基礎なんだよね?」


「ん。おじさん、教え方上手」


 多分俺が同じことしたら魔力切れで倒れると思うけど、ポロは本当に魔力が多いんだろうな。


 良く考えたら、川に流されてる間の数日、ずっと結界を維持して岩とかの衝突を防いでたって考えたら相当多いのかもしれない。一般的な魔法使いって結界を数日維持とか出来る物なの?


 隠すものが毛布しか無い状態のポロを撫でると、嬉しそうに頭を手に押し付けてグリグリしてくる。猫かな?


「魔法はどんな風に教わったの? 法術とは違った?」


「ん、全然違う」


 聞くと、まず法術だと魔力をそのままガラスみたいに固める様な特訓が必要らしいのだが、水魔法の場合は魔力を水に浸して、魔力に水を覚えさせ、そして魔力に覚えさせた水へと変身させるような感じだと言う。


 なるほど分からん。


 魔力に覚えさせるって何? 魔力はエネルギーじゃなくて記録媒体だったの?


「その理論で言うと、覚えさせれば水でも油でもガソリンでも魔法で作れそうだけど」


「………………出来る、かも?」


 自信は無さそうだった。感覚的には出来ないと思ってるらしい。


「というか魔法ってそんな力技と言うか、感覚的な技術なんだね」


「ん。気合いと根性で覚える」


 もっと学術的な物かと思ってた。どっちかって言うと、ファンタジーラノベに出て来る魔法より、額に雷の傷がある彼が学ぶ魔法に近いのかな。


 アレも呪文の発音とかで発動するし、力技と言えば力技だろう。術式がどうとかあんまり無いし。守護霊召喚だってかなり感覚的にゴリ押しで覚えてた気がする。


「あと、その場にある水を動かすなら、覚える時の操作で、そこから変換をしないでそのまま動かす感じ」


「なるほど。魔力を水に浸透させて掌握するのか」


 俺は加護のお陰で想像したらその通りに動いてくれるから分からない感覚だ。


「将来、子供に教えられる」


「…………その、下腹部を撫でる動き止めない?」


 まだ宿ってないはずだ。いや分からないけど、人と牙羊族は出来にくいと言ったのはポロである。


 別に出来るのが嫌という訳じゃない。ただ出来てない内からプレッシャーを放たないで欲しいだけだ。


「ポロ、先に言っておくね。俺は親から愛らしい愛を貰った経験がない」


「ん、ポロも」


「だから、子供が出来たら興味を持てないか、もしくは自分みたいな経験をさせたくなくてバカ程甘やかすかの二択になると思う」


「ん、ポロも。カイトの子、きっと可愛い」


「いやいや二人ともそれじゃダメじゃん。ちゃんと叱れる人が居ないと」


「大丈夫。ポロとカイトの子、きっと賢い」


 そう言う問題じゃ無いんだよなぁ。


「それよりカイト」


 毛布からガバッと飛び出して来たポロがオレをマットの上に押し倒す。その身は何も隠す物が無く、床に置いた間接照明の微かな光に照らされてる。


「もっと、しよ…………?」


 俺は多分、一生ポロに勝てないと思う。


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