竜の名前。
テムテムに戻って来て翌日、流石にせかせかと旅立つ事も無いだろうと数日お世話になる事にした。
昨日はポロの事や俺の出場など、結構長く語ってたので朝が少し遅い。
本当は釣りに行きたいが、俺の腕を抱き締めたまま起きないポロに拘束されて身動きが取れない。
ポロの家は防音のぼの字も存在しない家屋なので、ここではまぁハッスル出来ないのだ。
やる時は結構やるけど、そうじゃない時は淡白な俺と比べて、毎日毎晩頑張りたいお年頃であるポロにとっては大層不満らしく、その代わりに俺の腕をギュッと抱きしめて離してくれない。
そのささやかで平坦な胸に包まれた腕を引き抜くと起こしてしまうから、俺もせっかくだからポロの体温を感じて微睡んでいる。
目の前を浮いてる四匹の海竜が俺に朝の挨拶をする。お決まりのぷえーだ。
コイツら、召喚しっぱなしとは言えポロちゃん大運動会の時は消してる。こうやって朝に目が合うのは中々新鮮だった。
「ぷえー」
「ぷえー?」
「ぷえぷえ」
「ぷっぷっぷえ〜」
こらこら、ポロが起きるだろ。そう思ってたらやっぱり起きた。
「…………ん、ふぁぁあ」
可愛らしいあくびの後に、抱き締めた俺の腕に気が付いてすりすりしてくる。猫かな? 可愛い。
「おはようポロ」
「ん、おはよう旦那様。きょうも愛してる」
「ポロも毎日可愛いな。今日も大好きだよ」
静かに口付けすると、頬を染めて俺の腕に顔を隠すポロ。やはり攻められると弱いらしい。
「海竜達も、おはよ。…………カイト、この子達に、名前つけない?」
「ん? 名前か」
俺は道具に名前付けない派だったので意識してなかったが、確かにペットなら要るか、名前。
「でも赤バス達はそのままなのに、不公平じゃないか? 流石に赤バスやチビドラ達全員には付けてられないぞ?」
「ん、それは仕方ない。でも精霊達用の呼び名をあげても良いと思う。種族名、的な?」
なるほど。赤バス達は個別に名付けるの無理だから、せめて赤バスって適当な呼び名を止めるのか。
「とりあえず、海竜に名前」
「ぷえぷえ」
「ぷえー」
海竜達もそうだそうだと言ってる気がする。
「名前か。………………リヴァイ、レヴィア、バハムートでどうだ?」
もちろんリヴァイアサン、レヴィアタンとバハムートはそのままの引用だ。
どれも海の竜であり、バハムートはそもそもが竜ではなくてイスラムで世界と比肩する大きさの魚、またはクジラと思われてた存在だ。
昨今では何故か闇のドラゴン的な扱いを受けてるが、元々は魚なので合わせて海竜の名に使っても良いだろう。
「……この子は?」
「ぷぇ〜……」
一匹だけ名付けをスルーされてしょんぼりしてる海竜をポロが撫でる。けどその子はポロの子だよね?
「ご主人様なんだから考えてやれよ。俺だって別にそいつだけ意地悪してるんじゃ無いぞ? お前だってご主人様から名前もらった方が嬉しくないか?」
「…………ぷぇ?」
「別に嫌いじゃないよ。分かるだろ?」
ぷえーっと懐いてくる海竜が可愛い。見た目がラギアク○スなので凄いカッコイイし可愛い。見た目がどストライクなんだよな。
「…………カイトの子は、なんでその名前?」
「故郷に伝わる伝説の海竜から名前を貰った感じかな? 俺が釣ったお前はバハムート。世界そのものにも匹敵するほどの大きさした魚で、世界を支えてるチカラの一つともされてる。やっぱ命懸けでやり合った仲だからな、少し特別な名前を付けた」
バハムートに手を伸ばすと、嬉しそうに指に抱き着いてあぐあぐと甘噛みしてくる。それを羨ましそうに見てるリヴァイとレヴィアも反対の手で撫でてやる。
「リヴァイとレヴィアは、リヴァイアサンとレヴィアタンって名前の海の聖獣が元だ。ドラゴンだと思われてたり、バハムートと同じく魚だったりクジラだったりするけど、そもそもはリヴァイアサンとレヴィアタンは同じ物なんだ。ポセイドン様のチカラで一緒に進化したお前らにはお似合いかなって」
ぷえーっと俺の指をかみかみするレヴィアとリヴァイ。可愛いなコイツら。
「…………か、カイト? ポロ、そんなに立派な名前、無理」
「愛情が有れば大丈夫だよ。ポロの名前だって伝説の聖人とかから引用したとかじゃ無いだろ? 確かガム爺が牙羊族の古い言葉で『愛しい者』って意味だって聞いたぞ。伝説とか無くても素敵で立派な名前じゃないか」
俺は「だから気にするな」って意味で言ったのに、ポロは余計に萎縮してしまった。
「…………ポロ、自分のな名前がそんなに立派なものだと、初めて知った。…………ごめん海竜、ポロは無力」
「ぷえ〜」
そしてポロと海竜がチラチラっと俺を見る。お前ら実は余裕綽々だろ?
「………………分かったよ。でもネタ切れだから期待するなよ?」
「ふふ、さすが旦那様」
と言っても、本当にネタ切れなんだよな。バハムートとかリヴァイアサンとかは例の意識高い系オタクの友人が勝手に語るから知ってたけど、神話に詳しい訳じゃないから。
「じゃぁ、お前はラギアス」
当然、出典は某狩りゲーのラギ○クルスだ。だってそっくりだし。
「どんな意味?」
「意味って言うか、俺が好きだったゲーム……、と言っても伝わらわか。なんというか、遊べる物語みたいなやつがあってな、それに出てくる海竜の名前がラ○アクルスなんだよ。お前らにそっくりで、だけど魔法の代わりに雷のチカラを使って海の中で猛威を振るうドラゴンだ。そこから取ってラギアス」
「………ぷぇ?」
「そうだな、強いて意味を付けるとしたら『大海の王』かな。確かそんな二つ名がある設定だし」
「ぷ、ぷぇ〜♪︎」
ラギア○ルスは、登場時した時には天空の王者リオレ○スと対を成す存在であり、大海の王。みたいな設定だったはずだよ。
だからリヴァイとレヴィア、バハムートに並んでも名前負けはしない。そもそも神話って創作だしな。神話の竜とゲームの竜に格の差なんてありはしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます