決めた理由。
俺が王都に決めた理由。それはもちろんポロからのアドバイスがあったからだ。
どっちかに行く、ではなくてどっちにも行く。その上で後か先かと言われたら、その時に見えてくる優先順位や効率がある。
どっちから行くと効率が良いか? 俺は王都だと思う。
何故なら王都には湖以外、俺の心が踊る場所が無いから。少なくとも、今のところは。
だけど迷宮都市は少し違う。名前の通り、迷宮都市は神殿と迷宮が一緒になったハッピーセットな都市であり、迷宮でレベリングしてから神殿を利用出来るのだ。
仮に俺が迷宮都市から行くとしよう。すると迷宮都市についてすぐ神殿を利用するだろう。そして上がったステータスで迷宮に挑み、そこでしか釣れないとか言われてるプリティなお相手を釣る。
その時きっと、釣ったプリティからも、釣り場に行くまでに邪魔して来たモンスターからも、相当量の経験値が集まるだろう。そしたら都市から出る時にもう一回神殿を使う。
二度手間では?
だったら王都の神殿に行ってから湖へ行き、そこで釣りを楽しんだ後に迷宮都市へ行って釣りをする。そして迷宮都市から出る時に神殿を利用する。
回数や結果が変わらなくても、動線的にはこれが一番綺麗で効率的だと思う。
「そんな訳で里帰り〜」
ポロと二人で一週間ほど掛け、テムテムへ帰って来た俺達。その理由は二つ。どうやら王都は港町からよりもテムテムからの方が近いらしいのだ。
そしてもう一つ。
「お爺様、お祖母様!」
「ん、随分早いお帰りだねぇ」
「どうした、何かあったのか?」
それはケジメを付けるためだ。
「テム婆さん、ガム爺さん、ポロを俺にください」
村人に歓迎されながらもやってきた村長宅で、俺は土間に四肢をついて土下座した。
「おぉぉい!? なんでいきなり地ベタに!?」
「ちょっとカイト、孫はくれてやるから顔をお上げよ。身内になる男を地ベタに這いつくばらせて喜ぶ性根なんて持ち合わせちゃ居ないんだよこっちは」
俺は祖父母であり、親代わりだった二人に頭を下げてポロを嫁に貰う。
土下座の意味を説明したり、どんな風に口説かれたかとか色々聞かれて締まらない感じになったが、それでも二人は快諾してくれた。
「なるほどねぇ。あんたも親が良くないのかい」
「まぁ、そうですね。少なくとも自慢できる親ではありませんでした」
俺の心の中をぶちまけて、その上で俺を止めないで一緒にバカやってくれるポロがどうしようもなく可愛く思えた事を赤裸々に伝える。
やはり村人が聞き耳を立ててたらしくて外が騒がしいが、これでポロとちゃんと夫婦になれた。
「これからずっとよろしくな、ポロ」
「ん、ずっと一緒。よろしく、旦那様」
ほにゃっと笑うポロを抱き締める。
「それで、曾孫はいつになるね?」
「あ、毎晩きっちり襲われてるんで、後は運かと」
俺がそう伝えるとポロは照れ照れした。そして祖父母二人はニマーっと笑い、何故か外から「んぎぃいいいッッ!?」と断末魔が聞こえた。何事だよこわっ。
「毎晩頑張ってる。きっとすぐ出来る」
「我が孫ながらやるねぇ。私の若い頃を思い出すよ」
「お祖母様も?」
「そうさ。ガムは若い頃、そこそこ人気だったからねぇ? 取られないように食ってやったのさ」
「おぉ、さすがお祖母様」
なんて会話だ。ガム爺も顔を赤くしてそっぽ向いてる。
「でも、最近はカイト、積極的。昨日も、ポロは寝れなかった」
「おやおやぁ? やるもんだねぇ。ガムなんて最後まで受け身だったってのにさ」
今度は俺がそっぽを向いた。ガム爺、そこの壁良いよね。この話題が終わるまで一緒に眺めようぜ。
「それに、カイトは経験値凄い貯めた。きっと、神殿で凄い耐久になる。ポロ、夜勝てなくなる」
「ポロちゃんそろそろお口閉じない? 閉じてくれたらもっと好きになっちゃうなぁ〜」
「……っ!? こ、これ以上? 分かったポロ黙る」
これ以上とか言うなよ。今の俺がこれ以上無いくらいにメロメロ見たいじゃん。事実だけどさ。
確かに海竜で貯めた経験値が凄い事になってるので、予定よりもステータスを上げられる予定だ。
計算では筋力12、魔力11、敏捷11、耐久12、精神11まであげて、合計で14331ポイントになるはず。でも夜に使う為じゃないよ?
現状少し足りないが、それは途中でモンスターを乱獲すれば良いだけの事。
「ところで、コイツの事をそろそろ教えてくれないかい?」
「あ、海竜忘れてた」
ペットとして召喚しっぱなしの海竜がテム婆の指をあむあむと齧ってる。いや吸い付いてチューチューしてるのか。
「お祖母様、ポロは加護を貰った。その子は加護の恩恵」
「…………おや? 結構な大事だね。詳しく話しな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます