自由でこそ。
その後もやはり大変だった。
どうやら大司教は異界の神から加護を貰ってる俺よりも、デュープさんから加護を貰ってるポロの方がお気に入りらしく、デュープ教会の巫女だの聖女だの
当然、ブチ切れる。ポロが。
「デュープ様、ポロにくれた。カイトと一緒、戦うチカラ」
少しずつ海竜が巨大化し、圧迫された個室がミシミシと鳴り始める。
「カイトと、一緒にいて良いって。その為のチカラ、くれた」
先程まで可愛らしくぷえーっと鳴いてた海竜が、段々と本来のチカラを解放し、そして全力の殺意と武威を振りまき始める。
「それを邪魔する。だったら、デュープ様との約束、守る」
つまり、お前らを神のチカラでぶっ潰す。ポロは言外にそう語る。
ポロの本気を受け、大司教は平伏した。何よりそれは神からポロが与えられたチカラであり、それを向けられると言うことはデュープさんへの裏切りに等しいのだ。
「お、お許しください……」
「二度と、ふざけたこと言わないで。ポロ、次にデュープ様と会う時、別れさせられたなんて、報告したくない」
「俺からも言っとくけど、あんまり舐めた事言うなよ? デュープさんと同格の神を更に一柱敵に回す覚悟ある? なんか俺の事をスルーしてたけど、もしかしてデュープさん以外の神がゴミだとでも思ってる?」
俺も大概切れてるので、ヒビだらけになった部屋で更に海竜を追加してあげた。
「ひっ、ひぃぃいいいッッ!?」
「大概にしとけよ? 俺はデュープさんじゃなくてポセイドン様の信徒だ。デュープさんも尊敬してるし信仰するけど、別にそれはアンタらと仲良くする事とは別問題なんだぜ?」
「神様を、舐め過ぎ。ポセイドン様も、優しかた。馬鹿にするの、許さない」
神のチカラを振るう現人神がここに二人。それがブチ切れ寸前で海竜を召喚してるのだ。生きた心地がしないだろう。
「と言うか、冷静に考えろよ。ポロはデュープさんのお気に入りなんだぞ? それを人間の都合で振り回してみろよ。デュープさんがどんな顔するか」
「お、お許しおっ、お許しぉぉおぉおッッ!」
実際、優しそうなデュープさんが、自分の与えた加護でポロが不幸になるのを見たら、それはもう悲しそうにすると思う。
「まぁ、そうならならない為のチカラなんだけどね。多分こうなるって分かってたから神界で先に
「つまり、この人ぶっ飛ばす前提? なら、やってもいいはず」
俺達の弁を信じるなら、今自分は神から逆賊扱いを受けてる事になる。それを理解した大司教は発狂寸前だ。
お許しお許しと連呼するヤバい存在になってしまった。
「神の為に働くのも良いけどさ、それは本当に神の為か、自分の為かは考えた方が良いぜ? まぁアルマ教会のせいで大変なんだろうけどさぁ」
「でもそれ、ポロ関係ない。もっと言うと、デュープ様も関係ない。アルマ教会と、デュープ教会の問題。人同士の問題に、神様を困らせるの良くない」
ド正論である。そしてド正論とは時に、より深く人を傷付ける。
ポロの言葉によってライフがゼロになった大司教は、ガクッと項垂れてブツブツの何かを呟くヤバい人になった。
「まぁ良いや。今日はカイシン食堂の日だったんだけどなぁ」
「一応、空き地行く。二人が待ちぼうけ」
確かにそうだ。ポロに言われて気付いた俺は、まだ昼前で間に合うと思って急いで部屋を出て教会を後にした。
俺達発光問題と海竜討伐がブレンドされ、教会の外は結構大騒ぎになってたので面倒だから海竜を呼ぶ。
程よいサイズの海竜に乗って空を泳いでもらい、空き地に向かって直接エントリー。
当然、半透明とは言え海竜が空を泳いだんだから更なる大騒ぎが生まれたが、もう知ったこっちゃない。
「あれま、随分とカッコイイ登場だねぇ!」
「街中で噂になってるよぉ!」
空き地には既にエーリンさん達二人が居て、そこに海竜から飛び降りるとすぐに気が付いてくれた。
「お待たせして申し訳ないです。それで、申し訳無いついでなんですけど…………」
「昨日の今日だもんねぇ。お休みにするかい?」
「そうなりますね。正直騒ぎの方はどうでも良いんですけど、昨日は海竜とずっとやり合ってたんで食材の在庫が…………」
「ああ、そっちなのかい」
そう、そっちなのだ。昨日はずっと海竜と遊んでたから、仕入れが出来てないのだ。唐揚げはストックが出来てるけど、煮付けとかフライに使う魚が無い。
「給料は約束の通りに満額出すんで、今日はお休みで……」
「あら、お休みでもお金が貰えるのかい?」
「そうですね。こっちの都合でお休みなので、流石に契約を破るのはダメかと」
二人は二日にいっぺん、一日に銀貨一枚と言う結構な高給で来てくれてるのだ。その契約で募集したにも関わらず、今日を無給にしたら完全な契約違反である。
「また明日釣りをして仕入れとくんで、明後日はいつも通りお願いします」
「はいよ。こっちはお賃金貰えるなら大丈夫だから、そんなに気にしないでね」
「持って帰らせて貰ってる賄いも、家族に評判良いんだから、自信もって!」
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