ご褒美。



「えと、じゃぁ、会えて嬉しい」


 開き直りも甚だしいポロの火の玉ストレートが飛んで行った。


「うむ、陸の子よ。どうしようも無いほどに陸の子にあり、しかし海に祈る敬虔な信徒よ。我も会えて嬉しく思うぞ」


 デュープさんは多分ニッコリ笑った。なんで多分なのかと言うと、認識出来ないから。


 そこに5メートルクラスの巨人が居ることは理解してる。多分二人ともムッキムキなんだろうなとも思う。だけど視覚に入れても脳が存在を理解しきってくれないのだ。


 多分、理解したら俺の頭がパーンってなるからフィルターが掛かってるんだと思う。ポセイドン様に転生してもらった時もそうだった。


「して、ポポロップよ」


「ん、神様は特別に、ポロと呼んでも良い」


 まさかのお許しを出す立場になった俺の嫁が強すぎる。まぁポロなりの感謝を示してるんだと思うけど。


「ならばポロよ。チカラを望むか?」


「…………ちから?」


「そうだ。お前は悔しかったはずた。好いた男が一人で戦う様を見て、隣に居れない自分を悔いたはずだ」


「………………ん」


 あの時、全てを差し置いて凄いと言ってくれたポロ。


 だけどその心は、多くの事を飲み込んだ上での「すごい」だったんだ。


 そう知った瞬間、俺の心がギチギチと痛いくらいに締め付けられた。


 頼むからデュープさん、俺のお嫁さんを今すぐ返してください。抱き締めたくて仕方ない。


 こんな良い女他に居ない。ポロに出逢えて本当に良かった。


「ならばチカラをやろう。お前は無垢魂では無いゆえに、そこまでのチカラはくれてやれんが」


「だいじょーぶ。カイト、きっとチカラ無くても凄い。チカラは、あくまできっかけ」


 俺のお嫁さんがカッコよすぎる。本当に俺が相手で良いのか自信が無くなるくらいだ。


「ならば祈れ。我がそれにカタチを与えよう」


「ん、祈る」


 するとポロの体がぶわぁぁあっと光り、スタングレネード並みの閃光を生み出した。


「我は与える。最も新しく、最も強く祈る信徒にこのチカラを」


 やがて光りが収まったポロが、またふわぁっと浮いて俺の元に帰って来た。


 すぐにギュッと抱きしめると、振り返ったポロの頬が俺の頬に当たる。するとポロはほにゃっと笑ってすりすりした。いつもと変わらないポロである。


「銘は海神の七召命オーシャン・オーダー。海の因子を持つ存在と七つまで契約し、神の力を与えて使役するスキルなり」


「…………これで、カイトといっしょ?」


「うむ。良く考え、祈り、チカラとしたな。上手く使えば同じように使えるだろう」


「……神様、ありがとう」


「そろそろ良いか。今度は俺の時間だ」


 ポロとデュープさんのやり取りが終わったところで、ポセイドン様がずいっと前に出て来た。


「改めて、久しいな。いや久しいと言うほど時間も経ってないか」


「そうですね。言うて一ヶ月ちょいですし」


「しかし、その短い時間でお前は俺との約束を守り、海に生き、そしてこうして神への土産を持ってきた」


 ポセイドン様が指を振ると、どこかから海竜の肉が現れて宙に浮かぶ。


「こやつも、文字通りに神の御本へ還るなど思ってもみなかっただろうな」


 そりゃぁ、お互いに命懸けでバトってる最中だったし。「あ、神の元にイクゥ」とか思わないだろう。俺だったら「絶対負けねぇからなゴルァ」しか考えられない。

 

「さてカイト。お前に褒美をやろう」


「…………え、これ以上頂けるので?」


 既に貰いすぎだ。釣りが出来て、海竜まで釣り上げるようなチカラを貰って、更にこんな可愛い嫁まで出会えた。これ以上望んだら傲慢が過ぎるだろう。堕天してコキュートスに落ちちゃうよ。


「と言っても、デュープと違ってお前の望む事は大してしてやれん。海神の七つ道具オーシャン・ギフトの道具をいくつか付け替える程度なら今この場でしてやるが」


「え、いいんですかァ!?」


 最高じゃん。まって最高じゃん。充分過ぎるでしょ。


 正直に言うとリールだけじゃなくて水鉄砲レーザーガンも死にアイテム化して来たなと思ってた。


 完全自立機動してくれる赤バスが既に水鉄砲の上位互換だし、海神の強襲オーシャン・レイドが機能して来た今ではどうしようかなって。


「ふむ。ではリールと水鉄砲を外しておくか? 水鉄砲の方は面白そうだと思うがなぁ」


 考えが全部筒抜けである。全て詳らかってこの事か。


「水鉄砲はあった方が良いですか?」


「あくまで面白い、と思うだけだがな。今では海竜も呼べるようになるのだろう? 火力の面では殆ど心配要らぬ。だが、水鉄砲は撃ち続けて薙ぎ払えば斬撃にもなろう?」


「ああ、確かに」


 ウォーターカッターみたいな事も出来るのか。確かにブレスみたいな破壊力増し増しな攻撃だけじゃなくて、スパッと鋭い攻撃もあって良いかも知れない。


 冒険する気は更々無いが、命が軽い世界だしな。備えておくのは悪いことじゃない。


「ちなみに、先の言い方だと他にもご褒美が貰えるのですか?」


「うむ。海神の強襲オーシャン・レイドを少し強化してやろうかと思ってな。その代わり、お前が考えてたバグ技は封印させて貰うが」


 あ、アナグマの事か。やっぱり可愛く無かったから、時間があったら狼とか探して精霊化しようと思ってたのに。


「ははっ、ペットなら海竜で十分だろう?」


「あ、そうですね。あいつ見た目が某狩りゲーの海竜そっくりでめちゃくちゃカッコイイし可愛いので」


海神の強襲オーシャン・レイドは海の因子を持つ存在に効果を限定させて貰うぞ。その代わり、精霊の成長機能を付けてやる」


「…………という事は、チビドラ達も育てたら海竜に?」


「うむ」


 最高なのでは? つまりチビドラを育てたら海竜部隊が作れる?


「それと、海神の七つ道具オーシャン・ギフトも少し変えておこうか。いくらなんでもセットで使う道具を別々に登録させてたのではケチが過ぎる。ショップ機能も安い物を買う時に随分と悩んでいたからな、販売方式を少し変えておく」


「と、言うと?」


「お前に分かりやすく言うと、百円の物を十個カゴに入れても支払うのは1ポイントだ」


 神アプデきたぁー! これで安いルアーもガンガン買えるし、野菜も安く買える!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る