舎弟。
「あにぃ! お勤めご苦労さんでやす!」
「
「あ、姐さん! 足元お気を付けください!」
夕方、一日中釣りをして港に帰ると、なんか舎弟がいっぱい居た。いや嘘いっぱいじゃない。八人居た。
何事?
「えーと、なに? 溺れさせたせいで頭ぶっ壊れた?」
男達は俺がハモさんで海に沈めたバカ八人である。何をどうするとこうなるの?
そして姐さん扱い受けて速攻のドヤ顔を披露出来るポロの図太さよ。俺お前には一生勝てない気がするわ。
「へへへ、俺達目が覚めたんでさぁ」
「そうっそよ。絡まれても海のチカラでぶっ飛ばし、おやっさんの漢気に真っ向から応えるあにぃの生き様に惚れやした!」
「どこまでもついて行きやす!」
「いやついてくんな」
つまりなんだ、俺がボスっぽい人に船を譲ったのがそんなに感動したのか?
結局あの後、条件を擦り合わせてビッグと船外機、そしてガソリンを譲った。
使い方もまた沖に出る時のついでに教え、船外機のチカラで船が動き、船外機はガソリンって餌が無いと動かない。そしてガソリンは今のところ俺の加護で経験値を消費しないと生み出せないと教えて、相応の金を受け取った。
総額で黒貨三十枚。そしてガソリンは5リットル毎に銀貨一枚になった。
もう青空食堂要らなくなった。目標金額をぶち抜いてお金が集まった。まぁ期間が一ヶ月もあるから続けるけどさ。
「あにぃ、今日の漁れ物はどんな感じですかい?」
「ん? 俺がチビドラ、……海竜の子供を四匹。そっちのポポロップが赤バス、じゃなくて赤髭を九匹と、その他諸々だな」
今日の作戦は、俺が一日がかりでチビドラ狙い撃ちって内容だった。
デート中に見付けた神アイテム、スタミナポーションを使って体力を快復しながらゴリ押しでチビドラを乱獲したのだ。
「とんでもないっスね!? え、姐さんもそんなに!?」
「ふふん、ポロは出来る女。カイトの嫁として、恥ずかしい結果は残さない」
「まだ嫁じゃ無いけどな。…………まぁ婚約者だけど」
ポロがクッソほどドヤ顔をかましてる。やはり赤バスだけでも結構な獲物らしい。まぁブレス撃ってくる小型の竜種だもんなぁ。
「それで、オッサンの方はどうしたよ?」
「はい。おやっさんはですね、あにぃから買った海竜丸の練習に時間を使いつつ、海竜の子供を相手に本番の練習を初めてやした」
海竜丸とは、俺がオッサンに譲ったビッグ425の名前である。海竜をぶっ倒すと言う気合いを込めた名前だそうな。
そも、海竜とはどんな竜かと言えば、俺が釣ってるチビドラの大人であるのはそうなんだが、単純に稚竜と成竜の関係でも無いらしい。
海竜は多産で、それこそ魚かよってくらい子供を産む。だが稚竜から成竜にまで至れるのは極わずかだと言われてる。
ぶっちゃけ海洋研究をそこまで掘り下げられない文明での情報だから、どこまで信憑性があるか分からない。でも実際に成竜との遭遇は結構希少なのだとか。
聞いた感じでは稚竜から成竜になれる確率は1%くらいっぽい。
過酷な海の中で勝ち残らないと大人になれないのか。まぁだからこそ成竜はその分強いんだろうけど。
と言うか、漁に大型船が使われない一番の理由がそこにある。竜を初めとした化け物が沖に居るから魔除けの範囲外では漁が出来ず、魔除けが効いてる港近くの海域だったら大型船なんて要らねぇって感じの文化成長をして来たらしい。
なるほどねぇ。
「まぁ良いや。俺達明日は来ないからヨロシクな」
「そんなっ!? どこに行くんでさぁ!?」
「お供しやすよ!」
「いや来んな。明日は冒険者ギルド横の空き地で青空食堂やるんだよ。今日はその為の食材を釣りに来たんだ」
「つまり、あにぃの飯が食えるんですか!?」
「絶対行きやす! いや店手伝いやす!」
「要らねぇよ。手伝いはもう街の主婦を手配してあるから」
歳がアレだとしても女性である。むくつけき男にサーブされるより主婦に手伝ってもらった方が客も喜ぶに決まってる。少なくとも俺はそっちの方が良い。
「じゃぁ客として、客として行きやす! それなら良いっスよね!?」
「まぁ、金を払うなら。…………でも高いぞ? 俺の故郷の酒も振る舞うけど、酒一杯で銅貨一枚だし、子竜の肉を使った料理も昨日で銅貨五枚、今日は値上げして銀貨一枚のつもりだ」
「ぎ、銀貨一枚……!?」
値段にビビる舎弟たち。まぁ飯に銀貨って普通にビビる。まだ見習いだろうし、稼ぎはそこまで良く無いんだろう。
「冒険者向けだからなぁ。…………でも悔しかったら、自分で子竜を釣って食えば良いんだ。だって俺達は、海の男だろ?」
「…………ッ! そ、そうッスよね! それが海の男っスよね!」
「そうだよ、竜の肉が高いってんなら、自分でとりゃぁ良いんスよね! 流石あにぃだ!」
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