絡まれる。
ナイスミドルに相談した翌日、あの帰りにポロとデートをしてたら面白い物を見付けて、今日の俺はやる気満々だぞと港に来た早朝。
「おいテメェ、随分と調子に乗ってるみたいだなぁ?」
なんかムキムキに囲まれた。
前回は壮年の漁師さん達に囲まれたが、今日は年若い漁師に囲まれた。何事だろうか?
「何か用かな? もしかして朝の時間がどれだけ漁師にとって貴重かも分からない見習いさん? 早く仕事に戻った方が良いよ」
「んだとテメェッ!?」
「調子乗ってんじゃねぇぞよそもんがぁ!」
「あー煩い煩い」
俺はげんなりして耳を塞ぐ。地球に居た頃なら普通に怖いシチュエーションだけど、レイドスキルがパッシブだと知った今の俺にはゴロツキの恫喝なんて何も怖くない。
なんか特殊な攻撃方法とか持ってるかも知れない上級冒険者とかならまだしも、俺とそんなに歳の変わらなそうに見える漁師でしょ?
お前はチビドラの装甲抜けんのかよって思っちゃうよね。
「要件なら早くしてくれる? 暇な君達と違って俺もポロも忙しいんだけど」
ちなみに煽りじゃ無くてマジで忙しい。だって今日は前回よりも大量にチビドラを水揚げしないと夜まで持たないと判明してるんだ。
一匹釣るのに二時間から三時間も使うんだぞ? と言うか釣ってるの稚竜だから、もっと大きいの引っ掛けたらもっと時間使うんだぞ?
こんな事してる暇ねぇんだよマジで。
「チッ、状況が分かってねぇみてぇだな」
「船を寄越しゃ許してやろうと思ったのによぉ」
八人くらいで俺とポロを囲むコイツらの目的は、どうやら俺のボートらしい。
「アレいくらすると思ってんの? 金の価値も分かんないバカなら漁師なんて止めて教会に行けよ。読み書きと計算習って来いバカどもが」
「ンだとゴルァ!」
いやゴルァじゃないし。日本でも二十万したんだぞあれ。日本でだぞ? この世界でビッグ425級のボート買うとしたら二十万じゃ絶対に無理だろ。
船外機の事もあるし、あれ全部をこっちの世界で技術含めて換算したら絶対に黒貨数十枚になる。エンジン機構だけでもその価値がある。
「別に手漕ぎの船をバカにするつもりは無いけど、俺の船は価値も理解出来ないお前らにはもったいねぇよ。今なら許してやるから消えろ」
「…………随分強気だなぁ優男。まさかこの人数が見えない訳じゃねぇだろ?」
「見た上で言ってんだから対処出来るって理解出来ないのか? 本格的に頭悪いなお前。あぁだから暇してんのか」
「────っ殺す!」
順当にブチ切れたので順当にチビドラシールドを召喚。後ろにいるポロにも二匹のチビドラを付けて万全の防御態勢。
更に赤バスを呼べるだけ呼んで男達に突っ込ませる。殺すと問題になりそうなので体当りで済ませ、その代わりに海へ叩き落とす。
「くそっ、なんだこりゃァ!?」
「海竜!? 赤髭ぇ!?」
「海に祈れよ。…………黒ハモ、やれ」
最後に黒ハモさんを召喚して海に突っ込む。服を軽く噛ませて海の中に引きずり込ませる。
殺しはしないけど、死ぬ恐怖くらいは覚えてもらう。何度も絡まれたら堪らん。
「ったく、海に生きる男のくせにカツアゲなんてみみっちぃ事しやがって。溺れる寸前まで頭を冷やして反省しろ」
「…………まったく、その通りだな」
ふと、背後から声がして振り返る。チビドラが居るので
「あ、一昨日の」
振り返った先には、前回俺に物申した壮年の漁師が居た。凄まじい渋顔をしてる。
「うちの若ぇ奴が失礼したな。素潜りよりはキツくどついとくから、許してやってくれねぇか」
「まぁ、良いけど」
俺は黒ハモさんに男達の解放を命じて召喚を解除した。と言っても姿が見えないだけでその辺に居るんだろうけど。パッシブスキルだもんな。
引きずり込む者が居なくなったからゴロツキ達は海面まで浮上し、ぐしゃぐしゃの顔で必死に桟橋まで泳いでしがみつく。溺死する寸前だった事が余程恐怖だっのか酷い顔だ。
「で、何か用? 朝まずめは逃したく無いんだけど」
「はっ、そりゃそうだ。この時間を無駄にする奴は漁師じゃねぇ。…………だが、ちっとお前さんに相談がある。時間をくれねぇか?」
「その義理があると思う?」
「いや、ねぇな。…………だから先走んなっつったのによぉ」
あぁ、このボスっぽい人が俺に話があるのに、下っ端が暴走したのか。
多分、相談は船に関係する何かだろう。だから余所者に頭下げるくらいなら船を奪っちまえって方向に行ったのかな。
「忠告しとくけど、人の船を奪うのは漁師じゃなくて海賊だ。アイツら育てるつもりなら肝に命じといた方が良いよ」
「…………そうだな。チッ、バカどもがよぉ」
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