港を探して。
経験値稼ぎが終わった。
俺のうっかりだったんだけど、別に俺が自分で動かなくても寝てる間に赤バス達を森に派遣しても良いじゃんと気が付いてからは、かなり効率よく経験値を稼げたと思う。
赤バスと言うか
なのでボートで海に出てる間に赤バス達を働かせるのは無理だった。でも
その結果、陸から赤バス三、黒ハモ三、そして灰色の
俺一人なら多分食えるだろうって冒険しても良いが、今はポロが居るので少しだけ安全策を用意した。
そう、黒猿に食わせりゃ良いんじゃ。
そうやって実験した結果、捕まえた黒猿は無事だったのでちゃんと殺し、灰色のガシラは醤油とみりんで煮込んでみた。
くっっっっっっそ美味かった。ポロは特に気に入って、気に気に入り過ぎて泣いてた。
「ほらポロ、そろそろ行くぞー?」
「まだ、もう少し…………」
気に入り過ぎて、経験値そっちのけでガシラ釣りしてる。今日で移動を再開して神殿を探すって言ってあるのに、少しでもガシラが欲しくて粘ってる。
強烈な旨みで度肝を抜いたのは赤バスとチビドラだけど、なんと言うか等身大の美味さで深く刺さる感じのガシラだった。ポロは深く刺されてしまったのだ。
効率が上がった結果、獲得した総経験値は5124ポイント。これで殆どのステータスを十近くまで上げられる。
「ポロ、楽しいのは分かるけど釣り人は引き際も肝心だぞ。早く止めないと今日の夜は一緒に寝ないからな」
「……ッッ!? そ、それはだめ。カイトは、ポロと寝るの」
試しにと口にしたら効果テキメンだった。
「カイトは、ポロと気持ちいいこと、きらい? たのしくない?」
「いや、そんなことはないけど……」
真っ直ぐ聞かれるとゴニョゴニョしてしまう。なんて真っ直ぐな瞳で聞いてくるんだ。内容は猥談だぞこれ。
「分かった、もう言わないから」
「ん、約束」
片付けをしてボートに乗る。村である程度の地理は聞いてたので、このまま川と反対に進めばそのうち港があるらしい。
操船は俺がする。ポロに任せるとたまにアンカーを勝手におろしてエンジンを止めるからだ。船の上で遊ぶのも気に入ったらしい。何とは言わないけど。
………………ていうかポロさん爛れすぎじゃね? 何とは言わないけどさぁ。
まぁあまり積極的じゃない自分をガッチリ口説き落とすつもりなら、正直この方面から攻めるのは正解だと思う。何とは言わないけど。
俺もポロの事嫌いじゃ無いし、好意的に見てる。邪魔なのは両親から受けた男女のイメージだけなのだが、その一つが根深いのだ。
だからこう、肉体的に俺を説得するのは多分正解。理論的に色々されても多分ダメ。頭で分かっても心が分からない奴だから。
言い方は悪いけど、俺の肉体をポロで染めて調教してると言うか、心を分からせる前に肉体を掌握してると言うか、多分そんな感じだと思う。荒治療も甚だしいけど。
「…………カイト、誰も居ない」
「そりゃそうだろ。海の上だし」
「……………………しよ?」
ごめん分かんない。ただポロがハマってるだけかも知れない。ポロの性欲が強すぎる。
「だーめ。なるべく早く港見付けたいから我慢しなさい」
「しょぼん……」
「抱っこしてあげるから」
「わーい」
可愛いので甘やかしてしまう。船外機を操ってないフリーな腕を広げると、ポロが飛び込んでくる。むぎゅーっと幸せそうに抱き着かれたら、俺まで幸せな気分になってくる。
なんだろう。釣りさえ出来れば良い廃人だったのに、真人間へと浄化されそうになる。
そんな旅を続けて、五日も移動した。
「見えて来たな、あれが港町か」
「ん、大きい。途中にあった漁村と違う」
そう、途中に漁村は二つほど見えたのだけど、俺が持ってる船や道具を考えるとトラブルしか見えないから近付かないで置いた。
もしかしたら何も無いかもしれないけど、俺は村社会ってものをあんまり信用してない。テムテムだって俺がポロを助けた上に婚約者だったから居心地が良かったのだ。
完全に余所者の状態であんなに寛げたかと言えば、流石にノータイムで頷けない。
「ふむ。桟橋の漁船用のエリアと貿易エリアが分かれてるっぽいな」
交易船が停泊する為の桟橋は背が高く、小型の漁船に対応してる桟橋は背が低いようだ。
小型の漁船と言っても、現代ならまだしもこの世界だと普通のボートにしか見えないような船である。
「サイズ的には漁船の方だけど、さて…………」
街の漁船は多分みんな、桟橋の使用契約とかしてる人ばかりだと思う。それに皆顔見知りだろうから、よそ者が乗り込んだら絶対に浮く。
「よし。適当な陸地に上陸してから普通に徒歩で街に入ろうか」
「賛成」
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