皮ごと使う。
二日掛けて海まで戻って来た俺達。
取り敢えず予定では十日くらい滞在するのでさっさと移動して設営する。
場所は河口の河原じゃなくて、最初に居た砂浜に陣取る。あそこが一番黒猿が多かった気がするから。
そう、俺達は黒猿を狩り殺すつもりでいた。何故ならステータスを上げるのに経験値が必要なので。
一体殺すだけで十五点も手に入るのはかなり割りが良いと学んだ俺は、ポロと一緒に経験値を稼ぐ事にした。
ポロには
ブレスを吐ける赤バスが居るので、ライフルが無くても遠距離攻撃は可能だ。平たいチビドラを盾として使えるので防御もバッチリだし。
「ここが、ポロとカイトが出会った場所。運命の聖地」
「まぁ間違っちゃない」
砂浜に辿り着いた俺達は、すぐ設営を開始した。
満潮でも水没しない場所を意識してテントを立て、中にマットと毛布を入れる。
テントの前にタープを張ってその下にテーブルや焚き火台、炭火焼きコンロなどを並べて料理と食事が出来るようにする。
あとはテントの近過ぎず遠過ぎない場所に深い穴を掘って、適当な板を被せてから周りをタープで隠すようにしてトイレの完成。
まだインベントリには赤バスが残ってるので食べ物は大丈夫。そろそろ刺身以外でも食べたいが、何が良いだろうか。
一ヶ月の間にガム爺とテム婆にはチビドラの唐揚げと赤バスの刺身は食べさせたけど、刺身の方は最初「マジかコイツ」って顔された。忌避感が無かったポロがおかしかったんだな。
でも一度食べたら定期的に持って来いと言われてるので、里帰りする時は必ず持っていこうと思う。
インベントリに残ってる赤バスはあと二匹で、捌いてあるサクなら三つある。それでも最初九匹居たのに大分食ったと思う。
「さて、準備は出来たし黒猿殺しに行くか。…………ところでアイツらって本当はなんて名前なの?」
「たしか、
猿の癖して無駄にかっこいいじゃん。ムカついたから虐殺するわ。
五日経過した。やはり連続で狩り続けると取得経験値量が落ちてくらしい。貰える量が減ったら一日海で釣りをしてると元に戻ってる。
多分、下がり続けても気にせず限界まで下げ続けたら戻るのも遅いんだろうけど、下がり始めたらすぐ休んだので回復も早かった。
でも一日海で釣りしたら赤バス五匹追加と、チビドラ一匹追加で俺の腕がまた死んだ。
まぁチビドラの在庫が心許無い感じだったから嬉しい。体力は死んだけど。
「大分貯まったな」
ウォレットには現在、1488の数字がデデンと乗ってる。結構な数字だ。
「カイト、唐揚げが食べたい気分」
「その気分、昨日もなってたよな?」
夕方、夕飯の準備中にポロがオネダリしてきた。でも昨日も唐揚げだったので却下。
「…………だめ?」
「そんなきゃるんっとした目で見られてもダメ。………分かったその代わり今日はカレーにしてやるから」
「カレー!」
予定を変更して材料を買う。野菜はなるべく多く入って千円に近いパックの物を1ポイントで買い、ルゥも徳用で多く入ってる物を選ぶ。
千円以下の物を買う時はなるべく千円に近くしないと損をする。
「俺流の男カレー食わせてやるから待ってろよ」
「前言ってた、出来てる物より美味しいやつ?」
「そうそう。流石にレトルトにゃ負けねぇな」
「たのしみ……!」
まずニンジンのヘタと頭を切ったら、よく皮を洗って剥かずにブツ切り。俺流はニンジンの皮を剥かない。
大きめの鍋をカセットコンロに置いて加熱、油を垂らしてニンジンを炒め始める。
「カイト、何してるのか知りたい」
「分かった。解説しながら作ってやる」
そこそこ強火で、下手すると焦げる位の火力でニンジンを炒めながら玉ねぎを切る。真っ二つにしてから頭とヘタを落とし、5ミリ幅でクシ切りにしたら鍋に入れる。
「この二つを良く炒めるのが重要だ。この二つの野菜は炒める程に甘くなり、柔らかくなる。ここを適当にすると完成が全然違う」
「なるほど……」
ニンジン、玉ねぎを強めの火力で焦がすように、でも焦げないように炒めて行く。
「その間にコイツ、ジャガイモと言う野菜だ。これをしつこいくらいに皮を洗って、皮ごとブツ切りにする。人参よりも少し細かいくらいで良い。もし芽が出てたらそれは毒だから絶対に抉れ」
ジャガイモも皮ごと使う。ゴロゴロ野菜と言うよりは少し小さめで切る。表面積を増やして溶けだすでんぷん量を上げる事でカレーにとろみを付けやすくするのだ。
「ぶっちゃけ野菜って皮残ってた方が風味が強いんだよな。何でもかんでも剥いて使えば良いってもんじゃない」
玉ねぎ、ニンザン、ジャガイモをがんがん炒め、玉ねぎが飴色になってこれ以上は焦げる、ってタイミングでブツ切りにしたチビドラ肉を投入。
「ここまで来たら、あとは水を加えて軽く煮込む。その後にコイツ、固形ルゥをぶち込む。色々と偉そうな事を言ったが、一番凄いのはこのルゥを作ってくれたメーカー……、大商会の人達だ。ぶっちゃけるとコレを入れて煮込むだけで大体カレーになる。大体美味しくなる」
「なんと、神様の食材……?」
「…………あながち間違って無いのかも知れねぇ。なんでも美味く出来てしまう食材なんて、神の御業と言っても過言じゃない」
明らかに過言だが気にせず続ける。時にはノリで喋りきる事も大事なのだ。
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