俺の仕事。
「すきすき、だいすき……」
村に来てから二週間が経過した。日に日に甘々になってくポロに抱き着かれてすりすりされてる。
場所は牙羊族の村テムテムを囲う森の中。
ポロこいつ、とうとう自分が小さい事に開き直って附属品みたいに振る舞い始めた。
正面からセミのようにぎゅっと抱き着いて離れないポロの頭をさらさらと撫でながら、俺は森の中を歩いて獲物を探す。
調べたらやっぱり、魔物を倒さないと経験値が得られないらしい。
つまり赤バスと黒ハモは魔物だったんだ。あれ普通の魚じゃなかったんだ。
そんな訳で、ポロに船をプレゼントしてスッカラカンになった経験値を補充すべく、俺は村で害獣駆除の仕事を請け負ってる。流石に働かずに置いてもらえる訳が無い。
恩人って触れ込みなので数日なら問題無いだろうけど、世界の常識とか学ぶ間お世話になるなら仕事は必要だった。
そんな訳で、俺は村での立場を確保する為と、あと経験値を得る為に
「なぁポロ。もしかして黒猿って結構強い魔物だったりする?」
「………………? 今更、なに言ってる?」
今更の事らしい。
俺はたまに出て来る黒いアナグマ? っぽい魔物をライフルで撃ち殺すんだが、一匹あたり経験値が1ポイントしかたまらないのだ。
そうなると、経験値を十五もくれた黒猿は単純計算でコイツの十五倍は強い事になる。
このアナグマを十五匹殺せば追い付くんだから十五倍の強さってのはオカシイとも言えるが、でも数をこなすなら数字の違いがシャレになって無いのだ。
雑魚十五匹で補えると言えば大した事なさそうに思える。だけど経験値だけで見るとその違いは相当に顕著だ。
例えば経験値を150ポイント集めたい場合、黒猿なら十匹殺せばそれで済む。だけどアナグマの場合は百五十匹殺さないとポイントがたまらない。十五倍ってこう言う事なのだ。
「あの場所、結構危険な場所だったんだな」
海神様、なにゆえ俺をあの場に降ろしたのでしょうか。ランダムですか? 意図的ですか?
まぁどんな意図があったとしても、俺が海神様を恨むなんて事だけは有り得ないけど。
「て言うかポロ、ほんとにずっとくっ付いてるな」
「うん、離れたくない。こうすればずっと一緒」
まるで「私賢い!」とでも言うようにドヤ顔をするポロ。取り敢えず頭を撫でて、放置してれば離れると思ったけどダメらしいから観念して腕をポロのお尻の下に入れて持ち上げ、ポロを抱っこする。
「っ! だっこ嬉しい。すきっ」
どんどん甘々になってくポロの好きにさせつつ、俺は一つ気になることが出来て質問した。
「なぁポロ、コイツって美味いのか?」
「……? 臭みがある。人を選ぶけど、好きな人は好き」
なるほど、クマ肉的な扱いなのか。俺はレーザーで腹をぶち抜く殺し方を止めて、神器の竿を取り出した。
「……………………なにしてる?」
「いや、俺の
「……カイト、天才?」
ポロを抱えたまま、器用に鈎へ餌をつける。それから唐揚げにして食べたチビドラを
精霊は接触と非接触を選べるらしく、接触状態で俺を乗せてもらう。そして浮上。
「おお、パワーあるじゃん」
チビドラの雰囲気から長時間は無理そうだが、三十分くらいなら俺を乗せて空中を泳げそうだった。
そのまま太い木の枝まで運んでもらって乗り移ると、肉の欠片が付いた鈎を下に放る。ラインを噛み切られないようにワイヤーリードは付いてる。
「陸でも釣りをする。さすがカイト」
「そんな褒めんなって」
しばらく待ってると、草むらが揺れてガサゴソと何かが出て来る。アナグマだ。
便宜上アナグマと読んでるけど、見掛けた瞬間に襲って来たから瞬殺してて良く観察してなかった。ちゃんと見れば全然アナグマじゃない。
どちらかと言うと、モグラ? モグラとイタチを合わせたらお前? みたいな感じの魔物。
鼻をヒクヒクさせて周囲を探してるけど、匂いで俺たちの居場所がバレたりするのかな。転がした餌から漂う血の匂いの方が強いと思うんだけど。
心配してたけど、杞憂だったらしい。アナグマが餌に食い付いたのでフッキングする。
「ィィギィイイイッ!? ギギャァギギィ!」
「うるせぇなコイツ」
さっさと釣り上げて、手元に来たらネットでランディングし、反抗される前にナイフで絞める。前足でラインを引っ掻かれると面倒だから
「よし、これでコイツを食べた後に召喚出来たら
取り敢えずインベントリにでも入れて、気が向いたら食べてみよう。
精霊をペットにしようかなって思ったけど、こいつよく見ると全然可愛くない。
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