やっぱり釣り。
ポロの生還、そして俺とポロの婚約を祝った大宴会が催された翌日。
俺はまだ日も登る前から起きて、荷物の整理をしてた。
今日まではその場その場で物を買い足して不足を補うスタイルだったが、インベントリの枠が五十しかないのにそんな事を続けたらすぐパンクするだろう。
俺は食料用以外のコンテナを全部出して、中身を出して床に並べ、必要な物と要らない物を分けていく。
そして
まず釣り具。ルアーもワームも買い揃えたし、鈎も各種揃えた。重りも浮きもサルカンもラインも、仕掛けに使うアイテムもバッチリ。
あと練り餌も数種類。安物のリールも含めて全て大きなコンテナに詰め、インベントリへ入れる。これで枠が一つ。
「ああ、複数ある鱒ライダー用のロッドケースも用意して置こうか」
五本ある鱒ライダーを纏めて入れておく。鱒ライダーは本当に万能なので重宝する。安いし丈夫なので無茶出来るし、無茶してもそうそう壊れない。
メートルオーバーのアカメを釣っても折れなかったからな。多分チビドラを相手にしたら厳しかったかも知れないけど、普通に使う分は問題無い名器なのだ。
次にキャンプ用品用ボックス。六台に増えたカセットコンロと組み立て式の焚き火台。それと各種クッカーとメスティン。テントに使うタープやペグ。色々入ってる。
不要な物を取り出し、必要な物を買い足して中に入れる。…………これカセットコンロ邪魔だな? コンロだけ別口にしようか。コンテナもう一つ買ってコンロとカセットガスをぶち込んでおこう。
いや、整理したら使うコンテナ減ったな。買わなくて良さそうだ。
整理した結果、調味料のボックスと雑貨のボックスが合体して一箱空いたので、それにコンロをぶち込んだ。
そして出た不要物をどうしようか考える。エスプワープ家にプレゼントしても良いが、使い掛けの物も多い。無難に燃やすか?
この世の殆どは燃やすと消せる。高温であればあるほど消せる幅も増える。産業廃棄物も数千から数万度のプラズマなら大した害も無く消し飛ばせる程だ。
インベントリにデリート機能とかあったら良いんだが、そう都合の良いことは無い。というか消せたらまずい。世界の質量が消えちゃう。
俺が物を召喚してもこの星の質量が極々超微量だけ増えるが、増えるだけだ。でも消す機能は多分、制限とか無いからどんどん消せるはず。
絶対やらないけど、やろうと思ったら海に行って海水をインベントリに詰めてはデリート、詰めてはデリートなんて事も出来る。そしたら多分、最終的には世界も滅ぼせるはず。
取り敢えず、インベントリに預かってるポロの釣り竿とかも出して置く。ポロの部屋だし、ポロの物を置いといても良いだろ。
ふと視線を感じて振り返ると、ポロがベッドの中からニマーって笑って俺を見てた。
「おはようポロ。起きてたなら声かければ良いのに」
「カイト、おはよ。ポロは旦那様を見てただけ」
「まだ違うだろ」
「そう、まだ違う。まだ」
ニンマァって笑顔だ。何がそんなに楽しいのか。
「そうだ、ポロ。約束してた船やるよ」
「ッ!? ほ、ほんと……?」
「ああ。ただ、船を動かす装置あるだろ? あれ本当は専用の燃料が要るんだよ。普段使ってるのは神様の力で進化してるだけで」
船外機の説明をして、最後に神器の方を渡すって言うとポロは首を横に振った。
「どうせ一緒に居る。燃料は、カイトから買う。体で」
「最後で台無しなんだよなぁ。…………まぁ良いや。取り敢えず試運転がてら釣りに行こうぜ。その川で魚が取りたかったんだろ?
ちょうど出していたポロの鱒ライダーを手渡す。そも、鱒ライダーは
「ルアーも仕掛けも色々用意したから、今日からはガチで釣り出来るぜ。なんでこの村は魚を取らないのか分からないが、あんなに綺麗な川なら居ないって事は無いだろ。釣って食おうぜ」
「……ん。分かった」
そうして俺達は着替えたあと、二人で朝飯の確保に向かう。今日からやっとポロは民族衣装に戻った。似合ってて可愛かったが褒めると変な顔して笑うので控えてる。
二百ポイントのボートと五十ポイントの船外機を買ったせいで、またポイントがスッカラカンだ。ちょろっと残った端数が逆に気に入らないから、菓子パンとか買って無駄遣いした。
ポイントをきっちりゼロにした俺は、桟橋の近くでインベントリからポロ用のボートと船外機を出した。
この船外機は中華製の安物で、俺が使う時はめっちゃメンテとカスタムをして故障とは無縁のマシンに変えたが、幸いながら買った時点でも動かす事は出来ていた。
この手の中華製品は当たり外れが大きく、俺は外れたら怖いから手を入れたけど、最初から当たりの部類だったのだ。ハズレだとそもそも使い物にならない場合も多い。
そして
まぁもっとポイント貯めてからメンテとカスタム用の道具とパーツを買って手を入れても良いけど、今はポイント無いので仕方ない。
ガソリンは先に五リットルほど買って携行缶に入れてある。ガソリンを購入するシステムは入れ物をインベントリに用意しといて、それに指定した量を買う感じだった。つまり携行缶が無いとガソリンも買えない。
「この臭い燃料をこの白い所にいれて、ここに見えるポンプをポシュポシュするんだ。この燃料を餌だと考えろ。餌を口に運んであけて、食べて力が出たエンジンが働くんだよ」
「わかた。……他の使い方は、ジンギといっしょ?」
「そのはずだ。ただ力はこっちの方が弱いかも」
ボートに船外機をセットしたら、一度インベントリに戻してから川に直接出す。
出した瞬間に速攻で俺が乗ってロープをポロに投げ、桟橋に固定する。こうしないと本当にサッと流されてしまう。
「…………カイト。この船、名前なに」
「ん? これはビッグ425ってボートだけど」
「違う。商品名違くて、銘が聞きたい」
「…………めい? あぁ、個別の名前ってことか? そんなんお前が付けろよ。俺に言われても、ポポロップ丸とかエスプワープ号とかしか思い付かねぇよ」
新品のビッグ425に乗り込んではしゃぐポロは、そいつの名前を真剣に悩んでる。そろそろ日が出て来るので、俺も釣りに行きたいんだが。
悩むポロの代わりに、ポロの釣り具を船に積んでやる。釣り用のライフジャケットも用意した。
「決めた。この子はポロップ号」
「決まったなら行くぞ。操作は分かるよな?」
俺は自分の神器に乗って先に行く。この村より更に登った所に流れが緩やかな場所があるらしいので、そこに向かう。
急いでリコイルスターターを引っ張って追いかけて来るポロを見て、俺はくすくす笑って口を開いた。
「どっちが多く釣れるか競走な。俺に勝ったらなんかご褒美やるよ」
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