村探し。
俺もポロも若いので脂が強い中トロ風の赤バス刺身も朝から美味しくペロッと食べ切った。
「満足」
「美味かったなぁ」
テントやテーブルなど設営した物を全て片付けてインベントリに仕舞う。その後は海に、いや河口にボートを浮かべて二人で乗り込んだ。
するとポロはめちゃくちゃ自然な感じでリコイルスターターを引っ張って船外機を始動し、ハンドルを捻ってアクセルを入れた。
「あ、操船してくれんの?」
「うん。練習」
ああ、船をやるって言ったからエンジンもセットだと思ってるのか。
…………うーん、どうするか。今更エンジン無いよって言ったら泣くかな? 神器の方をプレゼントするか? 俺はショップで普通の4スト二馬力エンジンを買ってガソリン入れれば良いし。
まぁどっちにしろポイント稼いでからだか。船だけで二百ポイントで、船外機も五万円くらいの安物だけどポイント換算で五十ポイントだからな。
「…………おい見ろよポロ。黒い猿があんなに沢山」
「あれ、とても危ない。カイト、倒せる?」
河口の遡上を開始した俺達。しばらく川を進むと、岸の向こうにある森からチラチラと黒猿が顔を出してるのが見える。
「ふんっ、余裕」
神器、
ビュ、ビュ、ビュっと結構重い音が一回する事に、一匹の黒猿の頭が弾け飛ぶ。
あいつ、初対面でいきなり殺しに来たクソ害獣だからな。虐殺しても良心が痛まない。
「あぁポイントうめぇ〜!」
経験値が十五とゴミ数値だけど、塵も積もればヤマトナデシコなんだよなぁ!
「良く当たる」
「だろ? バス釣りやる奴ってクソみたいなタフコンデションの中でアホみたいに狭いポイントにピンポイントキャストしなきゃいけなかったりするから、結構こう言う精密動作得意なんだぜ」
俺の知り合いに、幅三センチ、高さ二センチしかない隙間に5メートル先からルアーをキャストして入れちゃう達人とか居たのよ。
それに比べりゃ引き金引くだけで真っ直ぐ飛ぶレーザーとかイージーゲームだよなぁ?
何体殺したかも数えてないが、ウォレットを開いてみると経験値312となってた。
ふむ? 数えてないから正確には分からないけど、体感で取得経験値量が減ってる気がする。あの数殺したら四百超えてると思ったのに。
もしかして単一のモンスター潰し続けると取得量落ちるとかある?
もしくは経験値量って相対的なのか? 俺の魔力が上がってきたから、俺の総戦力が上昇したと考えて相対的に弱くなった黒猿からの取得量が落ちたとか?
有り得るな。強くなると経験値が落ちる危険がある事を覚えておこう。
「あ、カイト。あそこ」
「ん? 人が黒猿に襲われてるな」
ボートで順調に進んでると、森の切れ間が見えた。そしてそこから街道が見えて、街道には馬車があり、その馬車は黒猿に襲われてた。
「ちょっと遠いし、誤射すると人に当たるな。…………
俺の代わりに赤バス精霊を飛ばして援護する。赤バスはブレス攻撃が出来る魚なのでガンガン戦える。なんで釣る時に吐いてこないのか知らないけど、アイツは結構強い魚なのだ。
現在俺が呼び出せる赤バスは三匹。最初に食べた奴と、ポロと一緒に食べた二匹目と、さっき食べた三匹目だ。そろそろ消化してるかなって思って召喚してみた。
三匹の赤バスはどれも1メートル程のサイズでデカイ。それが空を泳いで街道へ向かい、空から黒猿に向かってブレスの雨を振らせている。
赤バス、つえ〜。
なんでアイツ、釣った時はブレス吐かないんだろう。真面目に謎なんだけど。チビドラちゃんはブレスじゃ無かったけど使って来たしな。
殲滅を終えた赤バスがこっちに帰って来た。襲われてた馬車の人達か赤バスを視線で追い掛けてコッチに気付いた。
何やら手を振って大声を上げてるが距離があり過ぎて聞こえない。なので俺も手を振り返して先に進む。別に止まる必要ないし。
「止まらない?」
「必要無いだろ。怪我人とか居ても薬とか持ってないし」
絆創膏にガーゼ、消毒液、包帯くらいなら買ったことあるけどね。本格的な治療が出来そうなアイテムとか生前に買ったことない。つまりショップで買えない。
ポロの場合は俺が手を出さないと死んでたかもしれないから助けたんだ。人命救助は人としての最低限だと思ったから。
でもあの人達に俺が出来ることは無い。仲間が居るんだから助け合ってくれ。
「にしても、なんかけったいな馬車だったな。黒地に金の装飾とかセンス良いけど金持ち感あり過ぎ」
「多分、実際にお金持ち」
商人ならもう少し実用に傾くと思うから、貴族かな? まぁ関わることも無いだろうし、さっさと進もう。
「ポロ、お前の住んでた村探しなんだからな。見覚えのある場所を見付けたらちゃんと言えよ?」
「ん。どっちにしろ一回帰る。大丈夫」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます