一緒に。



「………………ほわわぁ」


 カレーを一口食べた後、ポロが放心してしまった。「ほわわぁ」とか言ってる。


 ちなみに用意したカレーは念の為に甘口だ。カレーを見た事すらな無い人に辛口食わせるとか俺には無理。中辛すら怪しいかなって思うのに。


「大丈夫か?」


「か、カイト……? カイトはやっぱり、神様だった……?」


「違うよ? ほら、それより冷めるぞ。暖かいうちに食え」


 俺がそう言うとハッとしたポロがカレーを掻き込むように食べだした。


 ポロにとって、カレーは神の食べ物に思えたんだろうか。確かに尋常じゃなく美味いもんな。日本人として慣れすぎてるけど、やっぱ偉大な料理の一つだよな。


「カイト、もっと食べたい」 


「…………えっ? 二合炊いたのに足りなかったか?」


 ふと気が付くと、ポロがあっという間に自分のメスティンを空にしてた。そんなに美味かったか。まぁ美味いよな。


「ほら、じゃぁ俺のも食え」


「………………いいの?」


「俺は食べ慣れてるから。と言うかもっと美味いカレーも食べようと思ったら食べれるから」


「ッッ!? こ、これより、おいしい……?」


 ポロは混乱の極地に居るらしい。でも俺のメスティンはしっかり受け取って食べ始めた。


「………………あっ、食べちゃった」


「あ? どした」


 ポロが正気に戻った瞬間に突然声を出し、自分が食べてる俺のメスティンと俺を交互に見やる。


「……ぇと、同じ皿で分け合う。夫婦の証」


「だからそう言う後出し止めて貰えますかねぇっ!?」


 頬を染めてチラチラっと俺を見ながら爆弾発言をするポロ。そんなの俺は知らないんだから知ってるポロが回避してくんなきゃ分かんねぇよ。


 でもまぁ俺が迂闊だったのも認めよう。食べ掛けの物を渡すって親しくないと無理だもんな。その点は俺も悪かった。だが情状酌量の余地はあるはずだ。


「……けっこん、する?」


「お前ちょっと楽しんでるだろ」


「そんな事ない。…………族長にバレたら大変。けっこんする事になる」


 プイッとそっぽを向くポロ。おいこっち向け。絶対ニヤついてるだろお前。非モテをからかって楽しいか。


「全く、いくら可愛いからって人をからかってると嫁の貰い手居なくなるぞ」


「……………………ポロ、かわい?」


「あ? いや可愛いだろ。背の小ささだけがネックだよな」


 なんて残念な美少女なんだ。身長が低いというだけで好意を向けるとロリコンの誹りを受けるのだから。


 カレーは全部プレゼントしたので、ショップでコンビニ弁当のパスタを買う。1ポイントで買えるけど五百円分くらい損してるんだよなぁ。


 やるせない気持ち食べ始めると、ポロが見てくる。流石にやらんぞ?


 食べ終わったらテントに転がり込む。流石に今日は風呂とか無理。


「カイト」


「ん? いや良いよ、使えよ。レディファーストだって言ってんだろ」


 テントの中でポロに呼ばれ、敷いたマットをポンポンと叩いて「寝ろ」と言う。


「カイト。ポロは賢いので考えた」


「…………なにを?」


「カイトだけそれじゃ、良くない。でも寝床は一つ。どうすれば良いか、ポロは気が付いた」


 慈愛に満ちた薄笑いで両手を広げる幼女が、俺に向かって口を開く。


「さぁ、一緒に寝る」


「もしかしてワザとやってる?」


 彼シャツ状態の女の子がやって良いムーヴじゃ無いんだわそれ。


 ポロが元着てた服も一応インベントリに入ってるけどね? シャツの方が綺麗って言ってコイツずっと彼シャツ状態なんよ。ずっとノーパンの太ももがチラチラしてんのよ。見えそうなのよ。良い加減にしてくれませんかねぇ?


 この状況が続いたらダメだろ。ロリコンじゃなくても獣になるよ。ゾンビ化するウィルスくらい強制力あるシュチュエーションだぞコレ。


淑女レディなら慎みを持ちなさい」


淑女れでぃだからこそ、助けてくれたカイトを床で寝かせない。初日は仕方ないとして、二日目はダメ」


 なるほど。お互いの言い分は平行線らしい。


「それに、襲いたいなら、襲えば良い。責任取ってくれるなら、別に良い」


「もしかして俺これ口説かれてる?」


 ぷいってされた。人生に於いて経験した事の無いシュチュエーションだから正解が分からない。


 悩んでると、何やら俺をチラチラ見てたポロがどんどんしょんぼりして来た。なるほど、あんまり断ると「お前は魅力ねぇんだよ」みたいな感じになるのか。


「あー分かった。分かったから。そこにお邪魔するから」


「ほんとっ」


「我慢はするけど、何があっても文句言うなよ」


「責任取ってくれるなら、文句言わない」


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