第四十五話 微妙なスキル?

 新しい狩場と獲物を手に入れた。


 特に死闘を演じることも無く。

 順調に一方的な殺戮を繰り返している。

 デフォルト蹂躙。

 それが出来ないのであれば、ここにはいない。


「一匹につき創力が五万から十万か。魔法の消費分を差し引いても中々の稼ぎだな」

 バースト・ランスを複数待機させてからの、ディスペル・スフィア。

 落下地点を予測して一斉発射。これの繰り返しである。

 複数で行動する事の多い、グリフォンや猛禽類系には効果的であった。爆発が群れへの巻き込みや牽制にもなるからだ。

 単体行動の多いワイバーンは、鱗が硬かったが、それも誤差であった。

 螺旋運動の黒石弾丸。アース・ブレットで貫く事が出来た。

 基本は物理攻撃力の高い魔法で仕留めていく。

 というか風や電撃系統の攻撃は効果が薄かった。

 威力の大部分が、体表面で散らされたのである。

 種族特性だ。ここに生息する全ての個体が、何らかの耐性持ちであった。

 もしくはディスペル・スフィアでは消しきれない、魔力の障壁的なものが、存在するのかもしれない。

 幸い物理特化魔法で耐性を突破出来たが、完全無効化とかいなくて助かった。

 最初は、落下地点を見極めて、攻撃を当てるのにも苦労した。

 飛べずとも翼はある。なので落下中にそこそこ動く。

 バタついて不規則に落ちる的への偏差射撃である。何度も攻撃を外した。

 その場合は即逃げて、ほとぼりが冷めた頃に、他の個体で再チャレンジ。

 それをひたすらに繰り返した。

「お陰で、今は余裕で百発百中。我ながらコツ掴むの早過ぎる。こういう時に器用度値の恩恵を感じるな」

 適切なディスペル・スフィアの発動距離も掴んできた。

 創力の消費も、だいたい一万以下に抑えられている。

 考えてみたら酷い話である。人間に迷惑を掛けた訳でも無いのに、勝手に領域に踏み込んで来て虐殺。

 人間社会の価値観ならば、間違いなくこちらが悪である。

「弱肉強食は野生の掟。意思の疎通が出来る相手とかだったら躊躇もするが、法治国家を築く事無く進化してきた、己が種族を恨んでくれ」

 強靭な肉体に大きな魔力。人間など比べ物にならぬ、それ。

 生存競争にフィジカルを選んだのだ。

 きっと彼らも、暴力でやられるのなら本望だろう。だから俺の行いも問題ない。

 そして稼ぎに稼いだ、この数日間。

 ついに、レベルの上げられる時が来た。


[レベル]250

[名前] 久世覚(サトル=クゼ)

[種族] 人間

[性別] 男

[年齢] 20

[職業] 魔術師


[生命力]10417/2610 [×4.0]=10440

[魔力] 5/5

[創力] 4005990


[筋力] 265 [×4.0]=1060

[耐久力]260 [×4.0]=1040

[精神力]264 [×4.0]=1056

[抵抗力]256 [×4.0]=1024

[俊敏] 262 [×4.0]=1048

[器用度]259 [×4.0]=1036


[技能] 【共通語】【可視化】

[固有技能]【豊穣の理】【生贄選定】【創力進化】【開拓の標:L5】【創力変換】

      【円形祭壇】【記憶の創成】【身体強創:L6】【耐性強創:L5】

      【認識拡大L4】【大祭壇L4】【創成分解】


 一気にレベルを100上げた。

 さらに【身体強創】をレベル6にする。これで能力値は全て千を越えた。

 いつも通り、慎重に体を慣らしていかなければならない。

 それと能力補正の計算に、修正が必要かもしれない。

 以前に、数値が1上昇する毎に基礎能力に一パーセントの補正が入る、と予想した事がある。

 その計算で行くと、能力値が千の値を超えた俺は、十倍の身体能力を得ている筈だが、実際には、そこまでの能力はない。

 俺の考えは間違いだった?

「不思議な事に能力値が600くらいまでは、その計算に近い補正結果だった」

 そして、そこを超えた辺りから、数値が上がれば上がる程に、補正の影響が小さくなっていったのである。

 考えられる原因は……。

「フレームの限界か。人間の身体構造で発揮できる力は、この辺りまでなのかもな」

 当たり前か。身長体重そのままで、手足の長さや数が変わった訳でも無い。なのに、人間の限界を超えた力や速度を、際限なく発揮出来るのはおかしいか。

「それでも」

 更に限界を超える方法はある筈だ。

 ミルキィやカルドの動きは、その領域を超えていたからだ。

 予想出来るのは、身体操作の技術や魔力による強化。そしてスキルか。

 俺が、それらを手に入れられるかは分からないが、希望はある。悲観する事もない。

 今は能力強化を喜んでおく。

 新しいスキルは三つ生えた。

 効果は地味なものがほとんどだった。有用ではあるのだが。


【認識拡大L4】――【生贄選定】の選定数が増加する。

 技能レベル1上昇毎に倍増加。限界値はレベル10。(×16)


 これは助かった。騎士団に行商人など、出会った人物を登録しまくっていたので、空きが少なくなってきていて困っていたのだ。

 敵対存在のターゲットロックにも使えるので、数は多ければ多いほど良い。

 レベルは4まで上げた。

 技能レベルを1上げる度に倍々で増加した。順に二倍、四倍、八倍、十六倍という具合に。

 仮にレベル10マックスまで上げたら、千二十四倍だ。

 現在の生贄選定可能数は、250×16=6500。これで十分である。

 そして二つ目のスキル。


【大祭壇L4】――【円形祭壇】の範囲が増加する。

 技能レベル1上昇毎に倍増加。限界値はレベル10。(×16)


 最近の創力稼ぎを効率化したい、という強い想いが影響したのだと思う。

 これも、レベル4まで上げた。

 増加倍率も【認識拡大】と同じだった。250×16=6500。範囲は半径6.5キロメートルになった。自動収穫もより一層捗るね。

 ここまで二つのスキルは確かに地味なのだが、創力稼ぎの根幹となっている部分が強化されたので満足である。

 で、最後のである。


【創成分解】――創成物を創力に分解して回収する。直接創力で生み出されたものに限る。


 俺が【記憶の創成】で創造したものを、創力に戻せるというものである。

 うん微妙。

 創力の回収率は、創造に使った分の、約十分の一くらいになっている。

 だから試しで、高い物品を出して戻す、という使い方は出来ない。

「クーリングオフは認めませんよってか……」

 応用性も無い。

 何せ対象は『直接創力で生み出されたもの』である。

 俺が創造したものだけ。この世界の物を分解しようと試したが出来なかった。

 つまり手当たり次第、そこらのいらないものを分解して創力収集、なんて真似も出来ないのである。

 期待していた、敵の武器や防具を消す、とかいう使い方も当然、無理。

「使い道は、一応、あるけどさ……」

 たまの贅沢で出していた地球産の食い物。

 そのビニール包装紙や、プラスチックゴミなどの処理には役立った。

 別にこれまでも、超高熱で有毒性物質も出さずに、焼却処理は出来ていたんだが。

「あって困るものでもないか。食べ終わった後に、さっとエコに消せるのは悪くない」

 このスキルで、何かを失ったり弱体化した訳ではない。

 贅沢を言ってはいけないな。ありがたく頂戴しておこう。

 以上が今回の強化点である。

 残り創力は約四百万。

 次のレベルアップ時までに、まだまだ頑張っていく。


 その前にポンコツ顔が泣きついて来ないといいな。

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