閑話 ホムンクルスの見る絶望

ついに私の番が回ってきた。


あれからも私達の数は減っていき、とうとう確率に負けた。

救いがあるとすれば、お爺さんは失敗しようと思っていないこと。

知る限り一番大掛かりな設備になっている。

これまで集めた情報から、私も朧気ながら、何をしようとしているのか理解してきた。

お爺さん曰く神の領域を得る。

創造の力を人の身に宿す実験らしい。

そして宿せなかったら弾けて死ぬ。

いやだなぁ。

石人形に掴まれ、ガラス筒の外に出される。

濡れた肌に触れる空気の感触。微かに漂う薬品の匂い。これが外? 

初めての外。なのに感覚は知っている?

実験設備の中央に連れていかれる。

お爺さんは私に心が在る事を知らない。

知られたら何をされるかわからない。

逆に実験から見逃してもらえるかも?

いや、ないかな。

心が必要ならそういう風に、造ればいいだけだもの。

そうしてないって事はそういう事。

隠そう。

ぼんやり眼で、ぐったりしておく。

そして、お爺さんが慌ただしく機材を動かし、呪文を唱える。

床一面が光り、私もそれに包まれる。

運命の時。

期待はしない。


これで私も終わりなのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る