第二十七話 謎解きは単純に

 ミゲルさんに教えて貰った遺跡の場所を、全部回って見ることにした。


 魔物の狩りはそこそこ、空を飛んで八カ所の遺跡を調べてみる。

 結果は全部ハズレであった。都合の良い話は無い。

 それらの遺跡には足跡が沢山残っていたので、騎士達が既に調べ尽くしたのだろう。

 俺の固有能力【開拓の標】で地下に空洞がないかも調べたが、そんなものも一切無く、次に繋がる情報も得られないまま、探索は終了してしまった。

 魔法で空を漂いながら、この後どうするかを考える。


 遺跡には何もなかった。緑渦の聖殿にまつわる情報が何一つである。

 全く無い。これは不自然である。

 情報が消えたのではなく、最初から記されていないのだ。

 これらが緑渦の聖殿に関わりがあるものだとした場合、何の目的で建てられていたのかハッキリしないのである。

 記念碑? 建物は一つあれば事足りる筈だ。

 無意味に幾つも建造する意味はない。

 昔の人も、そんなに暇ではないだろう。

「手詰まりか。いや、あと一つだけ調べるところがあるな」

 一つ一つに意味はあるか? 逆に全部合わせて意味がある?

 それを考えてみて、浮かんだ方法があった。

「物事はシンプルに捉えてみようってな」

 八つの遺跡は、森の中、円を描くように散らばっていた。

 実際は歪な配置で、円というのもおこがましいが、無理やりそう見る。

 八つの点。その向かい合う遺跡を線で結んでみる。

 すると四つの線が出来る。

 それらが交わる中央部分を、調べて見ようかと思ったのである。

 線も奇麗には交わらないので、おおよその位置になるが。マップもあるし誤差とする。

 かなり範囲は広いが、空からであれば無理という広さでもない。

 遺跡そのものが、緑渦聖殿の場所を指し示す目印。そう睨んだのだ。

 場所を割り出して、そこへ向かう。

 これで何もなければ本当にお手上げである。


 目標地点に到着する。

「上辺には何も無し。じゃあ下は――」

 空の上から見た限りでは、何の変哲もない森の風景。遺跡もない。

 俺も、そんなものがあるとは期待していない。

 本命は、その下の方である。

 グルグルと低空で周辺を飛び回る。そして。

「……ビンゴ。見付けた」

 地面の下。ついに大きな空洞を見付けた。

 三次元マップに写る四角い空間。明らかに人工のものである。

 ここが緑渦の聖殿に違いない。

 分かれば単純な謎であった。子供騙しと言ってもいい。

 だが、大がかりになれば、こういうのは逆に思い浮かばない。

 正確な地図も必要になる。

 なので、今まで見付からなかったのも不思議な事ではなかった。

「入り口は完全に土の中か。そりゃ上から探しても見付かるわけがない」

 俺は、力場で大量の土砂を動かす為に創った魔法、トラクター・ビームで土を取り除く。

 掌から照射される懐中電灯のような光。力場の光線。

 それで大量の砂鉄を磁石で引っ張るかのように、地面の土を移動させていく。

 使っている最中は、ずっと創力を消費し続ける魔法だ。

 基本は低燃費なのだが、規模と時間で創力消費量が大きく増減する。

 それでも消費量は微々たるものなので、気にするほどではない。

 属性は地ではなく、実は光だったりする。

 土を弄ってはいても、重要なのは力場操作だからね。それを生み出せるのは光だった。

 最近分かってきたが、俺の扱う光属性は無属性に近い。

 染まっていない力という感じだ。

 この世界の無属性と性質が同じか怪しいのだが。


 そんな魔法で作業して小一時間。

 深さ五メートル程を斜め掘り。入り口を露出させる。

 そこは金属の蓋で閉じられていた。

 土を奇麗に取り除く。装飾も何もない実用性一辺倒な造りの扉であった。

 幅も高さもある、厚みもそれなりにあるだろう両開きの大きな扉。

 特殊な素材、又は加工でもされているのか、全く錆びていない。

 離れた位置から。こんな時の魔法でもあるトラクター・ビームで扉を引っ張る。

 鍵も掛かっていない。問題なく開きそうだ。重量はあるが、いけた。

「鍵穴も無いし魔法的な施錠をしてそうなものだが、長い年月で消えたとか?」

 無事に開いたのだから、今更理由はどうでも良いか。

 何が飛び出してきても、対処出来るように身構えながら、中を覗く。

 幸い魔物が、こんにちわ、するという事はなかった。

 見えたのは石で出来た下り階段。地下迷宮だしあって当然だ。

 長い階段が続いており、そこから先の景色は全然見えない。

「中は暗いな。光源の確保は必須か。マップに敵影はないが、未遭遇の魔物だと表示されないしな……」

 熟考して、俺は鉄の扉を閉める。

 そして、軽く土を掛け戻して入り口を隠した。

 こういう時に面倒臭がらないのが大事である。葉っぱや木の枝も追加する。

「これで良しっと。じゃ、帰るか」

 ちょっとだけ様子見してみようかと思ったが、人間、こういう時に限って、取り返しが付かない失敗をするものだ。

 僅かな油断もしないよう心掛けておく。

「ラセリアを頼ろう」

 専門家を連れて、明日改めて探索することに決めた。


 正直、迷宮探索の経験も無いのに、一人閉所に突っ込むとか出来んわ。

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