噛ませキャラな犬飼くんの一存

結城辰也

佐薙さんとの出会い編?

第1話 犬飼くんの出番

 実は最弱な転校生が前の学校ではスクールカースト一番だったら皆はどうする?


 そう。今の俺は偽りの仮面を被った道化のような存在だ。これから口調も僕で行こうと思っている。


 転校初日。


 俺は前の学校で生徒会長及び校長先生に頼まれて転校した。なんでも問題が積山な学校があるそうじゃないか。実に愉快だ。


 いかに優秀な頭脳を使い攻略していくか。この感覚がたまらない。


 人は見掛けによらない。俺はそう思う。さてとこの学校にいくらの問題があるのか。転校が楽しみだ。


「えー今日から転校生が編入するぞ。さ。中に入りたまえ」


 先生による自己紹介はなしか。これは事前に用意しないといけなかったパターンか。だがぶっつけ本番に強いところを見せてやろう。行くぞ。


「きたな。んじゃ自己紹介をよろしく頼む」

「はい! 僕の名は犬飼 仁です! これからよろしくお願いします!」

「皆は犬飼くんと呼べばいい。んじゃあの席について」

「はい!」


 実に愉快だ。完璧に弱々しいキャラだったな。このスリルこそが生き甲斐の全てだ。裏の顔は俺で表の顔は僕だからな。向かうところに敵はなしか。


 なにやら座った途端に左から凄まじい視線を感じる。良し。ここはにこやかに――。


「僕は犬飼。よろしくね! その」

「佐薙。私のことはそう呼んで。犬飼くん」

「うん! 分かったよ! 佐薙さん!」

「困ったことがあったら言ってよね。その……犬飼くん」


 うん? 意味深な感じがしたぞ。ここはターニングポイントじゃないのか。


「いきなりだけど佐薙さん」

「え?」

「困ったことない?」


 この雰囲気はありそうだと痛感した。なるべく問題はないことに越したことはない。だが解決出来れば解決したい。


「な、なにもないよ? ど、どうして」

「嘘……だよね?」

「犬飼くん。放課後……校門で待ってる」


 聞こえにくい声で心苦しそうに佐薙さんは言っていたように思う。やはりドンピシャか。これは朗報だ。まずは佐薙さんの問題を解決しよう。


 そうと決まれば後は俺の出番だ。佐薙さんになにがあったのか放課後になれば分かることだろう。それまで転校初日を楽しもうじゃないか。実に愉快だ。

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